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目的の品を取り巻く事情を少し話しつつ目的地を目指す第37話

玄関を出て門へ向かう3人。

瑞希はとある異変に気が付く。

「あれ?」

「どうした?」

「全部なくなってる」

「商人が全部持って行ったからな。また数日で収穫出来るようになるから問題ない」

そう、菜園の野菜が根こそぎ収穫されてしまっていた。

残っているのは未熟なものばかり。

しかし、ヴァンは気にする素振りを見せない。その口ぶりから察するにいつもの事のようだ。

雑談を挟みつつ、一向は門を出た辺りで一端停止する。

「どっちに行くんだ?」

「こっちだな」

少年が指差す方向の先には森が続いているものの、良く見ると舗装されているとはいかないまでも狭いが踏み固められた道のようなものが確認出来る。

山からこの館までの道のりを考えると今回は随分と歩き易そうだと大輔は感じた。

「数時間歩くんでしょ?馬とか無いの?」

「瑞希、お前なー……」

瑞希の発言を聞き、大輔は呆れたように返す。

「え?何か問題あった?」

「馬って簡単に言うけどな、あったとしても練習しないと乗れないぞ?俺も子供の頃に乗った事あるけど、牧場のおじさんが馬の前で手綱引いて歩いてた程度だったけど、それでも相当怖かった。それに乗るのだって一苦労だった。絶対に素人には乗れない。鞍の付いてない馬なら以ての外だぞ」

「うむ。馬骨ばこつが数頭いる事にはいるのだが、放し飼い故、何処に居るか分からん。大輔の言う通り基本的にキャビンを引かせるのみで直接乗る事はまれ。御者としての能力も余はない。何時も爺任せだからな。もう少し早く出立出来る予定だったのなら商人に途中まで乗せてもらう事も出来たのかもしれんがな」

「放し飼い?屋敷の敷地内にいるのか?爺さんの手伝いしてる時に見かけなかったけどな。まあ、無駄に広い敷地を全部見たわけじゃないから俺の見てない場所に馬小屋があるのか?」

「いや、恐らく今は森の中だろう。必要な時は爺が連れてくる」

それは本当に飼っていると言えるのかは疑問だが、本人が飼っていると言っているのだから飼っているのだろう。

「2人とも当たり前のように話してるけど、馬骨って何?」

「馬骨は馬骨だな。馬に骨って書いて馬骨」

これ以上の説明は不要と言わんばかりに説明を終える大輔。

恐らく、描いて字の如くな妖怪の類の馬なのだろう。

「それって都度、野生の馬を捕まえてるんじゃないの?」

瑞希もそれ以上の説明を求めたとしても大輔の無駄知識披露会になり、必要のない情報が集まるのが目に見えている。

大輔の説明で納得しつつ話を元に戻す。

「野生なら従順に働くまい」

「確かに」

「まあ、無いものは仕方ないし、オウキーニが居ても乗れるかも不明なんだろ?終わった事は諦めるしかない。って事で瑞希歩くしかないぞ。諦めろ。俺も本物の馬骨は見たかったけどまたの機会だな」

ガックリと肩を落とし、諦めた様子で瑞希は歩く。

こうして一行は森へと続く細道を進むのであった。


「そう言えば、剣を取りに行くって話だったよな。その剣ってどんな代物なんだ?オウキーニとの話とか爺さんの口ぶりからして何度も取りに行ってるような物なんだろ?誰かに作ってもらってるのか?ヴァンと爺さんの反応を見るに何か曰く付きの代物なのか?」

暫くは風景を見ながら黙って歩いていた3人だったが、代わり映えしない風景と沈黙に耐え切れず大輔が会話のきっかけを作る。

「曰く……?曰くではないが、その剣を手にしたものは世界を統べる程の強大な力を手にすると言われてはおる」

「スゲーじゃん」

「いや、そう言われておるだけだ。実際、剣の所有者が死亡した場合、いつもの場所に戻っておる。しかも頻度は平均2~3年。長くて5年もせずに戻る。お主ら人間が余の屋敷に迷い込む頻度よりも剣が元の場所に戻る頻度の方が高い。今回の様に商人が所有者の死亡を聞きつけた時、余に依頼が来るのだ」

「そこまで死亡頻度が高いと魔剣とか妖刀の類を疑った方が良くないか?命を吸われてる可能性はないか?そう考えると曰く付きの代物だろ?」

「うーむ……。難しいところだな。余には判断がつかん。力は手には入るが限度がある可能性もある。突如として手に入れた力によって己の力量を見誤り無謀な挑戦をするあまり命を落とす事例もあったとも聞く。何にせよ、切れ味だけは余が太鼓判を捺すほどには良い。名刀である事に疑う余地はない」

「相当切れ味の良い剣って事か……。で、どうやってその剣は戻ってくるんだ?」

「知らぬ。気が付けば定位置に鎮座しておる。余も商人に取って来てほしいと頼まれてから取りに行く故、戻る現場を目にした事はない」

「それもそうだよな。平均2年だとしても2年間見張るのも一苦労だろうしな」

「うむ。興味もない」

剣の事について話は続いたものの、結局詳しい事は分からず終い。

分かった事と言えば切れ味の良い剣だと言う事だけだった。

「ヴァンくん、コレどうやって使うの?」

2人の会話を傍観していた瑞希が会話の途切れるタイミングを見計らい、出立前に渡された水筒紛いの筒の使い方について質問をする。

彼此1時間弱歩いているので喉が渇いてきたのだろう。

「使い方と言っても大したことはない。蓋を開けると突起があるだろ。それを押すと雷の鉱石が作動するから暫く押し続ける。すると水の鉱石から水が発生する。後は傾ければ水が出てくる」

ヴァンは自分の物を使用し、実演しながら使い方の指導をする。

水を発生させる工程以外は通常の水筒と使用方法は変わりない。

ヴァンの説明に倣い、水を発生させ、水筒の蓋をコップ代わりにしてグビグビと水を飲む。

「冷たくて美味しい」

「良いなコレ。元の世界でも欲しいな」

「だよね。でも、向こうだと鉱石が手に入らないけどね」

「そう言えば魔鉱石使ってるって言ってたな。残念だ」


適度に喉の潤いを取り戻した3人は雑談をしながら目的地までの道のりを歩く。

そして、小休憩を挟みつつ歩く事2~3時間。

ようやく目的地付近に到着した。

「ここだ。ここを抜ければ目的地だ」

今まで歩いてきた道から少し外れ、言われなければ通過してしまいそうな雑草の生い茂った分岐点でヴァンが道を指し示す。


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