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ファンタジーな物質を勝手に名付けたくなる第32話

~数分後~

「お待たせー。待った?」

「ううん。私も今来たところ」

「デートか!」

「で、どうしたん?」

自分のボケに対してツッコミが入っただけで満足したのだろう。

瑞希のツッコミを無視するかの如く本題に移る。

「じゃじゃーん」

自分の口で効果音を付け、ポケットから何かを取り出す。

取り出したものはトランプだった。

心霊スポット巡りで暇になった時用にとバッグの中に忍び込ませておいた遊び道具の1つだ。

残念な事に心霊スポット巡りは瑞希と大輔の2人以外の人間が来ることは皆無に等しく、今まで使う機会が無かった物だった。

バッグの中で揉まれた所為か箱に多少のキズや凹みはあるものの、封は切られておらず中身は新品同様に綺麗な状態である。

瑞希は早速トランプの封を切り中身を取り出す。

「少しの時間ならコレで時間潰そうよ。何する?ババ抜き?神経衰弱?スピード?七並べ?」

トランプをシャッフルしながら大輔に問いかける。

「七並べは2人だとあからさますぎてダメだろ。ババ抜きは……出来なくもないか。速攻で終わりそうだけどな。ポーカーとかブラックジャックも出来るな。あー……でも、チップ的なものが無いと微妙か」


軽く話し合った結果、思いついたものから全部やれば良いのではないか。と言う結論に至った。

ポーカー、ババ抜き、ブラックジャックetc...と遊び続け、7並べをプレイ中。

「うーん……。置けない。パス」

2人プレイなので自分の手札を見れば相手の手札も自ずと理解出来る。

故にカードが配られた時点でじっくり考えれば勝敗も理解出来てしまうのが難点だ。

茶番を挟みつつ大輔のミスを願っていた瑞希だったが、その願いむなしくパスをせざるを得ない状況になった。

2人プレイのパスは即ち負けを意味するも同意。相手もパスをするだけの単純作業になってしまい何の進展もないからだ。

今回は一応、戦略上と言う建前で3回までパスは許されている。

……しかし、

「あー……俺も出せる所ないなー……。本当誰だよ止めてるやつ。性格悪いよな。パス」

当然、大輔もパス。

3回のパスは何の意味もなしていない。

若干棒読みなのはご愛敬だろう。

「止めてんの大輔じゃん」

「次、瑞希の番」

瑞希の当然のツッコミを無視し、無情にも瑞希の行動を促す。

「ぐぬぬ……」

既に負けが確定している勝負だが、自ら負けを認めるのを躊躇い、無駄な足掻きでパスをするか否かで葛藤中の瑞希。

そんな折、徐に扉が開かれた。

「……お主ら何をしておる?」

廊下の端に鎮座し、カードゲームに興じている2人を呆れたような眼差しで見つめながらヴァンが質問をする。

「7並べだよ。ヴァンくんもやる?」

「いや、そう言う事を聞いておるのではない。……して、7並べとは?」

自分の質問の意図とは関係のない回答ではあったものの、カードゲームには興味が沸いたようだ。

瑞希にルールなどの詳細説明を希望している。


瑞希は7並べのルールをヴァンに教える。

とは言え、ジョーカーやトンネルなどを抜いたシンプルに隣接する数字が出せる事とパスが3回まで可能だと言うルールを説明した。


「……なるほど。それは2人でやって楽しいのか?初手で結果が理解出来ると思うのだが」

当然の疑問である。

初めてルールを聞いた素人でも自分の手札と相手の手札、そしてルールに準じたプレイを想像すれば勝敗はカードが配られた時点で明らかだと理解出来てしまう。

「本当は4人とか複数でやるものだからね」

「まあ、2人でやっても面白くはなかったな」

「そうか。ならば何故2人でやっておるのだ?」

「そうだ。ヴァンくんを待ってたんだよ」

「余を?」

「うん、ちょっと聞きたい事があってね」

「長くなるか?」

「どうだろ?分からないけど短くはないかも。いくつか聞きたい事があるしね」

「ならば、場所を変えよう。ここに居ては爺の仕事の邪魔になるからな」

ヴァンに案内され、応接室に移動をする3人。

全員が着席し、さっそく本題に入る。

「で、話とはなんだ?」

「電機とか水道のライフラインの事なんだけどヴァンくん分かる?」

「あと魔力な」

魔力の件は本来聞く必要のない事なのだが、大輔が好奇心に勝てなかったが故の質問だ。

しかし、この世界の摂理の一端を理解する事は大切な事だ。

元々居た世界との物理法則など違いが出る可能性も捨てきれないので一概に必要のない知識とも言い難いのかもしれない。

「分かる?と言われてもソレの何についてを知りたいのか具体的に言ってもらわぬ事には何とも言えんな」

「じゃあ、まず、何処から来てるの?」

「何処……。詳しい原産地までは知らぬが商人が持ってくる」

老人とほぼ同等の回答である。

「水はそれで理解したんだけど、電気は何処から来てるの?」

「電気も商人が持ってくるが?」

然も当然の様に回答をするヴァンだが、瑞希と大輔の理解は追いついていない。

2人の頭に疑問符が浮かぶ中、大輔が1つの答えに辿り着く。

「蓄電池か?」

「何を言っておるのか分からんが、魔力を含んだ鉱石に決まっておろう」

「「はぁ?」」

ヴァンの回答を聞き素っ頓狂な声で反応をしてしまう2人。

「何だ、知らぬのか?魔力の話も聞きたいと言っておったから当然知っているものだと思っておったわ」

「つまりは魔鉱石って事?」

「日本での呼び名は知らぬが、お主に心当たりがあるならそうなのであろう」

「いやいや、心当たりも何もないから!単にゲームとか漫画とかのフィクションの話。空想上の物だからね。大輔も知った風な事言わないで。ヴァンくんが勘違いするから」

「すまんすまん。そう言えば爺さんが貯蔵庫見たいならヴァンに言えって言ってたけど、その魔鉱石の貯蔵施設って見せてもらえるのか?」

「構わんが中にあるものには絶対に触れぬようにな。壊れても直ぐには修理出来んからな」

「了解了解。瑞希も大丈夫だよな?」

「うん。大丈夫。絶対に触らない」

「直ぐ行くか?」

「まあ、魔力の話とかも聞きたいけど、それは後でゆっくりでも良いかな。早速見に行こうぜ」

「ならばエントランスで暫し待っておれ。少し準備をする」

そう言うとヴァンは退室してしまった。

どうする事も出来ない2人はヴァンの言いつけに従いエントランスに向かうのであった。


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