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ヴァンが起きるまでの時間稼ぎをしただけの第30話

「ふー……。食った食った」

満足気にお腹をポンポンと叩き、お腹を撫で回す大輔。

朝食と然程違いのない昼食であったものの、味、量ともに満足出来るものだった。

「ちょっと食べすぎじゃない?それに行儀悪いよ」

爪楊枝があればシーハーしそうな大輔の態度を注意する。

と言いつつも、瑞希もいつも以上に食が進み食べすぎた感は否めない。

朝食の時とは違い、老人と多少打ち解けた事で遠慮せずにスープのおかわりをしたのも原因の1つではある。

しかし、最大の原因は単に美味しいから。老人の腕が良いのが原因だ。

大輔に至ってはサラダのおかわりに加え、スープは3杯も飲んでいる……。お腹が一杯なのも納得できる。

「ご満足いただけたようで何よりです」

 老人がお皿を下げる序でに大輔が渡した果物をカットしたものをテーブルに置く。

「大輔、食べられるの?」

「デザートは別腹」

「女子か!」

あまりツッコミを入れる事のない瑞希だが、大輔の発言に思わずツッコミを入れてしまう。

ただ、大輔としてはボケたつもりは一切ない。

正直に想った事を口にしただけだ。

そして、瑞希のツッコミに動じる事も反応を見せる事も無く例の果物に手を伸ばす。

「やっぱり美味いな。道中は水分補給目的だったから甘いのが気になったけど、食後のデザートとして食べると最高だな」

「確かに。でも、これって皮も食べるのが一般的なのかな?」

道中は軽く拭いて丸齧りしていたが、老人が持ってきた状態も洗った痕跡はあるものの切らずにそのままの状態だ。

「申し訳ありません。初めて見た果物だったもので、どのようにすれば良いのか分からなかったもので。皮を剥いた方がよろしかったですか?」

「謝らないでください。そう言うつもりじゃなくって、現地の人はどういう食べ方をしてたのかな?って気になっただけなので」

申し訳なさそうに謝罪する老人。

しかし、瑞希が返答したように単純に正式な食べ方を知りたかっただけなので老人を責めるつもりは一切ない。

「皮があった方が美味いと思うけどな。ヴァンに食べさせるなら中の種を取るためにカットしても良いかもな。まあ、そのまま出しても問題ないと思うがな」

「参考にさせていただきます」


そんなこんなで食堂でまったりとしているとヴァンが姿を現した。

「爺はるか?」

服装は昨日の正装の様なきっちりとした服装ではなくパジャマの様な物を身に着けている。まだ寝ぐせの残る頭。多少眠たそうに眼を擦りながらの登場である。

「坊ちゃま、おはようございます。本日はお早いお目覚めでございますね。今、お召し替えの準備をいたします。自室にてお待ちください」

「うむ」

短い返答をするとヴァンは元来た道を引き返して行く。

「申し訳ございません。坊ちゃまの御支度の手伝いがございますので失礼します。食器はそのままで問題ございません」

「あいよー。いってらー」

軽い返事で老人を見送る大輔。

老人は大輔の返事を機にする事無く足早に食堂を後にした。


「どうする?」

「どうするって言われてもなー」

老人を見送った後、2人でまったりしていたものの、やる事がない。

山彦(仮)から貰った謎の果物も食べ終え、次の行動を考えるのに難儀している状況である。

一応、瑞希のバッグの中にはトランプやサイコロなど小さな遊び道具があるにはある。

しかし、ヴァンと老人が戻るまでそれほど時間は掛からないと予想が出来る状態。

態々部屋に戻りトランプで遊んで時間を潰したいか?と問われれば「No」と言えるだろう。

「食器洗う?」

「そうだな。散歩がてら庭をぶらついても良いけど、下手に動き回って良いのかも微妙だしな」

行動の選択肢が少な過ぎるが故の選択。

自ら労働を買って出ようと言う結論に至った。

そうと決まれば即行動。

目の前の皿を持ち、厨房との仕切りであるスイングドアを通る。

厨房内は先程まで瑞希たちの食事の準備をしていたのにもかかわらず綺麗に整頓されていて散らかっている場所は1か所もない。

「俺の台所の綺麗な時以上に綺麗な状態だな。調理がてら片付けもしてるんだろうな」

勿論、2人が食事をしている最中に片付けた部分も多分にあるので全てを調理しながら行った訳ではないだろう。

「すごいね。手際が良いんだね」

大輔は自分が調理している状況を想像しながら、自分との違いに感心している様子だが、瑞希は大輔の言葉を聞いても老人の手際の良さがピンと来ていない。

大輔が話をしてきたから乗っかっただけの返答だった。

これが普段料理をする人間としない人間の差なのだろう。

「本当に皿洗いしかする事なさそうだし、皿洗いだな」

とは言ってもシンク内にある皿の数も2人が使用した数枚のみ。

2人掛かりで着手する仕事量ではない。

「じゃんけんする?」

「それでも良いけど、この程度なら俺が1人でやっても良いんだが……。まあ、せっかくだし俺が洗うから瑞希はすすぎ作業して」

シンク回りの広さは2人が作業しても十分なスペースが確保されている。

1人で作業しても問題のない量だが、2人で分業すればより早く終わると判断したのだろう。

瑞希も大輔の案に反対する理由が特に無かったので、大輔の案に了承をし、作業を開始する。


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