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魔法の存在を匂わせる第29話

食事を終え、食器を運ぶ瑞希と大輔。

厨房前のカウンターから老人へ声をかける。

「ごちそうさまでした。食器はここにおいておけば良いですか?」

「わざわざありがとうございます。はい、そこに置いておいて構いません」

「そだ。少し聞きたい事があるんだけど良いか?」

言われた通り、食器を置いたついでに先程2人で話した事を質問する為の前置き。

老人が忙しく、断られるなら後程時間を見計らって再度質問をするつもりだ。

「はい。私に答えられる事でしたら」

「この家のライフライン……。水道とか電気とかって何処から来てるんだ?」

「何処と言うのは原産地の事でしょうか?」

「産地……?うん、まあ、そうかな?何処で作られて、どうやってここに運んでるのか。供給元が知りたいんだ。分かる範囲で良いからさ」

「私奴も詳しい事は分からないのですが、10日に1回程度の頻度で商人の方が訪問されまして、その時に消費した分を補充されて行かれます。ある程度の貯蓄もあります故、数回補充し忘れても枯渇する事はありません。貯蔵庫の鍵は坊ちゃまがお持ちですので、見学なさりたい場合は坊ちゃまにお申し付けください」

何とも言えない微妙な返答。

つまり、ヴァンに話を聞かないと分からないと言う事なのだろう。

「ヴァンくんっていつ頃起きますか?」

「坊ちゃまは就寝なされたばかりですので、早くても昼下がり、遅いと夕暮れ時の起床になると思われます」

「そっかー……。大輔、どうする?」

「うーん……。どうするって言われてもなー。……そうだ。爺さん、何か手伝う事ないか?皿洗いでも掃除でも簡単な作業なら手伝うぜ」

「いえいえ、坊ちゃまの御客人様に何か作業をさせるなどとんでもない」

「どうせ暇だし、部屋に戻ってもする事ないからな。仕事があるなら遠慮せず言ってくれ」

「そうだね。暇つぶし……人助けだと思ってさ」

元々長期滞在するなら仕事をしろとヴァンにも言われていた。

まだ宿泊初日なので代金としての瑞希の血が有効だと思うが、大輔の指摘通り部屋に戻った所でやる事がない。

出来る事と言えば2人で雑談や今後についての話し合いなどが関の山だ。

今後については電気や水道などのライフラインの出所が判明しなければ話が進まない。

それならヴァンが起床するまでの間、老人の手伝いをして時間を潰す方が有意義に時間を使えるというものだ。

「そうですか……。それでは────」


その後は老人の指示を受けつつ、皿洗いや掃除などの雑務を行う事となった。


そして、太陽が昇りきり瑞希と大輔の真上から光を照らす頃、庭の掃除をしていた2人の下に老人が近づいてきた。

「瑞希様、大輔様、昼食前に少しよろしいでしょうか?」

老人に連れられ2人は菜園へ移動をする。

「昼食を作るにあたり、瑞希様と大輔様の好きな物を調理したいと考えていますので、お好きな食材がございましたら収穫お願いします」

そう言うと老人は2人にハサミとカゴを差し出す。

「量はどれくらい?」

「そうですね……。昼食は一応坊ちゃまの分も準備いたしますので3人分……。他の食材も使用しますので2人が収穫した食材でお腹が満たされる程度でお願いします」

「了解」

道具を受け取ると早速2人は収穫作業に移る。


「昨日も話してたけど、これってトマトだよな?」

大輔は瑞希に質問をしたつもりだったのだが、代わりに老人が返答をする。

「左様でございます。以前宿泊していた日本人の方にお願いをして植えさせていただいた物にございます」

「この模様はどうやって付けてるんだ?」

「そう言えば、滞在していた者は口を揃えてそのような事を申していますね。他の野菜も本来はこのような模様はないと」

「そうだね。カボチャもトマトもキュウリもナスも基本的には一色?って言うか模様はないよね」

「左様でございましたか。それでしたら恐らくですが、この地の魔力が関係しているのかと。……しかし、味には問題がないと皆さまおっしゃられていましたので見た目以外は問題ないと思われます」

「魔力!?やっぱり魔法とかあるのか!?」

本来の質問の回答とは別の部分に反応をする大輔。

少し興奮気味に質問をしている。

やはり『魔法』と言う単語にロマンを感じるのだろう。

「使える者も居るとは聞き及んでおりますが、坊ちゃまや私奴は使用出来ません。その辺りの知識も私より坊ちゃまの方がお詳しいかと」

「何にせよヴァンが起きないと何もわからないって事か……。ちなみにヴァンは何の野菜が好きなんだ?」

「坊ちゃまはカボチャなどの甘い野菜を好んで食します」

「そっか。じゃあ、ご機嫌取りの為にもカボチャは1つ収穫しておくか。瑞希、後は何収穫する?」

「甘いものかー。……あっ!大輔、果物!山彦くんから貰った果物。放っておいても駄目になるだけだしデザートで出してもらおうよ」

「それもそうだな。後で取りに行く。って事で果物も追加して良いか?」

「はい。勿論かまいません。坊ちゃまもお喜びになると思います。ありがとうございます」

色々と相談をしながら昼食の食材の収穫をする3人であった。


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