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異世界でも日本語が通じるご都合主義な第22話

そこには、1人の少年が立っていた。

少年の身長は140cm弱。肌は蒼白でその肌の青白さ故に綺麗な緋色の目が際立つ。

装いは中世ヨーロッパの貴族を想起させる衣装。

身の丈に合わない裾を引きずるほど長いフロックコートとシャツの首元のクラバットが特徴的だ。

目の前の少年はとある有名な怪物を彷彿とさせるゴシックファッションとなっている。

「Nu m-ai auzit? Iesi afara acum」

「「?」」

少年の話す言葉が理解できず、困惑の表情を浮かべたまま顔を見合わせる瑞希と大輔。

「ce faci. Ieși repede」

少年の2人を追い払うようなジェスチャーからこの場を去るように促している事が理解出来た。

「あ、あの」

現在の最優先事項は助けを求める事。

言葉が通じないにせよ、このまま追い出されるわけにはいかない。

現状を知ってもらう為、無意識に発した一言。

「!?」

瑞希の声を聴いた途端、少年は目を見開き、驚きの表情を隠せないでいる。

「主ら、もしや人間か?」

少年の口から発せられる日本語。

これには瑞希と大輔も驚きを隠せないでいる。

少年の話す言語がいきなり変化した事に対応出来ず、固まっていた2人に少年は再度声をかけてきた。

「Hmm……Nu ești japonez…….Dacă da…….Are you humans?」

「い、イエス!そう!人間、人間です!」

日本語の次は英語。

勉強が苦手な瑞希でもこの程度の英語なら理解は可能。

少年は2人に同じ事を質問している。

驚きは隠せていないものの、返事をしなければならないと感じた瑞希は必死に返答をする。

「そうか、人間か……。久しいな……。ならば……」

少年は懐に手を入れると徐にフォールディングナイフを取り出す。

ナイフが見えた瞬間身構える瑞希と大輔。

「瑞希、気を付けろ」

『気を付けろ』と言われても格闘技など戦闘の心得のない瑞希は襲われても避けようがないと思ったが、最低限致命傷は避けるように努力しようと少年の一挙手一投足に全神経を尖らせる。

「誤解させてしまったようだな。すまぬ、戦闘の意志はない。差支え無ければ少し血を融通して欲しいのだ」

そう言うと少年はナイフの刃を持ち、柄を2人に向け差し出す。

「やっぱりドラキュラなのかな?」

「ドラキュラじゃなくてヴァンパイアだろ?」

少年の容姿や『血』の単語から行き着いた答え。

2人は少年から差し出されているナイフを目の前にしてヒソヒソと話をしている。

「どう違うの?」

「ドラキュラって言うのはドラキュラ伯爵の事を指す個人の名称。ヴァンパイアとか吸血鬼が人間とか日本人って言う種族の括りで、ドラキュラは瑞希とか俺……青柳大輔とかの個人名って言えば分かるか?」

「へぇー。そうだったんだ。初めて知った」

「いやいや。かなり有名な話だろ。それにヴァンパイアじゃなくてダンピールの可能性だって大いにあるだろ」

「ダンピールって何?」

「吸血鬼と人間の混血の吸血鬼。つまりハーフで────」

話が横道にそれ、あらぬ方向へと進もうとしている。

「やはり無理かのぅ?」

2人が相談をしていると勘違いしていた少年は、大輔が神妙な面持ちで瑞希に話をする様子を見て交渉が決裂しそうになっていると思ったのだろう。

心配になり声をかけたのだ。

しかし、実際は瑞希が『ドラキュラ』と『ヴァンパイア』の違いを理解しておらず、大輔が指摘していただけに過ぎない。

その後のダンピールの話に至っては完全に妖怪オタクの趣味の領域の話である。

「あ、いやー。少しってどのくらいかなって思いまして。それと、血を分ける代わりと言っては何ですが僕たちが帰路につく手伝いをしていただけませんか?」

少年に声を掛けられ、話が脱線していた事に気が付き、話を元に戻す為、咄嗟の判断で質問に切り替える。

大輔の話が長くなりそうだったので、何処で話を切り上げようかと考えた瑞希にとっては渡りに船だったのかもしれない。

「うむ。可能な範囲で誘掖ゆうえきする事を誓おう。して、血の量だが、10cc程度でどうだ?」

「有益……?僕たち為に何か有益な事をしてくれる事で良いのかな?因みに10ccってどれくらいか大輔は分かる?」

『誘掖』の意味が分からず困惑し、頭の中で誤変換を行い、意味を推測する瑞希。

誤変換はあったものの意味としては当たらずとも遠からず。強ち間違いとは言い難い微妙なラインだった事もあり、話が通じてしまっている。

「大匙1杯が15ccで小匙1杯が5ccじゃなかったっけ?」

と言われてもあまりパッとしない瑞希。

しかし、コンビニなどで貰えるスプーン1杯程度だろうと見当をつける。

「まあ、それくらいなら」

瑞希は少年の提案に同意をし、少年からナイフを受け取ろうと一歩踏み出し手を伸ばす。

しかし……。


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