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友達と合流しただけの何気ない日常の1コマ。そんな第2話

大輔の免許取得予定日────。

何時頃に卒業式があるのかを聞きそびれていた瑞希は大輔からの連絡を今か今かと待ち詫びていた。

昼が過ぎ、日が完全に沈んだ頃、スマホが鳴る。

画面を確認すると大輔からの電話だった。

「もしもし?」

待ち侘びていた大輔からの電話だったが、待たされた時間が長かっただけに少し声に不機嫌さが乗ってしまう。

「もしもし?連絡遅れてゴメン。昼過ぎには免許取れたんだけど、お父さんと中古車買いに行ったり、食事したりしてたら遅くなった」

「無事取れたんだ。おめでとう」

多少の不機嫌さもあったが、大輔からの第一声が謝罪だったこともあり、滞りなく素直に大輔の免許取得を祝う言葉が口から漏れる。

「うん。ありがとう。……で、前に話してた予定なんだけど、明日でも大丈夫か?会うのも久しぶりだし、近況報告がてら何処かで食事だったり遊んだりしたくない?」

瑞希は少し考える……。

時間的な問題はない。

いや、寧ろ時間的には夜が本番。遅ければ尚良し。

しかし、大輔との近況報告もゆっくりしたい。

道中に車中で。とも考えたが、今日免許を取りたての大輔には運転に集中してもらいたい。

雑談などに夢中になった挙句、運転に集中出来なくなってしまっては心霊スポット巡り以上の恐怖体験になってしまう。

それでは本末転倒だ。

だが、先程の口振りから察するに食事とは昼食ではなく夕食の事だろう。

となると、今からファミレスなどでゆっくりと……。と言うのは少し酷だろう。

瑞希自身も夕食を済ませてしまっているのでドリンクバーのみで何時間も。と中高生の様な行動は避けたいと考えた。

「うん。明日でも良いよ。何時ごろ何処に集まる?」

正直に言うと今すぐにでも心霊スポット巡りに行きたかった。

駄々をこねるのも大人気ないと思い、素直に了承しただけだ。

「昼頃でも良い?」

「問題ないよ」

「OK、じゃあ住所教えて。12時~1時の間に到着出来るように頑張る」

「了解。住所は後で送るね」

「はーい。じゃあ、明日な」

通話を終えた瑞希は早速住所を書いたメッセージを大輔に送る。

メッセージを送った後に昼食について聞き忘れたな。と思った。

昼食を食べておいた方が良いのか否か、少し迷ったが、12時~1時に来る事を考えると丁度昼食時。

恐らく昼食は食べてこないだろうと推測をした。

万が一、大輔が昼食を食べてきた場合は近くのコンビニに寄ってもらえば良いだろうとも考え、確認する事なく明日に備え、早めに就寝する瑞希であった。


翌日────。

瑞希は早めの就寝をしたにもかかわらず、10時前にやっと起床した。

寝ぼけ眼でメッセージアプリを開き、大輔からのメッセージが無いかを確認する。

幸い、大輔からの連絡はなかった。

予定時刻まで約2~3時間。

軽く何か胃に入れるべきか悩んだが、直に大輔が来るのでその時で良いだろう言う考えに至る。

シャワーを浴び、目を醒まし、外出の準備を済ませ、まったりと大輔の到着を待つ。


12時を少し過ぎた頃、唐突にインターホンが鳴る。

「はーい」と少し大きめの声で反応をし、玄関のドアスコープで外の様子を確認するとそこには見知った顔があった。

初めに連絡をした時から5日。待ち詫びていた所為もあり上機嫌に玄関ドアを開ける。

「意外と早かったね。上がってゆっくりする?すぐに出発する?」

「駐車場所が分からなかったからそこの道に路車してるんだけど大丈夫かな?問題ありそうなら他の場所に移動しない?」

瑞希は暫し考える……。

言うまでもなく、車は疎か免許も所持していない瑞希は駐車場の契約をしていない。

アパートの駐車場に空きはあるものの、勝手に駐車するのは問題がある。

とは言え、アパート周辺の道路に駐車禁止のエリアはない……と思う。

瑞希は免許を取得していないが故、その辺りの情報には疎い。

漫画などの知識で駐車禁止の標識を知っている程度だ。

その標識をアパート周辺で見た記憶がないと言うのが正確な表現だろう。

「たぶん車の出入りとかに支障をきたさなければ大丈夫だと思うけど、お腹すいてるから適当に食事とかしながらでも良い?」

最終的に出した瑞希の答えがこれだ。

周辺の道路事情を理解していないので玉虫色の答えで返答せざるを得なかった。

しかし、後半部分を付け足す事で自分の意見を提示しているように誤魔化している。が、空腹なのは相違ないので強ち嘘とも言い難い。

「そうだな。丁度お昼だし、どこかで食事しながらの方が良いな」

「うん。じゃあ、すぐに準備するから車で待ってて」

「りょうか~い」

そう言い残すと大輔は車の方向へ踵を返した。

瑞希は髪型を軽く整え、心霊スポット探索用のバッグを手に取る。

中身は懐中電灯やモバイルバッテリー、お守り、清めようの塩などなど。時には山中など草木が生い茂る場所にも踏み入る場合もあるので軍手や虫よけスプレー、タオルなども常備してある。

その為、初見では防災バッグやサバイバルグッズの類と勘違いされる事もあるバッグである。

バッグの中身を軽く確認をし、戸締りの確認を入念に行い、アパートを後にする。


道路に出るとハザードを焚いた1台の軽自動車がポツンと停車している。

恐らく大輔の車だろう。

瑞希は車に近づくと運転席を覗き、大輔の姿を確認して助手席に乗り込む。

「じゃあ、しゅっぱーつ」

待ちに待った心霊スポット巡り。

上機嫌で号令を出す。

「シートベルト」

浮かれ過ぎていた所為か重大な事を失念していた。

大輔に指摘をされ慌てて荷物を足元に置き、シートベルトを締める。

「じゃあ、改めてしゅっぱーつ」

「はいはい」

多少呆れながらも大輔は車を発進させた。


瑞希の案内で近場のファミレスに入る。

昼時ではあったものの、平日だった所為か人は疎らで空席がチラホラ確認出来た。

店員に案内された席に着きメニューを眺める。

「車出してもらってるし、ご飯は俺が奢るよ」

得意気に言っているが、仕送りをちょろまかs……上手く遣り繰りして貯めたお金である。

「やったー。マジ?じゃあ、晩御飯は高級焼き肉が良い」

「昼だけ」

「ケチ―」

大輔も本気で言っている訳ではない。

瑞希もそれは理解している。晩御飯も普通の食事なら奢るつもりではいる。

「高級焼き肉」と言われたから「昼だけ」と返しただけだ。

そんな冗談を交えながらタッチパネルを操作して各々注文をする。

料理が運ばれてくるまでの間、本格的な雑談タイムに入る。

「で、大学どうなん?」

正直、あまり触れてほしくはない話題。

偶に連絡は取っていたものの、自身の失態などの失敗談は話していない。

勿論、サークルの新歓コンパの件も伏せている。

「想像してたよりは普通かな。大学だからもっと難しい事勉強するのかと思ってたけど、意外と高校の勉強と同じくらいのレベルかなって感想」

「そうじゃなくて、カノジョとかそういう話だよ」

瑞希もそれは理解していたが、別の話題で誤魔化せないかと試行錯誤したのだが、速攻で核心部分に迫られてしまった。

「カノジョ……?何それ美味しいの?」

「サークルとか入らなかったの?」

「う゛っ……」

「何だその分かり易い反応は。何かやらかしたの?面白そうだから聞かせろよ」

瑞希の反応により一瞬で看破されてしまったようだ。

散々な事に瑞希の反応は大輔の好奇心を刺激してしまい、目を爛々とさせている。

「楽しそうだね」

「他人の不幸は蜜の味って言うしな」

「大した事じゃないし良いけど、絶対に笑わないでよ」

「…………うん。絶対に笑わない」

これは絶対に笑うやつだ……。と思いながらも瑞希は新歓コンパでの失敗談を語りだす。

「────って感じで趣味の心霊スポット巡りの話をしていたらいつの間にかボッチになってたってだけだよ」

瑞希が話し終わる頃には料理は運ばれていた。

話している最中に食べ始めるのも何だなと思った大輔は料理を各々の近くに並べながら話を聞き、並べ終わった後は瑞希の話に集中していた。

瑞希も料理が運ばれた後はさっさと話を切り上げようと思い、所々省略しつつ速足でオチまで話しきった。

「まあ、そんなもんじゃない?話を聞いた限りだと熱く語り過ぎた感じかな」

瑞希の話が一段落ついたので食事に手を付けながら適当に返答をする。

「何でだよ。確かに女性陣のウケは悪かったけど、男ウケは結構よかったんだよ。結構盛り上がってたと思うし、そりゃ僕だって多少は饒舌になるって」

「だってコンパだぞ。コ・ン・パ。小中学生ならともかく、大学生だぞ。大・学・生。大抵の男は女の子とお近づきになるのが目的な訳で、瑞希の話に興味があったって女の子から引かれるような話をする様な男の相手はしてられないって。100歩譲って、解散した後に友達としてならって感じだけど、そもそもの第1歩目で盛大に躓くような人とはなー」

大輔からの駄目出しにぐうの音も出ない。

ぐうの音も出ない所か、今までその事実に気が付かなかったが故に目から鱗が落ちる。

感心しすぎて口をポカーンと開けた状態で間抜け面を晒している。

「瑞希だってそうだろ?半分ナンパ目的でサークルに入るようなもんだろ?」

「えっ……。いや……。先輩とかの知り合いが居ればレポートとか講義の過去問とか入手出来て楽かなって」

「まあ、それもあるだろうけど、それだけが目的って人は稀だな」

「そんな~……」

自身の大失態に肩をガックリと落とし、消え入りそうな情けない声で嘆く瑞希。

「まだ1年目の前期が終わっただけだし、シレっと夏休み明けからでもサークルに参加すれば良いじゃん」

「でも、みんな夏合宿とかで仲良くなってるんでしょ?そんな中に入るのは気まずいって」

「夏合宿……?ないない。そんなの一部のサークルか相当仲の良い人と旅行に行く程度だって。夏休み中の活動で仲良くなる人は居るかもだけど。1年だったら4月からだし、まだ半年もたってないじゃん。それに、野郎共の反応が良かったと思ってるなら通常の活動中なら話の良いキッカケ作りになるんじゃない?」

「そうかな?」

「そうだよ。それに、一歩踏み出さないと何も変わらないじゃん」

「そう言われると……」

その後も日常会話を楽しみながら食事は続いた……。



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