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やっと異世界に辿り着いたものの『ここは異世界です』と説明されなければ気が付けない第14話

規則的な揺れに身を委ねながら仕方が無く外を眺める瑞希。

「それにしても、この列車って何処に行くんだろう……」

暗くて鮮明に見えている訳ではないが、あまり変化が無く、見た記憶の無い風景を見ていてふと疑問に思った事を何とはなしに呟いた独り言。

瑞希としては大輔に話を振ったつもりは毛頭ない。

「外の風景も全く見た事ないし、本当に何処に行くんだろうな。冗談抜きで幽霊列車だったりしてな。実際は山道で俺たちは事故ってて、崖下に真っ逆さま。それに気付かず霊体のまま心霊スポット巡り。行き先は地獄ですってな」

「流石にそれは無いでしょ。ほら、抓ると痛いし」

そう言うと瑞希は自身の頬を抓ってみせる。

「それは夢かどうかを確認する話」

「そっか……。そうだったね」

間違いを誤魔化すように「タハハ……」笑う瑞希。

他愛もない会話のおかげで多少空気が和んだ気がする。

せっかく和んだ空気。このまま黙ってしまうとまた重苦しい雰囲気になってしまうと感じた2人はそのまま会話を続けた。

万が一幽霊列車だった場合は……。列車の考察や現在地、目的地の予想などなど。

なるべく暗い話にならないよう舵を切りながら会話を続けていると外の風景が一変し、真っ暗になる。

「トンネルに入ったね?」

「国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国であったとか?」

「川端康成の雪国だっけ?日本は島国だから絶対に国境じゃないけどね。でも、知ってる場所だと良いね」

そんな話をしていると前方から警笛の音が聞こえ、外の風景が戻る。

どうやらトンネルを抜けたようだ。勿論、雪国でもなければ瑞希たちの見知った場所でもなかった。

キキ――ッ。

警笛の暫く後、ブレーキ音と共に列車が減速をし始める。

何処かに止まるらしい。

2人は会話を止め、顔を見合わせる。

「止まった?」

「止まったな」

「降りる?」

「そもそもドア開くのか?」

あれやこれやと行動をしない理由を無理矢理見つけながらの会話。

根底には恐怖心があるのだろう。

しかし、暫くしても発車する気配のない列車に嫌気がさしたのか、瑞希がとうとう行動に移す。

出入り口まで移動をするとドアに手を掛ける。

出発した時に大輔が開けようと試みた時にはビクともしなかったドアが今では何の抵抗もなくすんなりと開かれる。

「……開いちゃった」

瑞希自身開くとは思ってもみなかった。

ドアを開けようとしたが開かないから中で待つしかない。と言う結論にしたかったのだが、瑞希の意に反しドアは開け放たれた。

開いたものは仕方がないと瑞希は首だけを外に出し辺りをキョロキョロと見渡す。

列車に乗せられた時のホームと同じような作りのホーム。

だが、乗車時のホームとは違い寂れているが何処か小綺麗な感じはする。

瑞希は直感で別のホームだと悟る。

月明りを頼りに遠くまで見渡そうとしてみたが暗くて遠くの状況は確認出来ない。

「どうする?」

ドアが開いたのを確認して瑞希の側まで移動をしてきた大輔が瑞希に質問をする。

「ちょっと待ってて」

瑞希は大輔に待機するよう指示をすると先程まで座っていた席にある自分のバッグを手にして再度大輔の下へ戻る。

「すぐに戻れる範囲で少し見て回ろう。暗くて良く見えないけど、知ってる場所の可能性もあるからね。直接知ってなくてもテレビとかで見た場所の可能性もあるよね。……でも、列車が動いたら乗り込んだ方が良いと思う。笛吹トンネルから遠く知らない場所……。もしかしたら異次元とか異世界とかかもしれないし、その場合取り残されたら大変だからね。列車だし最悪の場合折り返すだろうし、乗り続けてれば元居た場所に戻る可能性もあるからまた動き出すようなら乗ることにしようよ」

「そうだな。万が一最終目的地が車両基地だとしても誰か来る可能性もあるし、来なかったとしても何らかの手掛かりはあると思う。車両基地があるなら時間が経てば再出発する可能性もある。走り出したら乗り込むのが今出来る最善って感じだし、その案で行こう」

瑞希は懐中電灯を手にする。

今は肝試しとは違う。光源は多くて困ることは無いと考えた大輔もポケットからスマホを取り出しライトをつける。

「……スマホ?」

「肝試しじゃないんだからライト使っても良いだろ?」

「うん。それは問題ないんだけど、そうじゃなくって、GPS!」

「なるほど!現在地が分かる!それに親とか友達に連絡すれば迎えに来てくれる可能性もあるな。基本的に連絡でしか使わないからGPSは思いつかなかった!」

「僕も大輔のスマホを見るまで忘れてたから同じようなものだよ」

GPSの存在を思い出した大輔はスマホを操作しようとする。

「圏外だ」

画面の右上に表示される『圏外』の文字。

一縷の望みも途絶え、現在地は分からず仕舞いになってしまう。

「それもそうだよね。怖い話みたいに電波は届いて書き込みは出来るけど場所が分からなかったり、画像だけが送れなかったり何て都合の良い事はないよね。でも、この周辺が圏外なだけかもしれないから小忠実こまめにチェックだけはするようにしようよ」

瑞希は自分のスマホの電波状況も確認したが、大輔のスマホ同様に圏外だった。

しかし、日本国内でも圏外になる場所は腐るほどある。

圏外で残念がっている大輔を励ますように瑞希は伝える。

……いや、どちらかと言えば、不安にならないように自分にそう言い聞かせているように声に出したのだろう。


ホームに降り立った2人は周囲を警戒しつつ、捜索範囲を話し合うつもりだった。

……が、瑞希が何かに気が付いた。


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