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現時点で唯一残されている手掛かりの話をされる第126話

早々に調査を打ち切った4人はトンネルを出てテントへと戻る事になった。

「今回は何の成果も無かったね」

「まあ、無かったと言えば無かったが、線路を辿ったところで元の世界に戻れないって分かったのは成果の1つかもな。無駄にこの場所に固執する必要が無くなったと言うか何と言うか」

「あとはコレを分析して何か分かるかだな」

ミクは懐に入れて持ち出した欠片を取り出しテーブルの上に置く。

「他に手掛かりが何かあれば良かったんだけどね」

「……手掛かりならある」

「えっ?えーーーーーーーーーーーっ!!何?何?」

大輔の発言に驚きと混乱と動揺を隠し切れない様子の瑞希。

辺りをキョロキョロと見渡し、自分が何かを見落としていないか確認をしながら大輔に質問をする。

「ヴァン、それにミク。俺たちに何か隠してるだろ」

「妾がお前たちに隠し事……?」

大輔に問われたところで心当たりが無いと言った様子のミク。

「恍けるな!列車のヘッドマークだよ!何か知ってんだろ!」

ミクの様子に怒りを露わにし、声を荒らげる大輔。

騒ぎを聞きつけ、ミクの部下がテント内の様子を伺っている。

ミクは部下に何でもない事をジェスチャーで伝え、少し戸惑った様子でヴァンをチラリと見る。

ミクの視線を感じ取ったヴァン。ミクに軽く頷くような仕草を見せ、口を開く。

「その事については余が説明しよう。少し話が長くなる点とお主らと関係があるか現時点では不明だと言う点だけ留意してくれ」

ヴァンの言葉を聞いた瑞希と大輔は無言のまま頷く。

それを見たヴァンは暫時目を瞑り、一呼吸置くと意を決したように語り始めた。

「事の始まりは670年程前、余がまだ小さかった頃に遡る」

真剣な面持ちで話し始めるヴァン。

「今でも十分ちいs……。すまん続けてくれ」

真面目に話をし始めた途端、話の腰を折ろうとしたミクだが、ヴァンに一睨みされ、あっさりと謝罪をし、続きを促す。

「余が幼かった頃に遡る────」

ミクの発言が気に障ったのだろう。

ヴァンは少し言い回しを変えて再度話し始めた。


「────と言う訳じゃ。その事件の後、奴らの足取りは不明。稀にだが今回の様に手掛かりらしきものは発見されるものの、完全に鳴りを潜めている状況と言って良い。そもそも、生存しているかすら疑わしい。あの列車にしても劣化が激しく、いつ制作された物かも予想がつかん。制作者が余の探している人物とかかわりがある可能性は高いが、製作者と使用者が異なる可能性は大いにある。それに、列車にあった印は同行者の荷物に刻印されていた物と酷似していると言うだけであり直接関係するかもわからぬ状況だ」

固唾を飲んで聞き入っていた瑞希と大輔。

ヴァンが語り終わった後も余韻は続き、テント内に静寂は静寂に包まれる。

沈黙を破るように口を開いたのは瑞希だった。

「それで、ヴァンくんはその人たち……両親のかたきを見つけてどうするの?かたきを討つの?」

自分たちが元の世界へと帰還する方法の手掛かりはなかった。

しかし、ヴァンの話を聞いて瑞希は自分が帰還する事以上にヴァンの最終目的が気になったのだ。

「復讐……ってやつか……」

「全くその気がないと言えば嘘になる。だが、今となっては600年以上も前の話。復讐心も薄れておる。ヤツらを見つけて……だが、生死も不明故何とも言えんな。只、真相は究明したい。何故、余の両親に目を付けたのか。何故、余の両親を手にかけたのか……。それと、解呪の方法を知りたいと言うのが率直な意見だな」

「解呪?呪い?」

「瑞希は坊やを見てどう思う?」

「どうって言うのは具体的に何を指していますか?」

「容姿の話だ」

「小s……。えーっと……。子どm……。んー……。とても600年以上生きているとは思えないくらい若々しいです。ミクさんも」

『小さい』『子供っぽい』と発言しようとする度、ヴァンに睨まれ都度言い直す瑞希。

ヴァンの事に限定すると再度睨まれそうな予感がした瑞希は最後にミクの事を取って付けた様に加えた。

「妾の場合は変身や変化の類だが、坊やの場合は『恐らく呪いの類だろう』と言われている。あの日以来、坊やの身体の成長は時が止まったかのように変化しない。それは坊やの御付きの爺さんも同様。状況は多少違えど坊やの家の外を徘徊する者たちもそうだ。元は坊やの下ではたr……」

「余計な事まで話すでない。……まあ、そんな訳で、余は余の両親を殺害した犯人と余に呪いをかけたその連れを探しておる。あの印は唯一の手掛かりと言って過言ではないと言う事だ。それに復讐と言うなら、余の事情を知っておきながら再会する度、語らい種にする底意地の悪いババアに対する恨みの方が深いかもしれぬぞ」

「なるほどな」

ヴァンの説明を聞き、一応の納得を見せる大輔。

後半部分についてはミクも飄々と聞き流しているので冗談半分なのだろうと思いつつ、下手に触れると余計な所へ飛び火する可能性もあったので聞き流す事にした。

その大輔の一言を最後に、再び沈黙に包まれるテント内。


「Uy’d inaey tuqo ya joif nivl」

4人の会話が途切れるのを見計らったかのようなタイミングの良さで、ミクの部下の1人が静寂を破る。

「もうそんな時間か。瑞希、大輔、そろそろ帰るぞ。帰還する準備をしろ」

テントを開けたミクの部下の後ろの空は既に茜色に染まっていた。

ヴァンの話に聞き入っていたので気が付かなかったが、テントに戻って以降数時間経過していたようだ。

「準備って言われても特に何もって感じだな」

「あっ!すみません。撮影しておきたいものがあるので少し時間をください」

「あまり遅くなるなよ」

ミクの返答を聞くや否や瑞希はテントを飛び出した。

「遅くなると何かあるのか?グリフォンも鳥だから夜目が利かないとかか?」

「鳥だから……?妾よりも鳥類の方が夜目の利く者は多いぞ。暗くなると離着陸の難易度が上がるだけだな。今回は2人乗りだから余計にな」

「なるほど。しかし、瑞希は何をしに行ったのやら……」

ミクとの会話が終了し、瑞希の様子を確認しようとテントの外に出ようとする大輔。

しかし、思いの外早く瑞希が戻ってきた。

「お待たせしました」

「何してたんだ?」

「列車のあのマークの撮影。僕たちに関係するかどうかは分からないけど、今の所、手掛かりはコレしかないからね」

「大輔は撮らなくて良いのか?」

瑞希の発言を受け、ミクが大輔に確認を取る。

「まあ、瑞希が撮影したなら問題ない。必要な時は瑞希の画像を送ってもらえば良いだけだ」

「そうか。では帰還する。瑞希と大輔は先にグリフォンの側で待っていてくれ。坊や、今日は時間を取らせて悪かったな」

「いや、情報の提供、感謝する。今後もよろしく頼む」

こうして解散した一行。


瑞希と大輔はグリフォンの下へ歩を進め、ミクたちが集合するまでの間、列車の事やヴァンの過去の事について2人で話し合っていた。


そして、完全に暗くなる前に町に戻れた一行は難なく着陸にも成功したのだが……。

大輔はヴァンの過去の話と列車のマーク、自分たちがこの世界に来た事の関連性について考え事をしていた所為でミクのおpp……ミクとグリフォンに乗って帰還する計画や飛行時の撮影についてすっかり忘れて帰還してしまい、グリフォンを降りた後に頭を抱え、苦悩な叫びとともに後悔した。

そして、瑞希が大輔に何を悔いているのか聞いたのだが、「えーっと、あれだ。ほら、グリフォンが飛行している時に撮影してもらうのを忘れたからな」と大輔は割とどうでも良い方の理由しか話さなかった。

その為、真実を知らない瑞希は余程飛行中に撮影してほしかったのかと思いつつ、大輔のオーバー過ぎるリアクションにドン引きするのであった────。



次回投稿


2026年1月1日(20時予定)です。

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