余暇で毎度恒例の撮影会を始める第121話
グリフォンたちの元へ戻った瑞希と大輔。
まずはお決まりの構図で自身のスマホで各々1枚ずつ撮影。
この時点で瑞希は満足したのだが、そうはいかない人物がいる。
言うまでも無く大輔である。
瑞希との写真を撮り終えた後、自撮り写真を気の済むまで撮りまくる。
暫く大輔の撮影を見学していた瑞希だが、暇を持て余し始める。
あたりをキョロキョロと確認すると、大輔の撮影の邪魔にならない位置に居て両前足を枕にして寝ている態勢のグリフォンが目についた。
そのグリフォンにそーっと近づき、おっかなびっくり手を伸ばし触れようと試みる。
モンスターの知識が乏しい瑞希でさえ知っている有名なモンスター。
遠目にも格好良さの伝わるフォルム。
乗った時に触れたものの、撫でてみたいと言う衝動に駆られたのであった。
手懐けられ大人しいものの、顔は猛禽類特有の鋭い嘴が備わっており、今は目を瞑っているが、目を開けている時の視線も何処となく鋭く感じる。
やはり触れるのにはそれ相応の勇気がいる。
始めは顎下を撫でようと考えていたが、そこまでの勇気が出なかった瑞希。
妥協案として、首の後ろを軽く触る。
グリフォンが抵抗を見せない事から大丈夫そうだと悟った瑞希は触れていた辺りを毛並みに逆らわないように撫でる。
グリフォンからの反応はない。
触れても問題ないと理解した瑞希。次は大胆にも嘴へと手を伸ばしてみる。
手が嘴に触れるか触れないかの距離まで近づいた瞬間……。
「おーい。瑞希、写真撮ってくれー」
大輔から声が掛かる。
休憩しているグリフォンたちを起こさない様に気を使っているものの、通常よりは大きな声。
グリフォンの嘴に触ろうとしていた緊張の瞬間だったが故、急な呼びかけに瑞希の身体がビクッと反応する。
もう少しで触れられる距離だったものの、グリフォンの目が開き、その視線が瑞希を捉える。
実際のところは分からないが、睨まれたように感じた瑞希は嘴に触れるのを諦め大輔の下へ小走りで近づいて行った。
大輔の下へ到着すると、早速スマホを手渡された。
ワイバーンの時に学習した瑞希は中身の確認をせず撮影の準備に入る。
しかし、スマホを構えたものの大輔は構図を考えている最中であった。
瑞希は大輔に断りを入れ、グリフォンとの自撮り写真を見せてもらう事にした。
どうやら前回のワイバーンとの撮影時に学習したらしく、グリフォンの背後に回っての写真は皆無だった。
想像の数倍早く自撮り撮影を終え、瑞希に声が掛かったのもグリフォンの正面をメインとした自撮りに集中したためだろう。
瑞希が一通り写真を確認し終えた頃合いを見計らい、大輔が構図の説明に入る。
大輔の指示通り20~30枚ほど撮影を試みたが、大輔納得の1枚には程遠いようだ……。
「何か違うんだよな……。何て言うか、もっとこう躍動感?って言うかそう言うのが欲しいんだよな」
「躍動感?ここに来る途中、撮影しておけば良かったかもね」
「……それだ!勝手に乗ったら怒られるかな?俺がグリフォンに乗って、瑞希がローアングルから撮ってくれれば1人で騎乗してるように見えないかな?」
瑞希の何気ない一言から最高の構図の発想を得た大輔。
興奮気味ではあるものの、まだ分別がつく程度には理性が残っているようだ。
「流石に怒られると思うよ。万が一、飛んじゃったら危ないしね」
「だよな……。そうだ、ミクに相談してみようぜ」
大輔は瑞希の返答を聞く間もなくミクの下へと向かっていった。
元々断るつもりが無かった瑞希も大輔の後に続く。
「ミク、相談があるんだけど……」
ミクの姿を確認した大輔。
多少離れた位置だったが、少し大きめな声で呼びかける。
しかし、近づくにつれミクが神妙な面持ちで列車を眺めているのが確認出来るにつれ、大輔の声が尻窄みに小さくなっていった。
「声かけて良い雰囲気かな?」
ミクまでの距離は残り数歩。
不安になった大輔は横に居る瑞希に小声で質問をする。
「どうした?何かあったのか?」
瑞希が大輔の質問に答える前にミクが2人の方へ振り向き質問をしてきた。
遠くから大きな声で話しかけたのだ。ミクの耳に届いて当然である。
「えーっと……。グリフォンに跨って撮影したいなって。空を飛ばない様に見張ってほしいみたいな?」
自分で声を掛けておきながら、ミクに聞こえていたとは想像もしていなかったのか、大輔がしどろもどろになりながら返す。
「そう言う事か。良いだろう、ついて来い」
そう言うとミクはグリフォンの場所まで歩いて行き、瑞希と大輔もミクの後に続くのであった。
グリフォンたちの居る場所まで戻ったミクは、近くに居た亜人の1人に何やら話しかけている。
日本語ではない事は理解出来るが、エレノアが居ないので通訳を頼める相手が居ない。故にミクたちの会話内容までは分からなかった。
ミクたちの会話はものの数分で終わり、ミクが瑞希たちに向き直る。
「撮影の手伝いをするように頼んでおいた。日本語は通じないが、一応カメラに映らないよう注意するようにとは伝えてある。意思疎通が必要な場合はお互い身振り手振りで頑張れ。必要以上に危険な真似をしなければ問題ないが、この者が止めた場合は何か危険な事をしている合図だ。一旦撮影を止めるように」
「了解」
「分かりました」
2人の返答を聞き、ミクが駅方向へ引き返そうとしたその時、一頭のグリフォンが瑞希たちの居る方向へと近づいてくるのが確認出来た。




