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駅に到着した第120話

瑞希と大輔はミク、犬の獣人の手を借りグリフォンの騎乗に成功。

本来なら、バイクなどでの2人乗りの時の様にミクたちの後ろに乗り、騎手に捕まるのが正しいと思う。

他の組は騎手が前に乗っていたり、後ろに乗っていたりだが、騎手より大きい者が前に乗っている事は無かった。

しかし、瑞希と大輔は下から押してもらう形で手を借り騎乗した時、前方付近に乗ってしまった為、ミクと犬の獣人と同等かそれ以上の体格にもかかわらず、前に陣取る形になってしまった。

だが、ミクも犬の獣人も特に気にする素振りを見せず、2人を騎乗させた後、瑞希と大輔それぞれの後ろに騎乗した。


準備が完了した一行。

1人乗りのグリフォン、瑞希とミク、そして大輔と犬の獣人、残りの2人乗りのグリフォンの順で飛び立った。

グリフォンが飛び立つ際、多少の砂埃が舞う程度のやや強めの風が吹いたがヘリコプターが飛び立つときの様な風を想像していた瑞希と大輔にとっては想像よりもはるかに小さい風であった。

乗っている感覚としては、真上に飛び上がると表現するよりは見えない階段を駆け上がったと表現した方が近しい感覚だった。

離陸時の風については離陸方法の違いが影響しているのかもしれない。


グリフォンの飛ぶ高度が安定した所で瑞希とミクの乗ったグリフォンが少し速度を落とし、大輔たちの乗るグリフォンに並走する形をとった。

近づく瑞希たちのグリフォンを確認した大輔。

「────ッ!!」

その時、衝撃的な光景を目の当たりにした大輔が目を見開く。

「どうだ?乗り心地は」

いつもよりも少し大きな声でミクが質問をする。恐らく通常の声量だと風の影響で聞こえにくいのだろう。

この質問が瑞希に向けた質問なのか大輔に向けた質問なのか瑞希には分からなかったが、態々並走してからの質問だったので、大輔に向けた質問なのだろうと瑞希は考えた。

「少し窮屈だけど最高だよ!!」

少し怒気の籠ったような大きな声で返答する大輔。そう、窮屈なのである……。

故に、瑞希も大輔も騎手と密着する形だ。

先程、大輔が見た光景はミクのたわわな双丘が瑞希の背中に押し付けられている羨m……けしからん光景だった。

その事を瑞希もミクも気にしている様子はない。

そんな瑞希を妬ましい目で見つめながらも帰りはミクのグリフォンに乗ろうと強く心に誓う大輔。

そして、大輔の声が無駄に大きくなっているのはグリフォンの騎乗でテンションが高いだけなのか、瑞希とミクの接触具合を見て自棄やけを起こしたが故なのかは誰も知る由が無い……。

「山の麓から歩くならワイバーンなどでも良かったのだが、目的地周辺に着陸した方が良いと言う意見が多数でグリフォンの移動になった。我々もスペース節約の為、グリフォンの数を減らしている。すまないがそこは我慢してくれ」

「謝罪されるほどじゃないし、狭いのは軽自動車とかで慣れてるから気にすんな」

どうやらグリフォンは2人乗りなのではなく、グリフォンを停めておく場所の関係上、2人1組になったらしい。

2人の会話を聞きながら、瑞希が山の中腹辺りにあった駅の周辺を思い返してみる。

ワイバーン乗り場程のスペースを確保出来るか?と問われれば疑問に思うかもしれないが、グリフォン乗り場程度のスペースなら余裕で確保可能だったと記憶している。

そして、瑞希が今騎乗しているグリフォンのサイズを考えるにミクと部下が1人1頭……つまり、9頭のグリフォンを停めておくスペースは十分に確保可能だと感じた。

6頭編成にしたのには何か他の理由があるのかもしれない。

それよりも山登りをせずに済むならそれで良いか……。などと考えているうちに瑞希たちの乗るグリフォンは山を越える。

ヴァン邸と町の間にある山だ。

辺りを見渡すとヴァン邸を確認する事が出来た。

ヴァン邸で過ごしていた時から気付いていたが、相当な豪邸である。

近くの上空から見るとその広さがより際立つ。

邸宅も然る事ながら庭が広大であり、森の中にポツンと開けた空間があるので見つけやすい。


そんなヴァン邸のある森もあっという間に抜け、広大な荒野が広がり、目的地でもある駅のある山が確認出来る。

只でさえ歩行速度よりも早いうえに、空路で障害物も無い。

瑞希と大輔が歩いた時間や馬骨で移動した時とは比べ物にならない速さで目的地へと到着した一行。

高度は駅のある中腹と然程変わらないが、目的の駅周辺からは少し離れた位置に着陸。

着陸する少し前にミクからの説明と自分たちの目で実際に見た光景。

駅周辺は調査用のキャンプが設営されていた為、少し離れた位置に着陸したのだった。

それと同時にグリフォンを停める場所の問題が露わになった。

そう、キャンプ設営している所為で瑞希が想像していたよりも遥かに空きスペースが少なくなっている。

着陸した後、グリフォンを移動させればスペースを確保する事は可能だが、如何せん山の中腹である。移動の手間との兼ね合いを考えるとどちらが良いか微妙な所である。


それはさておき、無事着陸を果たした一行は次々とグリフォンから降り、駅近くのキャンプ地へと歩を進める。

「まだ到着していないようだな」

ミクは駅周辺をキョロキョロと見渡した後、呟くように囁いた。

「誰か来るんですか?」

横に居た瑞希にははっきりと聞こえていたらしく、ミクの発言に対し、質問をする。

「坊やだよ」

「坊や……?ヴァンくんですか?」

「うむ。そろそろ到着する手筈だが、坊やも朝が早い訳ではないからな。坊やが来るまで自由時間にするか、調査に参加するか……」

「時間あるならグリフォンの撮影をしても良いか?」

少し予定が狂い、これからの予定を立て直そうとしているミク。

そんなミクの一言を聞いた大輔。ここぞとばかりに自身の希望を主張した。

「そうだな。今の所、お前たちの出番はない。坊やが到着するまでの間、好きにして構わんぞ」

「やりぃ♪行くぞ、瑞希」

ミクの了承を得、意気揚々と来た道を引き返す大輔。

当然の様に瑞希を誘う。

瑞希としても時間を持て余すくらいならと大輔の撮影会に付き合う事にした。

この後の展開が読めているミクは大輔に撮影の許可を出したものの、2人についてくる気配はなかった。


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