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出発地点でもある駅の調査に向かう第119話

翌日────。

指定された時間に瑞希と大輔は商会の入り口付近に待機している。

ベッドのおかげで今日も瑞希は遅刻する事無く起床する事が出来ている。


「すまない、待たせたな」

2人が到着して暫くした頃、ミクが数人の亜人や獣人を引き連れ合流した。

「僕たちも今来たところです」

「そうか。本来なら陸路でも問題ないのだが、先日のワイバーンの件の謝罪も込め、今回グリフォンを用意させたが問題ないか?陸路を希望するなら今のうちに言ってくれ」

「おぉ!マジか!!グリフォンに乗れるのか!!全然問題ない!!なっ!瑞希!?」

目をキラキラと輝かせながらミクの質問に返答する大輔。

この姿を見てしまった以上、瑞希に断る選択肢はない。

「はい。只、僕も大輔もグリフォンに乗った事が無いので1人では乗れないですが大丈夫ですか?」

「無論お前たちに手綱を握らせる事はない。その辺りは気にしないでも大丈夫だ」

「良し、行こう。早速行こう。直ぐ行こう」

「そう焦るな。グリフォンは逃げはせん。場所も分からず移動しようとするな。乗り場まで距離があるから乗り物を使う」

浮足立って事をく大輔をやんわりと制止するミク。

大輔が落ち着いたのを確認したミクは近くに居た部下に何やら指示を出す。

指示を受けた部下は軽く返答をし、何処かへと言ってしまった。


暫くすると先程指示を受けた部下が馬車もどきのゴーレム車に乗って戻ってきた。

以前、ドワーフたちと乗った物よりも少し大きい。大きいのはゴーレムではなく、後ろの荷台の長さであり、瑞希、大輔、ミクと部下7人プラス車を用意した御者の計11人が乗っても余裕がある広さである。

ミク、部下たち、大輔、瑞希の順に乗り込む。進行方向を横にし、向かい合わせになるように座る。

「全員乗り込んだな。出発だ」

ミクの号令で商会前を出発。

ワイバーン厩舎よりも瑞希たちの宿舎寄り方向の郊外へと進み続ける。


暫く走り続けると民家のような建物が無くなり、一面に金色の絨毯を敷き詰めたような幻想的な風景に変化。

瑞希の口から思わず感嘆の声が漏れる。

近づいた際に観察するとそこはマンガ肉とは全く異なる作物の畑。

米や小麦の様なイネ科の植物である事は一目して理解出来た。

座っている瑞希には正確な高さは測れなかったものの、瑞希の身長と同程度か少し高い程度だと目測した。

しかも、穂が垂れている状態での高さ。

瑞希の植物知識が乏しいのもあるが、全く心当たりの無い作物である。

穂の垂れ具合や色合いから収穫間近なのは予想出来たが、結局何の作物なのは分からなかった。

規模もマンガ肉の畑とは段違いであり、右を見ても左を見ても黄金色に輝く作物しか映らない程だ。

その規模から推測するに、この町の主食として使用されている作物だろう。


そして、そんな畑地帯を抜けるとワイバーン厩舎ほどではないものの、相当大きい建物が見えてきた。

建物の全貌が確認出来る位置に来た時、ミクが「アレが目的地だ」と瑞希たちに声を掛けてきた事から、アレがグリフォンの厩舎か乗り場なのだろう。

続けてミクが建物の説明を加える。

ミクの説明によるとそこはグリフォンの厩舎兼乗り場。

ワイバーンと違い大規模な乗り場を必要としないので、乗り場については厩舎の横にある程度のスペースが確保出来ていれば十分なのだと言う。


瑞希たちを乗せた車は厩舎横のスペースに停車。

全員が下車し、ミクが瑞希と大輔に暫時待機するように指示をし、ミクと部下5人は厩舎の中へと消えていった。


ミクの指示に従い暫く待つと部下の1人がグリフォンを連れて戻ってきた。

1人の部下が戻って来たのを皮切りに次々と戻って来るミクの部下たち。

ミクも部下たちに紛れ4番目に戻ってきている。

厩舎の中に入ったミクを含めた6人が1人1頭のグリフォンを連れ居ている。

つまり11人で6頭のグリフォン。

瑞希たちと残っていた亜人が他の亜人に近づいて行ったのを見るに基本的には2人乗りなのだろう。

例外として熊の獣人は巨体故なのか1人でグリフォンに乗り、残りの5人のグリフォンに瑞希と大輔、残っていたミクの部下たちが同乗するのだと推測出来る。

そしてミクのグリフォンのみ特別仕様。……と言う事は無く、ミクのグリフォンも含め、皆、大きさの違いはあれど似たような姿形をしている。

「写真撮っても良いか?」

全員が揃ったのを見計らって大輔がミクに質問をする。

「……ダメだ。向こうに着いてからにしてくれ」

一瞬考えたミクだが、大輔の提案を拒否。

ミクの脳裏には先日のワイバーン撮影時の大輔の姿が浮かんだ。

ミク1人ならまだしも、今は部下が居る。それに加え、今回の目的地には調査隊の面々も先行しており、あまり到着を遅らせたくないと言う理由もあった。

「少しくらい良いじゃんかよ」

「向こうで好きなだけ撮らせてやる。今は出発を急ぐ」

大輔は口を尖らせ拗ねたように抗議するもミクは許可を出さなかった。

これはミクの大英断であり、恐らく大輔に撮影許可を出していた場合、早くても小一時間はこの場に留まる事になっていただろう……。

「時間に追われて撮影するより、向こうでゆっくり納得いく写真撮った方が良くない?」

瑞希も大輔に撮影の許可を出した場合の結果は火を見るより明らか。

ミクに助け舟を出すつもりで大輔の説得に当たる。

大輔としても瑞希の言い分は納得出来る部分が少なからずある。

瑞希の説得の甲斐もあって、渋々ながら大輔は一刻も早く撮影したい気持ちを抑える事にした。


その後、ミクから瑞希と大輔に騎乗時の注意点など軽くレクチャーを受ける。

とは言え、今回は2人乗り。瑞希と大輔の後ろにそれぞれ別の者が乗る形だ。

よって、グリフォンから落ちないよう無暗に身体を乗り出してはいけないと念押しされ、飛行時の風の影響や空気抵抗、摩擦抵抗などの各種抵抗、気温変化などはグリフォンが飛行時に自身の周囲に風魔法を使用するので緩和されるとの事だった。

そして最後に社員証を見える位置に提示しておくように指示された。

これは前に説明を受けた通り、いざこざを避ける為の措置である。

グリフォンの鞍にも商会のマークが示されており、今回は商会の者が大多数とは言え、町の外での行動。万が一に備えての事だと言う。

それを了承した瑞希と大輔。

2人が社員証の提示をしたのを確認したミクは自分か犬の獣人のグリフォンに同乗するよう瑞希と大輔に指示を出す。

瑞希、大輔の双方ともどちらでも良いと言う意見だった。

然程距離の違いはなかったが、より近い方と言う理由だけで瑞希がミク、大輔が犬の獣人の下へ行きグリフォンへ乗り込む事が決定した。


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