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【閑話】寝起きの悪いとある少女の一日(1/2)

朝、6時────。

ビーッビーッと目覚ましのアラームが枕元で鳴る。

徐々に大きくなるアラーム音。

けたたましく鳴り響く音に動じる事は無く、眠り続ける少女。

1分程度で音は止み、続いてベッドがカタカタと揺れ始めた。

震度6くらいはあるのではないかと想像出来る強い揺れ。

それでも少女が起きる気配が無い。

ベッドの揺れも1分程度で止まる。

ベッドの揺れが止まった途端、枕元に置いてあったハンマーが少女の頭目掛け振り下ろされる。

しかし、少女は突如として上体を起こし華麗にハンマーを回避。

少女は起きたかに思われたが少女は上体を起こして直ぐ、パタリと横に倒れる。時計の9時の方向に頭、6時の方向に足がある状態で眠っている。今回は上体を起こしてハンマーを回避したが、寝返りを打って回避する日もある……。

ハンマーが元の状態に戻っている最中、次の装置が作動。

壁にあった棒が振り抜かれる。

だが、少女はハンマーを回避して直ぐ横になった為、棒は空を切り少女の身体の上を通過するだけで何の効果も無い。

次の瞬間、ベッドの下に設置されていたバネの装置が発動。

ベッドマットが天井付近まで跳ね上がり、元の位置に戻る。

起こす事が目的なのでベッドマットが天井に届く事は無かったが、慣性の法則で勢いの止まらない少女の身体だけが宙を浮き天井にぶつかった。

天井にぶつかったと言っても、軽く触れる程度であり、当然ながら少女が起きる気配はない……。

そして、跳ね上がり、元に戻る衝撃で少女の身体はベッドマットの上で数回バウンドしている。

そんな事は意に介さず、起きる素振りを見せない少女。

只、眠るには不自然な体制だったのだろう。少女はモゾモゾと身体を動かし、折れ曲がった身体が真っ直ぐに伸びる。

だが、当初寝ていた状態から反時計回りに90度(9時方向に頭、3時方向に足)動いた状態であり、バウンドをした時に身体の位置が動き、首から上はベッドに収まっておらず、だらりと垂れさがっている。何とも頭に血が上りそうな体勢である……。

そんな折、ベッドが再度カタカタと揺れると、トラバサミの様にベッドが半分に折り畳まれる。

少女はベッド中央で横向きに寝ていた為、無傷である。

無傷ではあるが、圧迫されている所為か少し息苦しそうに「ううう……」とうなされている。

ベッドが折り畳まれた時に少女の身体が更に動いてしまったのだろう。ベッドが元の平らな状態に戻る最中、ズルズルとベッドから落ち始めた。

床に頭が付き、首だけでは支えきる……事が出来るはずも無く、ベッドから全身が落ちる。

第三者視点では首の曲がり方に不安を感じるが、少女は気にする素振りも見せずにのそりと立ち上がり、頭をポリポリと掻いている。

立ち上がった少女はフラフラとした足取りで洗面所に立ち、顔を洗う。

この段階で漸く目が醒めた様子の少女。

その後はテキパキと朝の支度を済ませる。


8時────。

人の少ない時間帯、彼女は研究の為に出社。

倉庫などの24時間体制の部署と違い、研究室で働く者の出社時間は一定である。

そして、彼女の今の研究対象は寝床でぐっすりと寝ている。

研究対象を起こさぬよう物音を立てない様に細心の注意を払いつつ、横目でチラリと観察し、近くで朝食を摂る。

朝食はいつも会社の隣にある社員食堂で作ってもらったものを持参している。

毎日同じ物しか頼まないので、今では彼女が入店したのを確認した瞬間、食堂の店員が彼女の為にテイクアウト用の朝食を準備するまでになっている。

朝食を摂り始めて間もなく、観察対象がモゾモゾと動いたので声を掛けてみた。

「おはよう。エレノア」

『おはよう、ファーシャ。寝起きが悪いって言う割に今日も早いわね。それに毎日同じ物食べて飽きないの?』

エレノアと呼ばれた頭の花が特徴的な研究対象は植木鉢の上で伸びをしながら返事をしてきた。

エレノアは言語を話す事も出来るが、今の会話は念話である。

脳内に直接話しかけられる感じで、慣れるまで多少の違和感があるが、慣れてしまえば通常の会話と差異はない。

しかも便利な事に、エレノアの念話は自動翻訳機能付きで話しかけられた者の尤も馴染みのある言語として聞こえるのである。

更に、多言語翻訳、同時翻訳が可能で同時に複数の者に話し掛けた時にはそれぞれの言語で翻訳されると言う優れものだ。

コレが彼女ファーシャの現在の研究内容である。

「完全栄養食。問題ない。エレノアもいつも同じ水」

食にあまり興味を示さないファーシャ。

完全栄養食と言っているが、数種類のサンドイッチの詰め合わせである。

多様な食材を手軽に摂取出来る事から彼女が勝手に完全栄養食と言っているだけであり、真偽の程は不明である。

『私は光合成出来るから良いのよ』

「そう。昨日は息抜きできた?」

エレノアの主張には全く興味を示さず、昨日の出来事について話を変更するファーシャ。


エレノアはあれやこれやと昨日の事を話す。

ファーシャは食事を続けつつ、時折相槌を打ちながらエレノアの話に耳を傾けている。


ファーシャが食事を終える頃、ちらほらと他の研究員の姿が見受けられるようになってきた。


ファーシャは食事を終えるとエレノアの念話についての実験を開始。

エレノアの許可を得たうえで電極を繋げたり、脳波の測定を行ったり、時には実際に念話を使用した時の魔力の揺らぎや通常の会話との違いの確認etc...。 都度、結果や疑問点などメモを取りながら作業を進める。

『飽きもせず、毎回同じような事してるけど何か分かった?』

「分からない事が分かった」

『ダメじゃん』

「ダメじゃない。何が分からない事なのかは重要。分からない事も多いけど、少し分かった事もある」

『ふーん……。それより、例の薬の件は大丈夫なんでしょうね?』

「問題ない。少し問題があるとすれば入手困難な材料があること」

『揃わないの?』

「頑張れば何とかなる……かも」

『その材料って何よ?』

「マンドラゴラ」

『……!?まさか手伝いをさせておいて、報酬を払いたくないからって私を手にかけるつもり!?』

「違う。薬を造るのに必要なだけ。報酬を払いたくないなら薬を造る必要はない」

『それもそうね。……ハッ!!まさか私に同胞を売れ……と!?』

「薬いらない?」

『…………私の後輩を紹介するわ』

実験も一段落着き雑談を始めた2人。

何とも物騒な話をしている様に聞こえる。

「冗談。本当はエレノアの髪の毛でも爪でも良いから分けてもらえれば問題ない」

『……騙したわね。人でなし。薄情者』

「薄情なのはエレノア」

『ヴァン様への愛が深すぎるが故に仕方ない選択だったのよ』

「愛……?惚れ薬を使うくせに?」

「うっさいわね。既成事実さえ作ってしまえばこっちのもんなのよ」

先程物騒な話をしている様に聞こえると書いたが誤解があったようだ。

実際に物騒な話をしている……。


そんな物騒な話などの雑談を挟みつつ、2人の研究は続く……。


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