今日の反省をしつつ夕食が決定する第114話
町でも数少ない専門店ではない飲食店。
ミクの計らいでその中でも瑞希たちの宿舎に近い店を選択。
一行は店内に入り、店員に促されるがまま席へと移動。
エレノアも漸くミクの頭から降り、着席したのだが、サイズが合わずイスの上に立った状態になっている。
暫くすると店員がメニュー表を持ってきた。
その時、エレノアの状態を確認したその店員はミクと二言三言会話をするとエレノア用に足の高いイスを用意してくれた。
ミクの翻訳によると、本来なら席に案内した時に用意をするものなのだが、ミクの頭の上に居た為、対応に苦慮していたらしく、ミクとの会話内容は椅子の変更確認と対応が遅れたことに関する謝罪だったとの事。
エレノアもサイズの合ったイスに座り、皆が落ち着いた雰囲気になった所で大輔が徐に近くのメニュー表を手に取る。
メニュー表の中身を確認したものの、文字が読めず、一瞬だけ開いたが直ぐに閉じ、瑞希にメニュー表を渡す。
瑞希は中を確認するまでも無く、エレノアに渡そうとした時、ミクが口を開く。
「急な提案だったとは言え、色々と準備不足で退屈させる場面もあり、本当にすまなかった。餌やりなどの家畜とのふれあいについて心残りがあるなら後日機を見て調整しよう」
開口一番での謝罪。
瑞希は十分に満足していたし、大輔もワイバーンの件は後日でも良いと納得した事であり、ミクが謝罪をするほどの事でもないと考えている。
エレノアも暇にはしていたものの、ファーシャとの実験疲れと気分転換が目的であり、そもそもついてきた事自体が自由意志。初めから文句を言うつもりはない。……と言うか、ミクの話自体に興味が無いのか足をブラブラさせて話を聞いている素振りすら見せていない。
ミクとしても瑞希と大輔に向けたものと言う側面が大きく、視界にエレノアも入っていた為に謝罪をする範囲を限定しなかっただけである。
「謝るほどの事でもないだろ。ワイバーンは実際見れたし、総合的に考えれば十分満足出来たぞ」
「だね。ワイバーンは迫力あったし、畑の肉?も面白かったです。病院の場所も分かったし、大輔が我儘すぎるだけ」
瑞希と大輔はミクをフォローする。
「確かに、飛行中のワイバーンが見たいって言うのは俺も我儘すぎた。……と言うか大人気無かった面があると思う。でも、今では次の機会で良いって割り切ってるから謝る必要はないって事だ。寧ろ俺が謝罪すべき事だと思う。我儘言ってすまなかった」
『ねぇ、水まだ?』
そんな中、空気を読んでか読まずにかは不明だが、エレノアが口を開く。
「エレノアもこう言ってるし、お互いに謝罪をするのはやめにして食事にしましょう」
ミクも大輔も少しばつの悪そうな顔をしているものの納得いかないと言った表情はしていない。寧ろ、会話の畳み方に悩んでいた所に助け舟が来たと内心ホッとしている様子にも見える。
「水だな。注文するから少し待ってくれ」
瑞希はエレノアに渡す途中で止まっていたメニューをミクに渡す。
ミクは渡されたメニュー表をテーブルの中央に置く。
「お前たち、何にするかは決まっているか?無論、文字が読めない事は理解している」
「決まってない。ってか分かってるなら何で聞いた」
「念の為の確認だ。妾が1から説明しても良いのだが、この店のメニューについて簡単に説明しよう。1ページ目が主食だ。お前たちが食べられそうなものは米かパン、麺類だな。そして2ページ目は主菜。上の方が肉料理で下の方が魚料理だが境界は今の所教えないでおこう。3~4ページ目は副菜で、3ページがサラダなどの生野菜。4ページ目は炒めもの、5ページ目は汁物だ。で、6ページ目は果物とデザート、飲み物が書いてあるが、飲み物は果物を指定してジュースにして提供してもらえる物が主だから実質メニューには書いて無い様なものだ」
ミクがメニュー表に書いてあるものの説明を簡単にする。
「意外と豊富だな」
「宿舎から割と近い位置にあるからな。多様な種族に対応出来るようにしてある。……とは言え、地上に住む者が主で昆虫類は無いから安心するが良い」
大輔の感想を踏まえ、ミクが店の事情の説明を付け加える。
「それは重要な事ですね。安心、安心。メニューに生肉とかもありますか?」
「食べたいのか?言えば生でも提供してもらえるぞ。サラダも基本生だが、注文すれば温野菜に変更可能だ」
「いえ、逆です。寄生虫とかが居て危ないかもしれないので避けたいです」
「なるほど。それなら問題ない。この店の肉料理は全て火が通っている。魚料理も同様だ」
「それで?俺たちが文字を読めない事に変わりないが、どうしろと?」
「己の勘を信じて適当に選択するか、妾に任せるかだ。今後、お前たちだけで来る事があったとしても、メニュー表を指差すだけでも注文は可能だ。因みにエレノアは水以外も食すのか?」
『食べられない事も無いけど、必要はないわ』
「了解した。瑞希と大輔はどうする?」
「大輔どうする?」
「面白そうだし適当に選ぼうぜ。一品の量ってどれくらいだ?」
「普通の量だな。サラダは草食系の者が注文する事も多いから量もそれなりだが調整は可能だ。妾たちの場合は主菜なども注文するなら、3人なら大盛りで注文して共有するのが良い塩梅かもしれんな。足りないなら後から追加注文すれば良い」
「じゃあ、サラダはミクに任せるとして、肉とスープ選びだな」
「デザートは?」
「食ってみてからだな。量も分からんし、入るかも不明だからな」
「OK。と言っても、今は肉よりも魚な気分だから、一番下のヤツ」
「俺はどうすっかな……。俺も肉か魚かって聞かれれば魚な気分だな。じゃあ、俺は下から4番目ので」
大輔は料理を指定した後、ミクをチラリと確認。
特に何も言われなかったので恐らく魚料理なのだろう
「他に注文は無いか?主食はどうする?」
「米だな。他の注文はない。デザートは後で腹の具合と相談させてくれ」
「僕も同じでお願いします」
「了解した」
ミクは店員を呼び、注文をした。