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厩舎の見学も終わり帰路に就く第113話

ワイバーン厩舎────。

ミクは厩舎で働く亜人に一声かけ、見学の了承を得る。

遠目からも大きな建物とは分かっていたが、間近で見ると迫力が違う。

造りは瑞希と大輔がイメージするような馬房が連なっている一般的な厩舎を大きくしたような物だ。

1つの房の高さは10m弱。幅、奥行き共に15m近くある。

ミクの説明によると、多少はゆとりのある造りだが、翼を広げる時の事を考えるとこれでもギリギリだと言う。

ミクの説明を受けつつ、辺りを見渡してみる瑞希と大輔。

房の大半が空の状態であり、行商の足として使われているか放牧中で、房の中に居るのはワイバーンではなく房内の清掃を行う亜人であった……。

そして、房内にワイバーンが居たとしても休息中であり、丸まったままの状態で全くと言って良いほど動きがない……。

「餌やり体験とかふれあい広場みたいなものはないのかよ」

ミクの説明を聞くだけ暇を持て余した大輔が不満の声をあげる。

無論、寝ているワイバーンを起こしてまで触れ合うつもりは一切ない。

「餌か……。食事の時間ではないから無理だな。ふれあい広場……?ワイバーンと戯れる場所と言う認識で良いのか?死ぬ気か?」

ミクも大輔の言い分をストレートに受け取った訳ではない。

もう少し動きのある体験がしたい事は理解出来る。

だが、その手段も無ければ即興で思いつく案も無い。

故にミクは大輔の言い分を素直に返す他無かったのだ。

「……」

無茶を承知で口にしたものの、ミクの言い分が尤もすぎて黙る大輔。

自分が子供ように駄々を捏ねただけだと言う事も理解している。

この町で暮らしていればワイバーンを見る機会など幾らでもあるだろう。

それを承知の上で今の自分の欲望を満たす為だけの無茶振り。

大輔の沈黙は素直に謝れない後ろめたさと反省の現れなのかもしれない。

「そう言えば、ワイバーンの離着陸って何処で行うんですか?」

微妙な空気を一新する為、瑞希が話題を変更しようとする。

「少し離れた位置に離着陸場がある。見学するか?」

「はい。おねがいします」

ミクは瑞希の返事を聞くと短く返答をし、200m程離れた位置にある地着陸場へと移動した。


離着陸場────。

「ここが離着陸場だ。ワイバーン専用と言う訳ではないが、近くにある厩舎がワイバーン用の厩舎なので、使用するのは基本的にワイバーンが多い。他の騎乗用の動物の厩舎にも規模は違えど似たような物がある」

サッカーコート4つがすっぽりとはいりそうな200m四方程度の広さの空間で、物はほとんど置かれていない。

ミクは離着陸場の簡易的な説明に入った。

「アレは何ですか?」

瑞希が離着陸場の四方に置かれている階段のような物の1つを指差し質問をした。

「アレはワイバーンの乗降時に使用する物だな。慣れている者はワイバーン自体に屈んでもらったり、翼をスロープ替わりにさせてもらったりするのだが、不慣れな者はアレを使用する」

どうやら飛行機などに乗り込む時に使用するタラップの様な物のようだ。

「それにしても広いな。一斉に何匹も離着陸するのか?」

「そうではない。基本的には1体か2体だな。どうしても離着陸時の風圧が問題で広く取らざるを得ないだけだ」

「ヘリでダウンウォッシュがあるから当然と言えば当然か。まあ、厩舎のサイズから考えると、ヘリよりは一回り小さいにせよ翼を広げた状態で10m前後だろ。その巨体が浮く為に羽ばたいたら相当な風は起きそうだな」

「勝手なイメージだけど、ヘリコプターのローターは真下に風が発生するけど、ドラゴンの場合は斜めに風が発生しそうだから余計に広さが必要そうだよね」

大輔の機嫌も直ったようで、ワイバーンの離着陸時の想像だけで話が盛り上がる。

「でも、放牧地とか広い場所があるのに離着陸場って作る意味あるんですか?」

瑞希の素朴な疑問を口にする。

「安全が確保出来るなら好き勝手やってもらっても良いのだが、万が一もあるしな。事故の原因は事前に潰せるなら潰しておいた方が良い」

「当然っちゃ当然だな。ワイバーン以外の家畜もいるだろうし、それに倉庫以外は厩舎から遠い場所で離着陸する意味も無いだろうしな。作物が風で飛ばされない様にとか考えたら最終的には毎回同じような場所で離着陸する事になると思うし、場所を確定させて施設を造るのは妥当な判断だな」

大輔の補足で瑞希も納得。「確かに」と短く答える。


その後暫くワイバーンの離着陸場と厩舎やその周辺を観覧して回った。

「少し待てば早く帰って来る者も居るかと思ったが今日はタイミングが悪かったようだ。そろそろ戻るとしよう」

ミクは茜色に染まった空を見上げ、帰路に就く事を告げる。

瑞希と大輔もミクの意見に同意。

エレノアは途中で飽きていたらしく、随分前からミクの頭の上で蕩けたように脱力している。


「お前たち、お腹は空いていないか?夕食はどうするつもりだ?」

寄宿の途中、ミクに夕食について質問をされた。

ミクが用意してくれていた宿は既にチェックアウトしまっている。

その後は引っ越しやら瑞希のベッド改造やらダイズミート、ワイバーンの見学などで時間を潰していた為、夕食の事は頭からスッポリと抜け落ちていた瑞希と大輔。

「「あ……」」

意図せず、声が揃う2人。

「よし、何処かで食べていくか。何が食べたい?」

2人の反応で察したミクは夕食を済ませてから帰路に就く事を提案。

2人に夕食の希望を聞く。

『美味しい水』

「美味しい水か。了解した。お前たちも異論は無いな?」

「異論しかねーよ」

「無論冗談だ。妾も水だけでは物足りぬ」

冗談を交えながら夕食の話を続ける3人。

エレノアは自分の意見を言って満足したのか、発言の時に一瞬顔を上げ、再度蕩けたようにミクの頭の上で寛いでいる。


大輔は昼に肉を食べたから他の人の好きな物で良いと答え、ミクは瑞希と大輔が好きな物を言えと言う。

そして瑞希はそもそもで自分の意見が無く、強いて言うならあっさりしたものが良いが何でも良いと言う。

暫く話し合ったのだが結局、各々食べたいものが異なり、誰もが己の意見を主張せずに譲り合ってしまった事で収集もつかなそうだと言う結論に至る。

最終的にエレノアの『社員食堂でそれぞれ好きな物食べれば良いじゃん』の一言が決定打となり、社員食堂の様に多様な料理を提供してくれる食堂に行くことになった。


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