作物と家畜の見学先が決定した第109話
回復魔法についての軽い説明を受けた後、改めてペイオンから病院を出るように促される一行。
瑞希、大輔としても用事が済んだのにもかかわらず、帰らずに集会場代わりに使う老人のような真似はしたくはない。
病院に長居するつもりも迷惑をかけるつもりもなかったのでペイオンに礼を言い、素直に指示に従い病院を後にする。
ミクとしても病院の場所と病院内の凡そのフロアマップ、序でに医者の1人も紹介出来た。
正直これ以上、病院内を細かく案内する必要も無く、瑞希たちが満足しているならと納得をして瑞希たちの後に続き病院を後にする。
「さて、次は畑を見に行くか。町の外周をグルッと囲う様に畑は作られている。牧場は更にその外側だ。畑も牧場も多種多様な物を育てているが、植物にせよ生物にせよ何か見たい物はあるか?希望があればそこに案内しよう」
病院の出入り口の傍。通行の妨げにならない様に屯しながら行き先の選定をする為の話し合いを始める。
「……と言われても何を育てているのかが分かりません」
「食用の動物は情が湧きそうだから却下するとして、俺は騎乗用の動物が見たい。ドラゴンとか居るなら見たい。ベヒモスも触れるなら触りたい。前回撮影出来なかったから撮影もしたいな。ドラゴンとか居ないならカッコイイ生き物が良いな」
『ヴァン様から頂いた寝床の魔力量が減少してきてるから土壌の確認がしたいわね。私の肌に合ったものなら少し頂戴したいところね』
各々が好き勝手に自分の思いを吐露する。
大輔とエレノアは相変わらずと言った様子。瑞希は特に主張する意見が無いと言った様子だが、これも瑞希らしいと言えば瑞希らしい意見ではある。
「なるほど……。では、社員食堂で使用しているダイズミートの見学をしつつ土の状態を確認して、騎乗用ワイバーンの見学でどうだ?土については合わなければ坊やの所に送ったゴーレムの土をエレノアの寝床の土と入れ替える様に手配しよう」
「俺は異論ない」
「大豆ミート?」
「うむ。以前社員食堂で食した『ダイズミート』だ。社員食堂は色々な種族が出入りするから使用する肉は全てダイズミートだ。肉食でも菜食でも納得出来る折衷案として採用している。他の食材を希望する場合は他の食堂を利用すれば良いと言う話だ」
「そう言えば、ハンバーガー食べた時にそんな話が有ったような無かったような……」
当時の記憶を思い起こそうとした瑞希だったが、ダイズミートの話をしていた後、大輔がバハムートの話を熱弁しようとしたのを必死に拒否した記憶を思い出すだけで、肝心のダイズミートの話はほぼ覚えていないに等しかった。
「ここからワイバーンの厩舎までの道の途中に有るからな。他の物が良いなら遠回りしても良いぞ」
「野菜見ても分からないので大豆畑で大丈夫です」
「そうか。では行くとしよう」
こうして一行は病院前から畑へと移動する事となった。
畑までの道すがら、公園や託児所の近くを通った序でに少し見学。
この周辺は瑞希と大輔には今の所、縁遠そうな子育ての為の施設の集まった地区。
瑞希と大輔には見慣れつつある光景ではあるものの、大人も子供も亜人や獣人と呼ばれる物たちである。
ファーシャ、ドワーフの様にぱっと見は人間に見えなくも無い種族も間々見かけるものの、多くの者は全身が毛や鱗で覆われていたり、尻尾や羽など人間には存在しない器官を擁していたりとファンタジー色強めの光景が散見されている。
そんな子供たちの喧騒に包まれていた地区を抜けると建造物も徐々に減り、閑散とした景色へと移り変わっていく。
瑞希と大輔の視界には一面に広がる膨大な畑が飛び込んできた。
畑に近づくにつれ、瑞希と大輔は違和感に気が付いた。
違和感の正体。
それは……。
117話まで1日1話連日投稿予定(更新は20時設定済)