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危うくトラウマになりかねない専門店もある第102話

2人が店内に入り、数秒後────。

瑞希が脱兎の如く勢いでミクの下に戻って来た。

「無理無理無理無理無理無理……」

ブンブンと首を横に振りながら壊れたラジオの様に『無理』と繰り返す瑞希。

少し遅れて大輔も瑞希の後を追って戻って来た。

大輔は瑞希と違い戻る時も歩きだったし、瑞希と違い落ち着いている。

「だろうな。だから案内しなかったし止めたのだが……」

ミクは瑞希の反応を見ても驚いた様子を見せない。

それどころか、当然だと言わんばかりの表情である。

「まあ、あれは瑞希にはキツイな。日本にもイナゴとか蜂の子を食べる人はいるけど、まさか昆虫食専門とは……。流石の俺もミミズみたいな生き物を生で啜るように食べてる光景には少し引いたな」

どうやら瑞希たちが興味本位で入った店は昆虫食の専門店だったらしい。

以前、社員食堂で瑞希が「虫が苦手」と言っていた事を覚えていたミクは店の紹介を避けた。

ミク自身、昆虫食が得意ではないので事前に瑞希が虫嫌いだと言う情報を得ていなかったとしても紹介しなかった可能性は高い。

しかし、説明の途中で2人が勝手に入店してしまったのだ。

最後まで話を聞かなかった大輔が元凶であり、大人しく連れていかれた瑞希にも責任の一端はあるように思える。

ミクが制止する前に走り出した2人に同情の余地はない。

「瑞希は無理そうだから大輔1人で来ることになるな」

「来ねーよ!俺も虫は食わねーよ」

ミクの発言に対し即座にツッコミを入れる大輔。

何も言わなければミクに勘違いされたままだった可能性が大いにあったが故の反射的なツッコミ。いつもより段違いに早い反応速度だった。

大輔としても昆虫食を好む言う不名誉な誤解を避けたかったのだろう。

「そ、そうか」

冗談半分だったつもりだが、大輔の必死さにミクも少し引き気味である。


昆虫専門の食堂を見る前までは昼食を何処で摂ろうかと言う議論だったが、瑞希の食欲が一気に失せてしまった為、今日は大輔の主張が通り、肉専門の食堂で昼食を摂る事になった。

意気揚々と肉専門の食堂へと移動を開始する大輔。

それとは対照的に先程の光景がなかなか脳裏から離れず、げんなりとした様子で大輔とミクの後に続く瑞希。


一行は目的地に到着。

先程、ミクが案内した時に支払方法も教わっている。

この店は券売機を導入している。

縦列が肉の種類、横列が焼き加減の選択になっている。

部位については内臓を提供されることはなく、カルビ、ロースなどの部位指定もなく適当な可食部が提供され、量は200g固定らしいが正確に量を図っている訳ではなく適当だと言う。

とは言え200gより少ない事は無く、200g~300g程度の量が提供されるらしい。量については店都合なので値段が変化する事も無いし、頼めば多少だが量の調整はしてくれるとミクは言うが、現段階では言語理解の乏しい瑞希たちには無縁の話だった。

そして、焼き加減については券売機のボタンの色が凡その焼き色になっていて、左に行くにつれ生で一番左に至っては一切火を通さないとの事。

勿論、瑞希と大輔の2人には書いてある文字が読めないので肉の種類は分からない。

ミクが上から順に説明を買って出たのだが、マンモス、バロメッツ、金翅鳥こんじちょう、ワイバーン、グリフォンと聞いたところで味の想像がつかず、何の参考にもならなかったので説明の途中で中断してもらった経緯があった。

大輔は聞いているだけで「毛は服になるし、肉は食べられるしバロメッツは有能だな」とか「金翅鳥……?ガルーダか……」など聞いているだけで楽しそうだったが、一方の瑞希は聞き覚えの無い又はゲームや漫画などで多少は聞いた事はある程度の生物が多く、知らない単語ばかり飛び交っていて2人の会話について行けなかった。


そんな訳で1度目に来店した時とは違い、今回は店の案内ではなく食事目的。

券売機の前で少し悩む大輔。

券売機に表示されている価格を考慮した上で一番上と6番目、7番目。焼き加減は全てミディアムっぽい色合いの食券を購入。

「3つも食べるの?600~900gだよ?」

大輔が3つ購入した事に驚き、完食出来るか心配する瑞希。

「肉だけで米とかスープは無いんだろ?イケるイケる。どうせだから食べ比べしようぜ。瑞希は俺が選んだやつ以外で頼むわ」

「顎疲れそうだけど、まあ、大輔が食べきれるって言うなら……。じゃあ、僕はバロメッツ。確か羊だよね?これならハズレはなさそう」

そう言うと瑞希は説明してもらった範囲で覚えていたバロメッツの肉を選択。焼き加減はウェルダンっぽい色合いの物を選んだ。

「瑞希ちゃんは冒険心ってものが無いね。安定志向じゃ世の中つまらんよ」

少し瑞希をおちょくるような発言をする大輔。

瑞希は「いいの。貴重な一食に冒険心はいらないの」と大輔のイジリをあしらう。

「瑞希は1つで良いのか?」

ミクが自分用の食券を購入し終わり、瑞希に質問をする。

「はい。ちょっと今、食欲が無い物で……」

「体調不良か?体が資本だからな体調管理は怠らない方が良いぞ」

「いえ、先程の食堂での光景が……」

「皆まで言うな。正直、妾も得意ではない。妾の食欲まで失せてしまうではないか」

先程の光景がいまだに忘れられず、食欲のわかない瑞希は正直に返答する。

ミクはすべてを理解し、瑞希の返答を途中で遮る。

詳細を離されるとミク自身の食欲まで失せそうだったのだろう。

大輔も横で「あー……あれはキツイよな……」と言いながらウンウンと首を縦に振りながら瑞希に同情をするのであった。


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