私のバイト先に和も来た(いづみside)
「あれ? 何でオマエがいるんだよ……和!」
私がバイトしているフィットネスジム内のカフェに、妹の貴音ちゃんが訪ねてきた。十八歳未満は会員として入ることができないので困っていたところ、オーナーの娘さんの上条 志麻ちゃんが私のバイト中預かってくれることに。
ところが志麻ちゃんの部屋に二人が向かおうとしたところ、志麻ちゃんの頭を叩く者がいた。それは志麻ちゃんの従姉で私の友人(元カノ)、平井 和だった。
「志麻ちゃ~ん、今日から家庭教師やるって言ってたよね~!? いきなり初日から忘れてるの~?」
「あ゛っ……」
「えっ、家庭教師? オマエが?」
エロ知識しかなさそうな性欲モンスターから意外過ぎる言葉が出てきた。
「あら~いっちゃんいたの~?」
「わざとらしいわ、気がついてただろ!?」
普段は露出度の高いエロエロな格好をしている和だが、この日は一般人に近いまともな服装だ。しかも手には「数学Ⅰ」の参考書を持っている。
「今週からこの子の家庭教師を頼まれているのよ~! ほら~もうすぐ期末テストでしょ~!?」
「えっ、おまっ家庭教師なんてできんの!?」
和はこう見えて頭がいい。私と同じ大学だが、コイツは私のいる「栄養学科」よりも偏差値の高い「経営学科」に在籍している。父親は会社の社長……本人もできるだけ早く起業したいという考えで短大を志望したそうだ。
「失礼ね~、てゆ~か貴音ちゃんがいてビックリしたわよ~! 何でいるの~?」
「それな、私も知りたいわ」
ここは和の親戚の家、そして私をここへ紹介したのも和だ。だがまさか妹がここにいるのは想定外だろう。すると妹が
「和おねえちゃん、実はかくかくしかじかなのです」
「おい、かくかくしかじかで通じるワケないだろ」
「そっかぁ~、大変だったね~」
「通じるのかよ!?」
「冗談よ~さっき叔母さまから聞いたわ~! もぉ~何てお姉ちゃん思いの妹さんなの~かわいい~っ♥ てゆ~かさ、これってもぉいっちゃんとただならぬ関係にでもなってんじゃないの~?」
――ギクゥ!!
和にバレたらヤバい! 最近、妹と「おやすみのキス」しているが……あれはあくまで挨拶だ! 欧米スタイルのコミュニケーションだぞ!
「それじゃあ志麻ちゃ~ん、お部屋に行くわよ~! それと貴音ちゃんも~!」
「えっ、貴音も……なのですか?」
「ここにいても~お姉ちゃんのお仕事の邪魔でしょ~?」
和は妹も一緒に連れていこうとした……だがそれはマズい! コイツはかつて妹を見て「セックスしたい」などとぬかしやがった性欲モンスターだ!
「おっおい和! 妹も連れていくのか?」
「何で~、別に何もしないわよ~」
――だったらその何かを揉むような手つきを止めろ!
「貴音ちゃ~ん、教科書持ってきたよね~?」
「は……はい、持ってきたのです」
――!?
「えっ、何で教科書持ってきてんの?」
よく見ると妹はバッグを抱えているが……なぜ?
「たっ、貴音も理由はわからないのですが……出かけるときにママさんから数学の教科書と筆記用具を一緒に持っていきなさいって言われたのです」
嫌な予感がしたが……やっぱり茅乃が一枚噛んでいやがったのかぁ!!
「なるほど、茅乃からここの場所聞いたってワケだね……で?」
私が和を睨みつけると、
「私はぁ~、茅乃ちゃんからお願いされて貴音ちゃんの勉強も見てあげる約束をしたの~! まぁ茅乃ちゃんには色々お世話になってるから~貴音ちゃんの家庭教師代はサービスするわよ~」
しかもコイツら結託していやがったぁ! つーか和は妹がここに来ること知ってたんじゃねーか!
「じゃ、時間もないから行きましょ~」
和が妹と志麻ちゃんを連れて二階へ上ろうとしたので、私は和の耳元へ小声で、
「おい、妹にヘンなこと教えんなよ」
そうクギを刺すと、和はニヤッとしながら横目で私を見て、
「あら、ヘンなことってな~に? 性知識? いっちゃんとの関係~?」
「おいっ! テメェ……」
「大丈夫よ~! 茅乃ちゃんの頼みだし~それに志麻ちゃんだっているし……先生を信用しなさ~い!」
――信用できねぇからこういう事を言わせているんだよオメーは!
※※※※※※※
それから一時間半後……
「で……何でオマエもここにいるんだよ!?」
「え~、私だってスタッフじゃ~ん」
私はスタッフの勤務終了に合わせ、いつものように「まかない」を作ったのだが、今日はいつもより「二人分」余計に作ることになってしまった。
「おねえちゃん! サバのチャーハン、とってもおいしいのです!」
「本当~、久しぶりにいっちゃんの手料理食べたわ~」
妹と和の分まで作らされたのだ。まぁ和は仕方ないとして、勝手に押しかけた妹の分まで……オーナーに申し訳ない。
「あっ、そうだ! そういや和に相談があるんだけどさ……」
「な~に? あらたまって……」
経営学科の和は先日の学園祭で、私と妹を上手く利用してメイド喫茶を大繁盛させた実績がある。その腕を見込んで聞いてみた。
「いや……このカフェなんだけど、全然売れなくてさぁ~何かいい方法ないか?」
「え~どれどれ、ちょっとメニュー見せて~」
和はメニュー表を見ると、
「値段設定が高いわね~! この辺りは飲食店多いし~ジムの会員さんは食べるのが目的じゃないから~このメニューと値段では寄り付かないわよ~。それに~この時間って主婦は夕食作って食べてきてるだろうから~ターゲットをひとり暮らしのOL層に絞った方がいいわよ~」
なるほど、と納得せざるを得ないような回答を次々と繰り出してきた。
「それといっちゃ~ん! 貴音ちゃん、明日からどうするの~?」
「そっ! そんなもん、もう二度と来ないように……」
「ダメよぉ~」
「えっ?」
「貴音ちゃんは~、明日からココで『バイト』させるのよ~」
「おいおい、何てこと言い出すんだよ! 妹は中学生だからバイトできねーよ!」
子役などの例外はあるが、中学生以下は労働基準法で労働してはいけないと定められている。そんなの経営学勉強している和なら知っているだろ!?
「大丈夫よぉ~、ちょっと体を売ってもらうだけの仕事よ~♥」
「一番やっちゃいけないヤツだよぉおおおおっ!」
ダメだ! コイツは経営学うんぬん言う前に倫理観が著しく欠如している。
「その代わり~私は週二回ココへ家庭教師に来るけど~そのときはちゃんと教科書とノート持って来てね~」
「はいなのです!」
おいおい、何で妹も納得してんだよ!?
「私がいないときは~志麻お姉さんから勉強教えてもらいなさ~い! 志麻ちゃんも……いいよね~?」
「うん、貴音ちゃんと一緒にいると楽しい! ゲームの趣味も合いそうだし……」
「こ~ら! ちゃんと勉強も教えてやるのよ~」
「あははは!」
おいおい! 何を三人で盛り上がってるんだよ……私は蚊帳の外か!? てゆーか中学生に、しかも夜間のバイトなんてさせたらマズいだろ?
ところが和は、妹に労働をさせない……だけど私の目の届く範囲に置き、さらにカフェの売り上げを増やす方法を考えていたのだ。
貴音なのです。次回は貴音の体でお金を稼ぐのです!




