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貴音はおねえちゃんとキスするのです(貴音side)前編

 



 おねえちゃんは……おバカさんなのです。




 ※※※※※※※



「貴音ちゃ~ん、今から一緒にドラマ見ない? これ面白いよー」


 貴音がお風呂から出て二階に上ろうとしていたら、リビングにいたおねえちゃんに呼び止められたのです。


「もう夜遅いのです。貴音は寝るのです」

「大丈夫だよ! 明日は日曜だし朝もゆっくり寝ていればいいじゃん」


 おねえちゃんはなぜかしつこくて必死なのです。普段はこんな時間にドラマを見ようなどと言ってこないのです。


「貴音は眠いのです。見ている途中で寝てしまうかもしれないのです」

「そのときはお姉ちゃんが『お姫さま抱っこ』して部屋まで連れて行くよ♥」

「見るのです♥」


 交渉成立なのです……でも今日のおねえちゃん、様子がヘンなのです。



 ……多分キッカケは「あの写真」なのです!



 今日は土曜日、久しぶりに家族全員で夕ご飯を食べたのです。ここ最近、おねえちゃんが夜のバイトを初めたので平日は夕ご飯を一緒に食べていないのです。

 夕ご飯を食べ終わり、全員がくつろいでいると突然ママさんが「アルバムを見たい」と言い出したのです。


 それは貴音が生まれる前から三歳になるまでのアルバム……そうなのです! お星さまになった貴音のママが写っているアルバムなのです。


「貴音も見たいのです! 貴音も久しぶりにママを見たいのです」


 パパはなぜかそのアルバムだけはママさんたちに見せたがらないのです……が、貴音も見たいと言ったのでパパは渋々アルバムを仕事場から持ってきたのです。


「あら~、素敵なママじゃない! 貴音ちゃんにそっくりね!」


 貴音はママさんと一緒にアルバムを見たのです。ママさんは貴音のママのことをとってもほめてくれたのです! 貴音は自分がほめられたみたいでとってもうれしかったのです!


 でも、隣で別のアルバムを見ているおねえちゃんは反応が違っていたのです。


「おねえちゃん、ママを見た感想はどうなのです?」

「えっ、あぁ……とっ、とっても美人だね」


 おねえちゃんは何か言いたそうだったのです。このときはわからなかったのですが、今になっておねえちゃんが気になっていたことがわかったのです。



 ――それは……ママの「キス」なのです!



 写真のママは、パパや赤ちゃんの貴音とキスばかりしているのです。前に友だちの天ちゃん空ちゃんから昔のアルバムを見せてもらったことがあるのです。でも二人のパパやママがキスしている写真など一枚もなかったのです!


 たぶんおねえちゃんはそれが気になったのです。そして……



 ――おねえちゃんは、貴音とキスしようとたくらんでいるのです!



 おねえちゃんは単純おバカなヘンタイさんなのです! きっと「家族だからあいさつでキスできるんじゃね」なんてことを考えているのです!

 写真を見たママさんからキスしてほしいと言われたのです。そこで貴音はパパやママさん、そしておねえちゃんの()()()にキスしたのです。


 ――おねえちゃん! それでガマンするのです!


「おねえちゃん」

「ん? なーに?」


 貴音はおねえちゃんにカマをかけてみたのです。


「こんな時間にやってるドラマ……きっと()()()なのです」

「えっ!? そそそっそんなことないよー」


 ほーら! やっぱり動揺したのです。確かこのドラマ、メッチャ大人のお話でキスシーンが多いとかSNSで話題なのです。

 きっとおねえちゃんは貴音にキスシーンを見せて「おねえちゃん、貴音もキスしたいのです」とでも言わせるつもりなのです!


 ――そうは問屋が販売中止なのです!


 お話が難しくてよくわからなかったのですが、貴音はおねえちゃんの隣でしばらくドラマを見ていたのです。

 するとやっぱり……男の人と女の人がキスを始めたのです。おねえちゃんは男の人に興味がないハズなのにテレビ画面にくぎ付けなのです。今のうちに貴音は「ある作戦」を実行するのです。


「ぐー、すぴー」


 寝たふりをしたのです。おねえちゃんはドラマが途中なのにテレビのスイッチを切ると、貴音をお姫さま抱っこして部屋まで運んだのです。やっぱりドラマに興味はなかったのです。


 でもおねえちゃんは、寝ている……じゃなかった寝たふりをしている貴音に対して、強引にキスしようとはしないのです! キスしようと思えばできるのですが、おねえちゃんは「王子様」なのでそういう卑怯なマネはしないのです!


 ……でもやり方はせこいのです。



 ※※※※※※※



「貴音ちゃ~ん、一緒にゲームしない!?」


 次の日、夕ご飯を食べ終わった貴音は部屋でゲームをしていたのです。そこへおねえちゃんが「ポッチー」を持ってやって来たのです。

 いつもは夜に甘い物を食べようとすると「太るよ」と注意するおねえちゃんが自ら甘い物(ポッチー)を持ってきたのです……この時点で怪しいのです。


「何のゲームなのです?」

「あっあのさぁ……ポッチーゲームって知ってる?」

「……知らないのです。何なのです?」


 知らないけど……イヤな予感しかしないのです!


「あのね……こうやってポッチーの両側を二人で咥えてね、お互い食べ進めていくんだよ! でね、たくさん食べたほうが勝ちっていうゲームなんだけど……」


 おねえちゃん……目的がバレバレなのです!


 そんな食べ方をしたらお互いの口がぶつかって「ちゅっ♥」となることくらい幼稚園児でも想像できるのです! こんなことで貴音はだまされないのです! おねえちゃん……さすがにそれは貴音をバカにしすぎなのです!


 でも……貴音はポッチーが大好物なのです♥


「……やるのです!」


 貴音はおねえちゃんの見え見えな作戦に乗ったのです。


「じゃあさっそく……」


 おねえちゃんはポッチーを手で持つと、チョコレートの方をくわえようとしたのです。貴音にプレッツェルの方を食べさせようとしているのです。


「ちょっと待つのです」


 貴音はおねえちゃんを止めたのです。


「貴音はチョコレートの方がいいのです」

「えっ、あぁ……いいけど」


 貴音の目的はおねえちゃんとキスすることではなく、チョコのかかったポッチーをできるだけたくさん食べることなのです!


「よーい、()タート」


 おねえちゃんがポッチーをくわえたままスタートの合図をしたのです。今なのです! 貴音はポッチーをくわえたまま、頭を下げたのです。


 〝ポキッ〟


 ポッチーはお姉ちゃんの唇あたりで折れたのです。おねえちゃんはプレッツェルの部分をくわえていたので、チョコの部分はすべて貴音のモノになったのです♥


「貴音の勝ちなにょでふ(なのです)

「いっ、いやそういうゲームじゃねえから! 折っちゃダメ」


 〝ポキッ〟〝ポキッ〟〝ポキッ〟


 おねえちゃんから何度注意されても貴音はポッチーをワザと折ったのです。


「おいしかったのです♥」


 そして、貴音はチョコレート部分を食べ尽してやったのです。


 おねえちゃんはポッチーの空箱を持ったまま凹んでいたのです。そこで貴音は、回りくどいやり方ばかりするおねえちゃんにハッキリ言ってやったのです!



「もう、おねえちゃんはそんなに貴音とキスしたいのですか!?」



貴音なのです。次回はおねえちゃんと……きゃっ♥ なのです!

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