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私は妹と学園祭に行く約束をした(いづみside)

 



 六月になって一週間が経ち……テレビで「梅雨入り」のニュースが流れた。




 昼間でも空が暗くジメジメしてくるこの季節、普通なら憂鬱(ゆううつ)な気分になってしまうところだが……


 私にとって……最高の季節になってきた!


「ただいまなのです」


 妹の貴音(たかね)ちゃんが学校から帰ってきた。私は一足先に学校から帰っていて、最近始めた新しいバイトへ行くために玄関へ向かうところだった。


「お帰り貴音ちゃん……うわっ、びしょ濡れじゃん!」

「にわか雨なのですぅ! 学校を出るときは降っていなかったのです」

「そりゃ災難だったねー、早く着替えて制服乾かさないと……」


 と言いつつ私は、妹の上半身をしっかり目に焼き付けていた。



 ――梅雨前線、あざーっす♥



 そう! 今月から「衣替え」……妹の制服は涼しげな白のセーラー服に変わっていた。しかもこの雨……妹の制服は雨に濡れて肌にピタッとまとわりつき、下着が丸見えだったのだ!



 ――エロい♥



 妹はブラを着け始めた。だがブラが透けている姿を公衆の面前、特に妹の同級生男子には見せたくない。なので私は妹に、夏服の間はできるだけブラ付きのキャミソールを着るようにとアドバイスした。

 透けブラには興奮するけどキャミ着てたらガッカリするなんて男子中学生(オスガキ)の考え方だ。キャミでも全然イケる……これが大人の百合お姉さんなんだぞ(注※個人の見解です)!


 私は時々、妹とお風呂に入っている。妹のハダカは何度も見ているが、これはこれで刺激的! 新鮮な気分になって幸せを感じてしまう……むふふ~♥


「おねえちゃん!」

「ひょわっ!」


 妹を「おかず」にしている最中、後ろから声をかけられたのでメチャクチャ驚いてしまった。振り向くと妹はスウェット生地のトレーナーに着替えていた。

 最初に出会った頃、妹の部屋着はオシャレなワンピースが多かったが……私の影響だろうか? 最近はスポーツカジュアル的な格好が目立つようになってきた。でも、こういう格好でも可愛く見えてしまうのが妹のすごいところだ♥


「なななっ、何? 貴音ちゃん」

「おねえちゃん、今日も夕ご飯は家で食べないのですか?」

「あぁ、ごめんね! 今度のバイトは夜の仕事だから……」

「水商売なのです」

「カフェだよ! 確かに飲み物扱うけど……どこで覚えたそういう言葉」


 以前はファミレスの厨房のバイトだった。好きな時間にシフト入れられるのはよかったのだが、厨房には男もいたので正直それが嫌だった。

 そんなとき、私の元カノ「平井 (なごみ)」が新しいバイト先を紹介してくれた……これがまた、私にとって都合がよすぎるくらいの好条件! なので少し遠いが、今月から新しいバイトを始めたのだが……。

 平日は毎日、夜の間だけ出勤しなければならない……休みは取れるがシフトはない。しかもカフェの厨房なので夕食は「まかない」だ。なので家族そろった夕食が取れなくなってしまい、それで妹は寂しがっているのだ。許せ、妹よ!


「あぁ、それより……オムライス作ったから食べていいよ!」

「えっ、本当なのですか!?」


 妹の目が輝きだした……何だよ、私より食べ物かぃ!?


「うん、でも夕食のおかずが別にあるから小さめに作ってあるよ」

「食べるのです♥ でも、お姉ちゃんが夕ご飯作るのは珍しいのです」

「あぁ、実は茅乃がな……」


 私は料理が得意だが、家での食事は基本的に母の茅乃(かやの)が作っている。しかし、なぜか今日は茅乃に「バイト行く前にオムライスを三つ作ってくれ」という、おかしな要求をされたのだ。理由はわからなかったが、私にとってオムライスくらいは朝飯前なので夕飯前に作ってやった。


「ママさんのリクエストなのですか? ママさんもオムライス得意なのです……何かヘンなのです」

「だよな!? 実はもうひとつ変なことがあってな……私がケチャップかけようとしたら『それは貴音ちゃんに手伝わせるからいい』って言われたんだよ」

「? よくわからないのです……でもケチャップお絵描きは好きなのです」


 茅乃がなぜ突然そんなことを言ってきたのか謎だが、考えてるヒマはない。もうそろそろ時間なので私はバイトに出かけることにした。


「じゃあ貴音ちゃん、行ってくるからパパやママと仲良くしてるんだぞ」

「ふぇ~ん、さびしいのですぅ~! でも、おねえちゃん! 日曜は貴音と一緒に遊びに行くのです」

「えっ、あぁいいけど……どこへ?」


 すると妹は「プク顔」になって憤慨した。


「ぷくぅ! おねえちゃんはもうお忘れなのです! 日曜はおねえちゃんの大学へ学園祭を見に行くのです」

「あ、あぁ……そうだったね」

「貴音は楽しみにしているのです」

「そ……そっかぁ、お姉ちゃんも楽しみにしてるよ! じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃいなのです!」


 ――そっかぁ、忘れてた! つーか思い出したくなかった!


 週末は私の通う短大で学園祭がある。私は実行委員には入っていないしサークルや部活動もしていない。でも普通に客として参加は可能だが……


 ――正直、行きたくない!


 女子大とは(うた)っていないが、今のところこの学校……学生は百パーセント女子だけだ。教授や職員に男性はいるが基本的に「女の園」、なので男性恐怖症の私でも気軽に通うことができる。

 だが、学園祭となると必然的に学生以外の来客が多くなってしまう。特に学生たちの「彼氏」や、女子大生と仲良くなりたい! などという(よこしま)な考えを持った連中がわんさかと押し寄せてくるに違いない!


 だから私は行きたくない! 考えただけで具合が悪くなってしまう。


 だが先日……クララ(犬)という防衛網(ニガテ)を突破した平井 和によって、妹が学園祭に「行きたいのです」と言い出してしまった!

 私は絶対行きたくないが、せっかく妹が乗り気になっている……姉として「行かない」とは言えない状況になってしまった! くそぉ~、和のヤツめ~!


 今は雨……ようやく梅雨入り宣言も出された。私はバイト先に向かう車(茅乃から借りた)の中で心の底から念じていた……。



「日曜日……雨天中止になれー!」

貴音なのです。おねえちゃんのバイト先の話は後日出てくるのです。

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