私は妹が犯人だと決めつけた(いづみside)後編
「貴音ちゃん、もしかしてオシッコした後……紙で拭いていないの?」
私がトイレに入ったとき、便器の中に「黄色い液体」が残されていた。私は消去法で「犯人」は妹の貴音と断定した。
だが、流していないことよりもっと大きな「問題」があった。それは残されていた液体の中にトイレットペーパーが捨てられていなかった……つまり、
妹はオシッコした後、アソコを拭いていない……ということになる。
もしかして……この子は男親に育てられたせいで、拭くという習慣を知らないのだろうか? いやいや、だとしたらそれはマズいだろ!
衛生的に問題だ! しかもこの子は以前聞いた話じゃおそらくまだ初潮を迎えていない……今からこのような衛生観念では今後が心配だ。ところが……
「えぇっ!? たっ貴音はちゃんと拭いているのです!」
顔を真っ赤にして答えた。あれ? おかしいなぁ……じゃあ何だよアレは?
はは~ん……もしかして妹は、知識として理解しているが面倒くさがって拭かないのかも? そういえばこの子、ちょっとズル賢いところがあるからなぁ~!
「貴音ちゃん、ウソはダメだよ」
「ウ……ウソじゃないのです! ちゃんと拭いているのです! おねえちゃんが見たのは貴音のじゃないのです!」
――コイツ、まだシラを切るか……あっ!
妹が一向に非を認めなかったことでちょっとキレかかった私に、ある邪な考えが浮かんだ。
「ホントにぃ~?」
「ホッ……ホントなのです!」
「だったらさぁ~今、貴音ちゃんが穿いているパンツ……汚れてないよね? シミとか付いていないよね?」
「……へっ?」
「じゃあ……お姉ちゃんが確認するよ♥」
確認する……という「口実」のもと、私は妹のパンツを脱がそうと考えたのだ♥
何の理由もなく脱がしたらアウトだろう。だが、「パンツを汚したことを注意する」という大義名分があればギリセーフに違いない(※たぶんアウトだよ)。
「さぁ、パンツが汚れてるかどうかお姉ちゃんに見せなさい!」
「ヘッ……ヘンタイ! ヘンタイおっぱいさんなのです!」
――おっぱい関係ねーだろ!
〝ガシャン!〟
妹は私のベッドの上に逃げた! だがベッドの上なんてなおさら好都合、飛んで火にいる……じゃねーか!
てかその前に……今コイツ、逃げる際にゲーム盤をひっくり返して石がバラバラになったけど……あれどう見てもわざとやってんじゃん! 自分が不利だったからどさくさに紛れてゲームを無効にしやがったな!?
私もベッドに飛び乗った。そして抵抗する妹を四つん這いになって押さえつけると、パジャマのズボンに手をかけた。そのとき……
――!?
予想外のことが起こった! 何と妹が私のパジャマのズボンに手をかけ脱がそうとしてきたのだ!! 私は慌てて妹から離れると、ベッドの上で膝立ちになって妹と対峙した。
「お、おいっ! 何すんだよ!?」
「おねえちゃんが貴音のパンツを脱がすというのなら……貴音はおねえちゃんのパンツを脱がすのです」
「何でだよ! 関係ないだろ!?」
「貴音は前から気になっていたのです! 一緒にお風呂に入ったとき、おねえちゃんのお股に毛が生えているのを……」
「ひぃっ!」
私は思わず引いてしまった。まさか妹がそんな目で見ていたとは……。
「いつかじっくり見てみたかったのです♥ おねえちゃんがそうやって貴音をイジメるのなら、貴音も負けていられないのです!」
――くそぉ! 予想外の展開だ!
「おねえちゃん、覚悟なのです!」
妹は私に飛びかかってきた。私はマウントを取られまいと妹の両手を掴んで防御した……プロレスで試合開始直後によくやる「手四つ」というポジションだ。
力比べになった。しかし私は元々体育会系……見た目が華奢な妹とは雲泥の差、あっという間に勝負が見えた。
だがここで苦しそうな顔を見せている妹が、
「おねえちゃん! 貴音のパジャマは高級ブランド品で二万円もしたのです! もし無理に引張って破れたりゴムが伸びたりしたら弁償してもらうのです」
――こっ、この卑怯者ぉおおおおっ! ここでお金の話をするな!
「そうかぃ、だったら丁寧に脱がしてやるよ」
「……えっ?」
そう言うと私は妹の手を離した。すると妹はそのまま前傾姿勢で向かってきたので私は妹の肩を手前に引いて倒した。相撲で言う「引き落とし」の状態だ。
「ふぎゅっ!」
妹はベッドの上にうつ伏せの状態で倒れた。私はすかさず妹の上に馬乗りになると体重をかけて起き上がれないようにした。パジャマで包まれた妹のカワイイお尻が目の前に♥
「ふぬぬぅ~っ!」
妹は足をバタバタさせて抵抗するがそれは無駄なあがき……私は妹のズボンを掴むとじっくり脱がしにかかった。そのとき、
「いやぁああああああああっ!!」
妹が突然叫び声を上げた! すると足音が近づき
「オマエら何やってんだ!? こんな夜中に近所迷惑だよ!!」
妹の叫び声よりもさらに近所迷惑な大声で、先ほどトイレで不快な音を放出した茅乃が入ってきた。入って来るなり茅乃は
〝ペシッ!〟
いきなり私の頭だけ叩いた。
「痛てっ!」
「何を夜中にケンカしてんだよ!?」
「だって貴音が……」
「おねえちゃんが悪いのです!」
「はぁ? 何言ってんだよ! ちゃんと説明しろ」
ケンカ? そういや妹のズボンを脱がす前でよかった……ここで脱がしていたら家族会議だ。
「私がトイレ入ったらさぁ……貴音ちゃんが流してなかったんだよ」
「ちゃんと流したのです!」
「えっ? 何で貴音ちゃんだってわかったの?」
「いやだって……母さんは私の後に入ったじゃん! それに便座が下りていたからお継父さんじゃないじゃん! だから消去法で……」
「あ゛……」
私の言葉を聞いた茅乃の眉がピクッとなった。えっ、何か思い当たることでもあるのか? と、そのとき……
「あーごめん、それ……ボクだよ」
騒ぎを聞きつけて継父の延明さんがやって来た。
「えっ、どういうこと? だって、便座が下がって……」
すると延明さんは照れながら、
「あぁ……最近座ってするようになったんだよねぇ」
「えっ、何でですか?」
私には継父の行動が理解できず思わず聞いてしまった。妹も実父の意外過ぎる告白に唖然としていた。
「ママに怒られちゃったんだよねぇ~、立ってすると飛び跳ねちゃって掃除が大変だって……」
私は茅乃の顔を見ると、茅乃は私から目をそらし
「ま、まぁそういうことだから……早く寝ろよ」
と言い残し延明さんと一緒に階段を下りていった……おい、オマエがそもそもの原因じゃねーか!
――「犯人」はわかった。
まさかの男……継父だったのだ。
ということは……待てよ!
さっき便座に腰かけたとき「温もり」を感じたが……
私はてっきり妹だと思い、気分が「むふふっ♥」となっていた……。
――うげぇっ! 最悪だぁああああっ!
妹は妹で、実父の「座りションのカミングアウト」にショックを受けていた。私は妹と目を合わせ、
「やっぱ……二階にもトイレ欲しいな」
「欲しいのです」
翌日……私たちは「二階にもトイレが欲しい」と直訴した。
貴音なのです。ついに二万PV突破したのです! 感謝なのです♥




