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【番外編】私には……居場所があるんです(和side)「承」

 



 ――私、「平井(ひらい) (なごみ)」は裕福な家庭に生まれました。




 私の父は社員が百人以上いる会社を経営し、母はその会社の重役です。家にはお手伝いさんもいて、幼いころから欲しい物はすべて手に入れることができる環境で育ちました。



 ――でもこの家族……「心の中」はとても貧しかったんです!



 父親は大の女好き……あちこちに愛人を作っていたようです。家に帰ることはほとんどなく、私には父親の記憶がほとんどありません。

 私は母親に育てられました。でも母親はそんな父親の勝手気ままな行動に耐え忍んでいた……わけではありませんでした。


 母親は母親で、父親と同じく浮気を繰り返していました。父親が帰らないのをいいことに、毎日のように知らない男の人を家に招き入れていたのです。

 そして毎晩のように寝室から聞こえる母親の喘ぎ声……ときにはドアを開けっ放しで、母親が知らない男の人と裸になって抱き合っている姿を何度も見たことがありました。今思い返せば、私はなんて酷い環境で育てられていたんでしょう!


 幼い頃はこれが普通だと思っていました。でも小学生になり世間の「常識」というものに触れてくると、この家庭が「異常」だということに気づき始めたんです。


 このときすでに、私の頭の中に「父親」というものの存在はありません。そして料理や学校の送り迎えもすべてお手伝いさんに任せっきりで、毎日知らない男と抱き合っている母親に対しても「嫌悪感」しかありませんでした。


 ――もうこんな家にはいたくない!


 私は小学校三年生のとき初めて「家出」をしました。でもすぐに補導され家に連れ戻されてしまいました。

 母親は警察官に平謝りしていましたが……警察官が帰ると私のことを無視し、そのまま知らない男と寝室に入っていきました。


 そう……あの女は「世間体」のために母親の「ふり」をしていたんです!


 その後も私は家出を繰り返しました。そして十一歳になったある日……寝る場所が見つからず困っていると、男の人が私に声をかけてきました。


 その夜……私は処女を捨てました。


 母親の破廉恥な行為に嫌悪感を抱いていたはずなのに……私は小学校低学年のときからセックスというものにとても興味を持っていたんです。

 実は私が犬嫌いの理由……それはセックスというものに興味を持った私が、当時飼っていた犬のオチンチンを無理やり引張ってしまい、怒った犬に思いっきり噛みつかれてしまったことがトラウマになっているんです。


 このときの私はすでに生理があり、胸もCカップありました。背が低いこと以外は成人女性と変わりなかったんです。でも実際にやってみた感想は



 ――な~んだ、つまんないの~!



 処女膜を破られた痛みと虚しさだけしか残らず……私の心にぽっかり空いた穴を埋めることはできませんでした。



 ※※※※※※※



 でも中学校に入るとこの欲求は治まるどころか、さらに増大していきました。


 当時の私は援交やパパ活みたいにお金が目的ではなく、自分の存在意義を感じられて満足できる「何か」を求めていました。なので相手はお金を持っていない同級生でも構わず、私はクラスの男子を何人も「筆おろし」していたのです。

 クラスメイトからは「サセ子」とか「ヤリマン」とか陰口をたたかれ学校から問題児扱いされ……母親は何度も呼び出されました。

 その度に母親は平謝りや土下座……あるときは校長の目の前で私を平手打ちしたこともありました。

 でもこの女が一番大事にしているのは「自分の体裁」……正直、私に暴力をふるう資格などないんです。


 さすがに困り果てたこの女は、ついに私を放り出しました! 共学だと問題行動を起こすので、高校は半強制的に女子高に行かされました。しかも寮生活……完全に男性と隔離されました。


 自分の行動は完全に棚上げ……でも、あの家には私の居場所などなかったのでかえって好都合でした。



 ※※※※※※※



 男性と隔離された女子高の寮生活……でも、これが私の運命を変えました!


 女子だけで生活していると、そのうち百合……つまり女同士で付き合うカップルが自然と出てくるようになってきました。私もこの体型……当時Fカップあった私のバストに興味を持ったいわゆる「タチ」の子たちに目を付けられるようになってきたんです。


 初めは女同士の性行為に抵抗がありました。が、実際にしてみると「AVの見よう見まね」で自分の欲求だけを満たそうとする男たちと違い、お互いを満足させようとする女同士のセックスがとても気に入ってしまったんです!


 それ以来私は、女同士の恋愛……そしてセックスにもハマっていったんです。そんなときに出会ったのが「いっちゃん」こと「武川(たけかわ) いづみ」でした。



 ※※※※※※※



 いっちゃんとは高校二年の文化祭で知り合いました。彼女は「イケメン」として学校では有名人で、一年生から絶大な支持を得ていたんです。

 でも、初めて会ったときから彼女に対して、その見た目よりも特別な何かに魅かれてしまいました。彼女には「心の傷」的なものがあり……私と同じような目をしていたんです!


 いっちゃんとはすぐに意気投合……恋人として正式に付き合い始めました。彼女はとても優しく、私の欲求を満たしてくれました……もちろん性的な意味です。


 ただ……私は基本的に「ネコ(受け側)」ですが、たまには相手を満足させるよう少しは「攻め」に転ずることもあります。

 でもいっちゃんはそれを全力で拒否するんです! 本当はとても感じているみたいですが、まるで過去にトラウマでもあったかのように嫌がります。


 そんなある日のこと……


「なぁ和! 今日ウチへ遊びに来ないか!?」


 いっちゃんは寮ではなく、自宅から通学していました。私も寮生活に飽きてきた頃だったので、いっちゃんの誘いに二つ返事で答えました。



 ※※※※※※※



「ここだよ私の家は!」


 学校の帰り……いっちゃんに案内されてやって来たのは今にも崩れそうなオンボロアパートでした。いっちゃんが母子家庭だとは、以前聞かされていました。


「ただいまー」

「おぅ、おかえり! あれ……そっちの子は?」


 アパートに入るといきなりキッチンがあって、いっちゃんのお母さんらしき人が立っていたんです。


「あぁ、友だちだよ」

「へぇ、オマエが友だち連れてくるなんて珍しいな!?」


 いっちゃんは自分の性癖をカミングアウトしていません。なのでお母さんには私のことを「友だち」として紹介しているんです。


 ――何か、いっちゃんみたいに男っぽくてサバサバした感じのお母さんだわ~!


「で、お嬢さんは名前なんて言うの?」

「あっ、初めまして! 平井 和と言います」


 すると私の名前を聞いた瞬間、いっちゃんのお母さんは目をまん丸くして私を見ました。そして……


「えっ、ナゴミ!? ナゴミちゃんって言うんだ……そ、そぉ……わっ、私はいづみの母で茅乃(かやの)って言うの……よ、よろしくね!」


 明らかに私の名前を聞いて動揺した様子でした。



 これが……私と茅乃ちゃんの出会いでした。



貴音なのです。今回のお話は「起」「承」「転」「結」の四回に分けるのです。

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