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貴音の家に天ちゃんが転がり込んできたのです(貴音side)前編

 


 天ちゃんが……家出したのです。



 〝ポワンポワンッピコン! プルルル……〟


 そして今、天ちゃんは貴音(たかね)の部屋にいるのです。



 ※※※※※※※



 貴音の部屋でゲームをしているのは「菱山(ひしやま) 天(てん)」ちゃん……貴音とは小学校からのお友だちで、中学校では同じクラスなのです。

 天ちゃんには双子の妹の「空(くう)ちゃん」がいるのです。いつもはとっても仲良しの双子なのです。でもこの日、貴音が学校から帰って宿題をしていたらなぜか天ちゃんだけが遊びに来たのです。

 いつもはおしゃべりな天ちゃんがほとんど無口で、しかも機嫌が悪そうだったのです。貴音が理由を聞くと、天ちゃんは学校から帰ってすぐ空ちゃんとケンカになり、そのまま家を飛び出してきたというのです。


 ――えぇええええっ! こっこれは一大事なのです!


 貴音は天ちゃんに、ケンカの理由を聞いたのです。


「何があったのです?」

「……」


 天ちゃんは答えようとしなかったのです。でも貴音にはその理由、だいたい察しがついてるのです。


「じゃあ貴音が理由を当てるのです……テストの結果なのです!」

「うぅっ!」


 図星なのです! 実は今日、中間テストの結果が返ってきたのです。貴音たちにとって初めての定期テストなのです。

 そこで結果を見せ合ったこの二人……おそらく学年順位に大差がついてしまったのです。この流れだと間違いなく空ちゃんの方がいい成績だったのです。


「天ちゃんは何位だったのです?」

「……貴音ちゃんが教えてくれたら言う」


 貴音の通う学校では、マンガみたいにテストの順位を廊下の壁に張ったりしないのです。全員に成績と順位が書かれた小さい紙が手渡されたのです。


「貴音は今、関係ないのです」

「ダメ! 貴音ちゃんが教えてくれなきゃヤダ」


 ……仕方ないのです。貴音は順位の書かれた紙を見せたのです。


 ――!?


 天ちゃん! 何なのです、その勝ち誇ったような顔はぁああああっ!?


「天ちゃん! 天ちゃんもウソ偽りなく教えるのです!」

「ウソはつかないわよ……私は五十九位……で、空は十六位だったのよ」

「……ほぼひとクラス分差が開いてしまったのです」

「六十一位に言われたくない」


 う゛っ! 貴音は貴音で、五十位以内に入らないと一週間ゲーム使用禁止という約束をさせられてしまったのです! ちなみに百位以下だと二週間……最下位だと永久に使用禁止になってしまうのですぅううううっ!


 なのでママさんやおねえちゃんにはバレないようにするのです!


「まぁ貴音ちゃんの順位見て少し気が紛れた……貴音ちゃん、ドンマイ」

「たった二番違いでマウントを取らないでほしいのです」

「あぁーもうっ! 双子なのに何で差が開いちゃうの!? これじゃ私『双子のバカな方』って言われちゃうじゃん」


 バカとは言われてないけど……天ちゃんは小学校のときからすでに「双子の暴走する方」と呼ばれていたのです。


「どう考えてもおかしいわよ! 私だって空と一緒に同じ時間勉強していたハズなのに……そうだ! きっとあの子カンニングかなんかしたのよ」

「根も葉もないこと言ってはダメなのです」


 でも貴音は、天ちゃんがこうなった理由……何となくわかるのです。


 小学校から見ていたので貴音はこの双子の「行動パターン」がわかるのです。本当は天ちゃんも、空ちゃんと同じくらい頭がいいのです。ただ天ちゃんは「暴走機関車」! 一度走り出したら止まらない性格なのです。つまり……


 ――見直さないのです!


 貴音にはわかるのです! 天ちゃんはテストの答えを一度書いたら絶対に見直しをしていないのです!

 その証拠に先生が「終わった人は教室から出ていいぞー」と言ったとたん、真っ先に教室を出ていったのが天ちゃんなのです!


 なので天ちゃんは、たとえば解答欄の記入する場所を間違えたりとか、下手すると名前を書き忘れていたりしても気がつかないに違いないのです。そんなことだから点数が悪くても納得できるのです。



 ※※※※※※※



「天ちゃん……そろそろ帰らないのですか?」

「えっ家出したのに何で帰らなきゃいけないの?」


 どうやら天ちゃんは本気で帰らないつもりなのです。初めのうちは貴音と対戦型ゲームをしていたのです。でも貴音が勝ち続けると天ちゃんはだんだん機嫌が悪くなってきたのです。落ち込んでいる天ちゃんに追い打ちをかけてしまうのです。

 このままでは天ちゃんが「暴走」じゃなく「爆発」しそうなのです。貴音はゲームを天ちゃんにゆずり、スマホを取り出すと空ちゃんにニャインをしたのです。


 ……やっぱりなのです!


 天ちゃんは「空ちゃんとケンカした」と言っていたけど、空ちゃんは「ケンカした覚えない」と言っているのです! 天ちゃんが一方的にキレて家出したのです。

 空ちゃんはめったなことでは怒らないのです。むしろ天ちゃんが出ていったことを心配しているのです。貴音は空ちゃんへ「ほとぼりが冷めたころ迎えに来て」とメッセージを送信したのです。


 そこへ……


「貴音ちゃーん、飲み物持ってきたけど……入るよー」


 おねえちゃんがきたのです。



 ※※※※※※※



「えっ、どういうこと? 詳しく聞かせてもらえないかな?」


 おねえちゃんも天ちゃんのことを心配してくれたのです。でも天ちゃんは


「そっそれは……お姉さんには関係のない話です!」


 理由を話そうとしないのです。そこで……


「それは貴音が説明するのです」

「ちょっ貴音ちゃん! 言わないでよそんなこと」

「ダメなのです! 貴音に言わせないとゲーム使用禁止なのです」


 成績がバレたら貴音がゲーム使用禁止なのですぅううううっ!


「うぅっ……」

「実はこの前の中間テスト……天ちゃんは空ちゃんより順位が下だったのです」

「えっ、どのくらい?」

「空ちゃんが十六位、天ちゃんが五十九位……四十位以上差が開いたのです」

「ふーん……で、貴音ちゃんは何位?」


 ――うん、ろくじゅ……うわぁああああああああっ!?


「その話は今、関係ないのです」


 あっぶなかったのですぅううううっ!! おねえちゃんの誘導尋問についうっかり口を滑らせそうになったのですぅううううっ!


 おねえちゃんは天ちゃんを説得したのです。


「ねぇ天ちゃん、定期テストはあと四回あるんだから次のテストで挽回すりゃいいじゃん! だから空ちゃんのこと嫌い……とか言わないで仲よくしな! まぁ今日は早く帰って……」


 すると天ちゃんは、予想外の行動に出たのです!


「嫌です! 私を今日からこの家の娘に……お姉さんの妹にしてください!」


 そう言いながら天ちゃんは何と、おねえちゃんに抱きついたのです!


 ――えっ!?



 ――えぇええええええええっ!?



 天ちゃん! おねえちゃんに抱きついたらダメなのですぅううううっ!


貴音なのです。もし天ちゃんが貴音と姉妹になったら……


……姉二人のクセが強すぎるのです!

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