貴音はひとりでおトイレに行けないのです(貴音side)
おねえちゃんはゲームした後、落ち込んでしまったのです。
おねえちゃんはゲームをほとんどやったことがないのです。なのに貴音はおねえちゃんに「下手くそ」などと暴言を吐いてしまったのです。
おねえちゃんは「貴音ちゃんが気持ちよくなれるように頑張る」などとワケのわからないことを言って落ち込んでいるのです。
貴音は悪い子なのです。さすがに下手くそは言いすぎたのです。なので貴音はおねえちゃんに「おわび」をするのです。
「おねえちゃん、一緒にお風呂入るのです♥」
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「貴音ちゃーん、ちゃんとお布団掛けて寝るんだよー! おやすみー♥」
おねえちゃんはすぐに機嫌がよくなったのです……単純なのです。
「ではおねえちゃん、おやすみなのです」
貴音とおねえちゃんは部屋が別々なのです。貴音は自分の部屋のベッドに入って寝るのです。
今日は楽しかったのです。
天ちゃん空ちゃんとゲームして遊んだり、クララと遊んだり……おねえちゃんが作ったハンバーグを食べたり……今日は楽しい気分で貴音は眠りにつくので……
――眠れないのですぅううううっ!!
今日パパとママさんは新婚旅行なのです。今夜二人は家にいないのです!
不安なのです。しばらくお布団に入っていたのに全然寝つけないのです!
そうしているうちに貴音はおトイレに行きたくなってきたのです。でも貴音ひとりでは行けないのです!
なぜなら今日、一階には誰もいないからなのです!
おトイレは一階なのです。一階にはパパの仕事部屋(書斎)があるのですが、パパはなぜかいつも夜中にお仕事をするのです。だからいつもは夜中にトイレ行っても怖くないのです。
貴音は誰もいなくて真っ暗な一階がとても怖いのです! どのくらい怖いのかと言うと、一日更新をストップしただけでぱったりとアクセスしてこなくなるこの小説の読者くらい怖いのです!
今までパパがいないときは家政婦の武川さん、つまり今のママさんが一階の和室に寝泊まりしていたのです。そしてパパとママさんが結婚してからも、二人の寝室は一階にあるので安心なのですが……
今夜は一階に誰もいないのです……だから怖いのです!
――あっ!
でも思い出したのです!
こんなこともあろうかとママさんにあらかじめ相談をしたら「もし何かあったらおねえちゃんを叩き起こしていいよ」と言われていたのです!
――なのでおねえちゃんを今から叩き起こすのです。
「こんこん、入るのです」
おねえちゃんはすでに寝ていたのです。おねえちゃんの部屋には剣道の道具があるのです。貴音は……
「胴ぉおおおおーっ!」
「うげっ!!」
竹刀を使って叩き起こしたのです。
「こっこらーっ! 何すんだよ!?」
「何かあったらおねえちゃんを叩き起こしていいとママさんから言われたのです」
「おい! だからって茅乃の言うこと真に受けるな!!」
おねえちゃんに怒られたのです……話が違うのです。
「で……何があったの?」
「たっ、貴音はおトイレに行きたいのですが……行けないのです」
「えっ、ひとりでパンツ脱げないの~? じゃあ脱がしてあげようか♥」
やっぱりおねえちゃんは貴音をバカにしてきたのです。
「違うのです! おトイレが……一階が怖いのです」
「えっなんででちゅかぁ~? たかねちゅわんはお子ちゃまでちゅかぁ~?」
「……うぅっ」
バカにされることは覚悟していたのです。けど今の貴音は反抗できないのです。
「わかったよ……ついて行ってほしいってことだろ? 行くよっ!」
でも最後におねえちゃんは頼れる「王子様」になるのです♥ 貴音は王子様のエスコートでおトイレに向かったのです。
※※※※※※※
いつもならパパの仕事部屋には明かりがついているのですが、今夜は真っ暗なのです。おねえちゃんが廊下の明かりをつけて貴音はおトイレに入るのです。
「どう? 貴音ちゃん、ひとりで入るの怖かったらおねえちゃんが後ろから抱えてシーッってさせてあげようか?」
「赤ちゃんじゃないからひとりでするのです!」
またおねえちゃんは貴音をバカにしてきたのです! けど貴音も中学生になったのに、いつまでもこんなことで怖がっていては大人になれないのです。
「おねえちゃん、お待たせなのです」
貴音はおトイレを済ませてドアを開けたのです。
「あれ? おねえちゃ……ん……?」
おねえちゃんの姿がないのです! 廊下を見ても誰もいないのです! えっおねえちゃんどこなのです!? 貴音はとても不安になったのです……そのとき、
「たぁーかぁーねぇええええっ!」
「きゃぁああああああああっ!!」
トイレドアの後ろに隠れていたおねえちゃんがおどかしてきたのです。
※※※※※※※
「ふぇええええええええん!」
「ごめんごめん、冗談だって! だから泣かないでよぉー」
「もうっ! おねえちゃんなんかキライなのですぅううううっ!」
貴音は腰を抜かしてその場にへたり込んだのです。おトイレ済ませた後だからよかったのです。もし入る前だったらこの間の和おねえちゃんみたいにお漏らししていたのです。おねえちゃんは本っ当にイジワルなのです。でも……
「ほらっ、しょうがないな……連れてってやるよ」
おねえちゃんは貴音をお姫さま抱っこして部屋まで運んでくれたのです……
……その前に手はちゃんと洗ったのです!!
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「じゃあね、今度はちゃんと寝なよ」
「おやすみなさいなのです」
貴音はおねえちゃんにベッドまで運んでもらったのです。何か本当に赤ちゃんみたいな扱いなのです。そう考えるとちょっと恥ずかしいのです。
……
……
……貴音は……夢を見たのです。いつのまにか寝ていたみたいなのです。
貴音はよちよち歩きができる赤ちゃんになっていたのです。これはきっと、おねえちゃんが貴音のことを赤ちゃん扱いしたせいなのです!
そして、貴音の目の前には女の人が立っていたのです。
――マ……ママ?
それは貴音が三歳のとき、お星さまになったママだったのです!
「ママァー!」
貴音がよちよち歩きでママの元へ近づくと、なぜかママはすぅっと貴音から離れていくのです。
「ママ―ッ、ママ―ッ!」
貴音はママを追いかけたのです。でもママは捕まえられないのです。貴音は必死に追いかけたのです。
するとママはある部屋に入っていったのです。貴音は部屋のドアを開けるとママを探したのです。
ママは部屋のベッドで寝ていたのです。貴音はベッドによじ登ると、ようやくママを捕まえたのです! そして貴音はママにこう言ったのです。
「ママ―、おっぱい♥」
貴音はママのおっぱいが飲みたかったのです。貴音はママの胸に飛び込むと、ママのおっぱいをおいしそうに飲んだのです。
……あれ?
貴音は夢を見ているはずなのに、なぜかママがリアルにあったかいのです。
……不思議な夢なのです♥
でもこの後……夢から覚めた貴音はパニックになるのです。
貴音なのです。貴音はお子ちゃまじゃないのでちゅ! 赤ちゃんじゃ……ばぶー!




