私と平井和は「くされ縁」だ(いづみside)後編
――どぉしたらいいんだよぉー!?
私の友人で元カノ・平井 和が妹の貴音を狙っている。妹はまだ十二歳……法的にもだが、本人がちゃんと理解と判断ができる前に「一線を越えること」だけは絶対に回避せねば……この子の将来に影響してしまう!
「え~なぁに~貴音ちゃん、さっきからお姉さんのおっぱいばかり見て~、そんなにお姉さんのおっぱいに興味あるの~?」
「えっあっあの……たっ貴音はおっぱい小さいから、和おねえちゃんがう……うらやましいのです」
だが事態は深刻だ。おっぱい好きの妹は和のバケモノ乳のとりこになり二人は意気投合してしまった……ってかオマエら、公の場所でおっぱいおっぱい言うな!
「ここが貴音の家なのです」
「うわー大きい家! どっかの四尾連荘とは大違いね~」
四尾連荘とは私と母・茅乃が以前住んでいたアパートの名前だ。ていうか今コイツ馬鹿にしやがったけど、付き合ってたときはオメーも自分の家みたいに使ってたじゃねーか!?
和は高校時代、毎日のように私が住むアパートに出入りしていた。コイツは物怖じしない……つーか厚かましい性格なので茅乃ともすぐに打ち解けて、気がつくと毎日のように家で晩飯を食べていた。
で、家政婦をしていた茅乃が仕事でいないときは私の部屋で一戦交えていた……ラブホに行く金なんてあるワケがない。ただボロアパートなのでお互い声を殺して大変だったなぁ……。
「ただいまなのです」
妹が玄関ドアを開けて中に入ると茅乃が出迎えた。
「お帰りー貴音ちゃ……あれ? 今日は早いのね?」
「貴音は今日、中間テストなのです! 今日はお客様を連れてきたのです」
と妹が言うと、ドアの陰に隠れていた和と私が家に入った。
「茅乃ちゃ~ん! おひさ~♪」
「おぉナゴじゃん! ひっさしぶりだなぁ……えっ何で貴音ちゃんと一緒? 珍しいツーショットだわ」
――おいちょっと待て! ツーショットって……実の娘もいるぞここに!
茅乃から「ナゴ」と呼ばれている和は妹の肩を引き寄せると、
「実は~、結婚のご挨拶に来ました~! 貴音さんを私にください!」
「あっはっは! 相変わらずナゴはおもしれーなぁ」
いやいやコイツの場合マジでシャレにならねーんだよ!
「そこでバッタリ会ったんだよ」
私がフォローすると茅乃は
「で、ナゴは何しに来たんだ?」
「何しに来たって、茅乃が和に服を取りに来いって言ったんじゃねーか!」
「おぉそうだ忘れてた……ナゴ! ちょっと待ってな、すぐ取りに……てかせっかく来たんだから寄っていけば?」
いや、和は家に上がらせない方がいい! コイツは妹を狙っている。うっかり家に上がらせて妹の部屋に侵入しようものなら何をしでかすか……。
「茅乃ちゃ~ん! せっかくだけど~この後予定あるから~また今度ね!」
「あっ……そうなの? じゃあ持ってくるわ」
少しガッカリしたような茅乃は和室にメイド服を取りに行った。それにしても、和が遠慮するとは珍しいことだが……。
「……予定?」
「うん、サークル! もちろん飲みとヤリ付き♥」
そういう理由か……コイツの性欲は底なしだ。
「でも貴音ちゃんはあきらめないわよ~! 貴音ちゃん、今スマホを取りに行ってるけど~戻って来たらニャイン交換するんだも~ん」
そういや妹の姿が……貴音ちゃーん、悪い大人とニャイン交換しちゃダメ―ッ!
「実物と会って確信した! 貴音ちゃん、やっぱり『タチ』よ。あぁ、私がタチの何たるかを教えてあげるから早く私を攻めて! そしてイカせてほしいわ~♥」
和と個人的に連絡取り合ったらお終いだ! 言葉巧みに誘惑され性被害に遭ってしまうのは確実!
こうなったら実力行使だ! 茅乃は玄関に護身用として竹刀を置いている。私がその竹刀に手をかけようとしたそのとき!
「ワンワンワンッ」
「和おねえちゃーん、お待たせなのです」
廊下の向こうから妹と……クララが駆け寄ってきた。妹は部屋にスマホを取りに行くと、ついでにリビングに閉じ込められていた愛犬のクララを解放したのだ。
すると……和の表情が一変した。
「えっ……えぇっ……い……い……」
――あ、思い出した!
「いやぁああああっ!」
――和は……犬が死ぬほど嫌いだったんだ!
和は玄関の土間にへたり込むと全力でクララを拒んだ。だが人懐っこいクララはそんなこと意に介さず和に飛びついた。
「いやぁああああっ! やめて! いやっ、いやっ!」
和が必死に抵抗していると、貴音が
「和おねえちゃん、どうしたのですか?」
「あぁ、和は犬が大嫌いなんだよ」
妹はイタズラ好き……この状況だと面白がって余計にクララを近づけそうだ。
ところが……
「それは……かわいそうなのです」
あれ? 珍しく同情するとは、妹にも慈悲の心があったのか……と思いきや
「クララは誰からも愛されるのです! 人に嫌われるなんて……クララがかわいそうなのです!」
――そっちかーい!
「和おねえちゃんにはクララをもっと好きになってほしいのです♥」
思った通り、妹はクララを抱えると和の顔に近づけた。
――オマエ……悪魔だな。
「ほーら和おねえちゃん、クララは噛みついたりしないのです」
「いやぁああああっ! やめてぇええええっ!」
妹は使命感を持ってやっているようだが……どう見ても拷問だ。
と、そこへ茅乃が大きな紙袋を抱え戻ってきた。
「おぉどうしたナゴ!?」
「茅乃ちゃぁああああんっ! たっ助けてぇええええ~っ!」
「えっ……あぁそうか! ナゴは犬嫌いだったな?」
「そうよ! だから貴音ちゃんを止めてぇええええっ!」
「思い出したよー、そういやオマエ、学校の帰り道で野良犬に追われて家に転がり込んだことあったな! でもって家の玄関でおしっこ漏らしたんだっけ!?」
「やめてぇええええっ! 貴音ちゃんの前でその話しないでぇええええっ!」
あーぁ、デリカシーゼロの茅乃が暴露しちまったな……そう、和は高校生のとき私の住むアパートの玄関で失禁してしまったのだ。
妹はクララを和の顔に押し付けていた。クララも和が気に入ったみたいで顔をペロペロと舐め回している……犬嫌いにとって死刑執行レベルの行為だ。
すると……
「いやぁああああ……あっ……」
玄関にへたり込んでいた和はその場で白目をむいて気絶した。さらに……
〝じょわ~……〟
また失禁しやがった。しかも今度は中学生の前で……。
でもよかったな和! オマエの望み通り、妹に攻められて……イッたじゃん! ネコとして本望だろ?
「あーまたお漏らししちゃったなナゴは! しゃあない、久しぶりにコイツのパンツ洗ってやるかー♥ いづみ! 洗濯の準備すっからナゴのパンツ脱がしといて」
「はーい」
なぜか茅乃は嬉しそうだった。私は気絶した和のパンツとスカートを脱がすと、そのままお風呂場に抱えていった。
――あ……そういえば!
私は今日、和のパンツ脱がすの二回目だったわ。
……この日以来、和が自分の意志でこの家と妹に近づくことはなかった。
貴音なのです。和おねえちゃん! おしっこはトイレシーツの上でするのです!




