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私は天使ちゃんの姉になった(いづみside)後編

 



 ……この子、マジで天使だ!




 母の再婚相手、尾白(おじろ)さんの家族と顔合わせした私は、一人娘の「天使ちゃん」こと尾白 貴音(たかね)ちゃんの異次元のかわいさにメロメロになってしまった。

 そして一通り挨拶を済ませたところで席に着き、新しく家族になる四人で食事を始めたのだが……。


「いづみ、もっとお行儀よく食べなさい!」

「え~、めんどくさいなぁ」


 母子家庭である私の家は正直、裕福とは言えなかった。高級レストランなんて初めて来たのだ。マナーとか……マジでわかんないしめんどくさい。ナイフとフォークがいくつもあって……どれ使えばいいんだよぉ~!


 それに引き換え、相手方の娘さんの天使(貴音)ちゃんは行儀よく食べてい……あれ? ほとんど食べてないな……もしかしてこの子は小食なのかな? そういやほんのりと顔が赤いけど……具合でも悪いのだろうか?


 ――それにしても……カワイイなぁ~♥


 でも十二歳だって言ってたよな。さすがに同性愛者(レズビアン)の私でも、この子に手を出したらコンプライアンス的にアウトだわ(※法的にもアウトです)。


「ところでいずみさん、例の同居の件なんですが……」


 天使ちゃんの父親、延明(のぶあき)さんが切り出した。正直、この人はとても良い人に見えるが「男の人」だ。以前ほどではないとはいえ、男性恐怖症の私にとって延明さんとの同居は難しい……なので丁重にお断りしたい……だが!



 ――この人と同居すれば()()()()『天使ちゃん』が付いてくる!!



「あっ、よろしくお願いします! 大学も近いですし、お世話になります!」


 意思とは関係なく、二つ返事してしまった! まぁあの天使ちゃんがいれば「男の人」との同居も何とか乗り切れるだろう。


「……はぁ?」


 だが私からあらかじめ「同居はしない」と聞かされていた母・茅乃(かやの)は、フォークごとお肉を落として(あき)れ返っていた。


「あっ、ちょっとトイレ行ってくるね」


 私は呆気(あっけ)にとられた母から逃げるようにトイレに向かった。さーて、帰ったらアパートを退去する準備しなくちゃ……。



 ※※※※※※※



 私はトイレに行っている間、天にも昇るウキウキした気分だった。


 ――あの天使ちゃんと一緒に住める!!


 もう相手が義務教育だろうが児童なんちゃら法だろうが関係ねぇ! 私はこれから何年かかってでも、あの超絶美少女銀髪ハーフ天使ちゃんをモノにしてやる!

 姉妹だけど血はつながっていないし、そもそも日本では同性の結婚が法的に認められていないのだから問題ない。あの子が大人になったら私は……私は……



 ――あの「天使ちゃん」をお嫁さんにする♥



 人生の目標ができた。いやぁ~これから毎日が楽しいなぁ~! あの子が成長して、いつかベッドで抱ける日を妄想しながらトイレを出ようとしたら……



 てっ……


 ――天使ちゃんだぁああああああああっ♥


 私と入れ替わりで天使ちゃんがトイレにやって来た。ところが……


 天使ちゃんは私の顔を見るなり目をまん丸くしてその場に立ちすくんでいた。しかも姉を見る……というより不審者を見るような目だ……えっ、何で?


「あ、あの……」


 しばらく立ちすくんだ後、天使ちゃんは恐る恐る私に話しかけてきた。


「ん? どうしたの?」



「あの、ここ……女性用トイレなのです……」



 ――へ? どういうこと?



「う、うん……知ってる()()


 その言葉を聞いた天使ちゃんは、突然声を震わせながら、



「あ、あの……()()()さんって……おっ『お兄さん』じゃないのです……か?」




 ――は?




 この子、まさかとは思うけど……



 ――私を「男」だと思ってたのぉおおおおおおおおっ!?



「えぇっ! 私、女よ! あなたの『お姉さん』になるのよ!」

「ふえぇええええっ!? ごごっ……ごめんなさいなのですぅううううっ!」


 その言葉を聞いた天使ちゃんは瞬く間に顔が真っ赤になり、すぐに顔を両手で隠してトイレへ駆け込んでいった。うわぁ、その仕草もかわいいっ……けど、


 いくら普段着でメイクも薄かったとはいえ……男に間違えられるとは……



 ――ショックだぁああああああああっ!




 これが私と、「天使ちゃん」こと妹・貴音ちゃんとの出会いでした。



 ※※※※※※※



 私は今でもたまに、このときの話を妹にする。


「そういえば貴音ちゃん……最初お姉ちゃんを男だと思ってたんだよね?」

「えっ、そそそそれは誤解なのです! だっ、だっておねえちゃん……」


 妹はあたふたしながら否定する……その姿もカワイイ♥


「じゃあ聞くけど……私はお兄ちゃんとお姉ちゃん、どっちならよかった?」


 と私が聞くと、妹はニコッと微笑みながら


「もちろん、貴音は『おねえちゃん』が好きなのです! だから……」


 ……だから? あ~これはまた要求されるな?



「おねえちゃん! 貴音を『むぎゅ♥』ってして欲しいのです!」



 ――やっぱり! もぉ、しょーがねーなぁ……


「わかったよ貴音ちゃん……来な」



 〝むぎゅ♥〟



 ――今では「別の理由」で姉の私を好きになっている。



 それは何かって? ん~と……また今度話すよ。

貴音なのです。次回は貴音の視点なのです。

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