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【番外編】貴音たちはあの女が嫌いなのです(貴音side)3

 校庭の桜の木にお花が咲いたのです!


 四月になったのです! 貴音(たかね)たちは小学三年生になったのです!


 ……落第しなくてよかったのです。


「貴音ちゃん、日本ではその心配ないから」

「そうだったのですか? 貴音はてっきり(てん)ちゃんが落第するかと思って心配していたのです」

「えっ私の心配なの!? 余計なお世話よ!」


 天ちゃんはテストのとき、名前の書き忘れや記入する場所を間違えたせいでよく零点を取っていたのです。


 さてさて、三年生になって一番最初の始業式の日。貴音たちにはある「試練」が与えられたのです。


 ――それは「クラス替え」なのです。


 貴音たちの学年はA組とB組のニクラスなのです。昔はもっとクラスがあったそうなのですが、少子化の影響でこの年はどの学年もニクラスだったのです。空いている教室がいっぱいあり、たまに授業で使うとホコリっぽい臭いがしたのです。


「天ちゃん、三年生も同じクラスなのです!」

「よかったぁ! 貴音ちゃんと一緒なら毎日退屈しないわ」


 貴音はB組になったのです。そして三年生(と四年生)も菱山(ひしやま)天ちゃんと同じクラスになったのです。でも、


(くう)ちゃん……A組のままなのです」


 天ちゃんの双子の妹、空ちゃんとは別のクラスになってしまったのです。天ちゃんと空ちゃんは、小学校一~二年のとき同じクラスだったのですが、それ以降二人が同じクラスになることはなかったのです。

 これはきっと、何か巨大な闇の組織による陰謀なのです。ちなみに小学校五~六年のときは、今度は貴音と空ちゃんが同じクラスになったのです。


 あっどうでもいいお話なのですが、雨畑(あめはた)硯都(けんと)も空ちゃんと同じA組なのです。


「空ちゃんと離れ離れで寂しいのです」

「貴音ちゃん、私(天)がいるよ」

「……寂しいのです」

「えっ、何で一度私の顔見てから同じセリフ言うの? 私じゃ不満なの!? 休み時間になったら空と一緒に遊べばいいし、新しいお友だちもできるよたぶん……()()()さえいなけりゃ」

「そうなのです! 何で()()()が……」


 貴音と天ちゃんは同じ方向を見たのです。視線の先にはイマイチこのクラスに乗り気じゃなかった原因がいたのです。それは……


「あーはっはっは! いよいよこの樹李(じゅり)タソと同じクラスになったっすね尾白(おじろ)貴音そして菱山天! この樹李タソ様と勝負するっす!」


 コイツがいないA組の空ちゃんがうらやましい……貴音と天ちゃんはこのとき真剣にそう思ったのです。



 ※※※※※※※



「アンタねぇ、一緒に遊びたいなら素直にそう言いなさい!」


 やたらと貴音たちをライバル視する野牛島(やごしま)樹李が同じクラスになってしまったのです。本当にこの女は面倒くさいのです。二年生のときもコイツと休み時間を一緒に過ごしたせいで、貴音たちは他の子と遊ぶことができなかったのです。


「遊びじゃないっす! オマエたちは樹李タソのライバルっす!」

「はいはい、どうでもいいけど何? その樹李『タソ』って?」

「ふっふっふ! やっぱ田舎モンは遅れてるっす」

「うっせーわ、アンタだって田舎モンじゃん」

「樹李ちゃん→樹李たん→樹李タソっす! こんな流行についていけないとはやっぱオマエらはダサいっす」

「いや流行ってねーし」

「すっす言ってるヤツに言われたくないのですっす」

「貴音っちだって『なのです』とか言ってるっす!」


 周りから見ると完全にケンカしているように見えるのです。おそらく樹李ちゃんもそう思ってるに違いないのです。でも……


「じゃあ樹李、何の勝負するの?」

「今から校庭でフラフープ勝負するっす!」

「はぁ!? この休み時間は十分(じゅっぷん)しかないのよ! アンタとくっちゃべってる間に終わっちゃうじゃない! トイレにも行きたいし、次のニ十分休みにしろ!」

「じゃあトイレで勝負っす!」

「何を勝負すんのよ!?」


 この後、三人で一緒におトイレに向かったのです……結局仲がいいのです。おトイレの前で空ちゃんとバッタリ出会ったのですが、


「あーっ空! 私たちの顔見て逃げたなぁー!?」


 樹李ちゃんと関わりたくない……空ちゃんの気持ちはわかるのです。



 ※※※※※※※



「くそっ、また負けたっす!」


 次の休み時間、貴音たちはフラフープで遊んだのです。でも樹李ちゃんはとても悔しそうにしていたのです。


「何で? 回した数だったら大して変わんないじゃない! 貴音ちゃんなんか一回も回せなかったし……」


 う゛っ……貴音はウンチ(運動音痴)なのです。


「勝負はそこじゃないっす!」

「えっ、じゃあ何?」

「カワイイって言われなかったっす!」


「「……は?」」


 貴音と天ちゃんは意味がわからなくて、お互い顔を見合わせたのです。


「貴音っちが失敗したとき、上級生が『カワイイ♥』って言ってたっす! ()()()も男子にジロジロ見られてたっす! なのに樹李タソは誰からもカワイイと言われなかったっす! こんなにオシャレしてるのに……悔しいっす!」

「……天タソって呼ぶのやめて」


 そうなのです。樹李ちゃんはいつも「ギャル」の格好をしていて服装が派手だったのです。本人は「カワイイ」と思っているのですが、周りから浮いた格好だったのでみんな樹李ちゃんに声を掛けづらかったのです。


「何で!? 何でアンタたちには弱点がないっすか!?」


 えっ? 貴音は樹李ちゃんよりウンチ(運動音痴)だし、天ちゃんは性格がアレだし……弱点なんて山ほどあるのです。

 でも当時の樹李ちゃんにとって「カワイイ」が全てだったのです。樹李ちゃんは貴音たちの弱点を探し出そうと必死なのですが、そもそも弱点とは何なのか理解できていなかったのです。


 そんなある日……事件が起こったのです。



 ※※※※※※※



 この日は三年生になって初めての授業参観が行われたのです。貴音の家は、いつものようにパパがやって来たのです。パパは人気の絵本作家でいつも忙しいのですが、授業参観は必ず見に来てくれたのです。

 天ちゃんのママさんはB組と空ちゃんのいるA組の両方を見るので忙しそうだったのです。最初に天ちゃんを見てすぐに空ちゃんのいるA組に向かったのです。

 後で空ちゃんから聞いた話だと……教室に入ってきたママさんは最初、()()()機嫌が悪そうだったらしいのです。でも空ちゃんを見てすぐ普段のママさんに戻ったそうなのです。


 〝キーンコーンカーンコーン〟


 授業参観そして帰りの会が終わって帰ろうとしたとき、樹李ちゃんが突然貴音に話し掛けてきたのです。


「貴音っち」

「何なのです」


「何で貴音っちだけ……父ちゃんが来てたっすか?」


 その言葉を聞いて、近くにいた天ちゃんの動きが止まったのです。


「父ちゃんは来ていないのです……来ていたのはパパなのです」

「一緒っす! 貴音っちの母ちゃん、風邪でも引いたっすか?」


 貴音にママはいないのです。貴音が三歳のとき、お星さまになってしまったのです。樹李ちゃんは貴音にママがいないことを知るとこう言ってきたのです。



「貴音っちの弱点見つけたっす! 貴音っちには母ちゃんがいないっす!」


貴音なのです。次回は9転回……急展開するのです!

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