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【番外編】貴音たちはあの女が嫌いなのです(貴音side)2

 

尾白(おじろ)貴音(たかね)! 菱山(ひしやま)(てん)()(くう)! 樹李(じゅり)ちゃんと勝負するっす!」


 あれから毎日、休み時間になると貴音たちのクラスに野牛島(やごしま)樹李がやって来るようになったのです。


「まずは敵の情報を知るっす!」


 正直言って迷惑なのです。勝手に敵呼ばわりされているけど、貴音も天ちゃん空ちゃんもコイツのことは敵だと思っていなかったのです……ただの「ウザいヤツ」なのです。


「なのでアンタたち、このプロフ帳に弱点を書くっす!」


 まず最初にコイツは毎回プロフィール帳を持って来たのです。でも親しくもない人間に弱点なんて教えるワケがないのです。当時小二だった貴音たちでもわかるので、全員書くことを拒否し続けたのです。

 ただコイツはしつこいのです。仕方ないので貴音はコイツのプロフ帳に「じゃくてん」の絵を描いたのです。


「何っすかこれ? ハンバーグ?」

「じゃ()天なのです! 愛媛の名物なのです」

「オッ、オマエふざけてるっす! 弱点を書けと言ってるっす!」

「樹李ちゃんは怒りっぽいのです! じゃこ天はカルシウムたっぷりだから食べた方がいいのです」


 隣では天ちゃん空ちゃんが爆笑していたのです。樹李ちゃんは顔を真っ赤にして自分の教室に帰っていったのです。



 ※※※※※※※



 その次の日も樹李ちゃんは懲りずにやって来たのです。


「尾白! 菱山! 勝負するっす!」

「今度はなんなのです?」


 貴音は休み時間、天ちゃん空ちゃんと遊びたいのです。でもコイツがいつも割り込んでくるのでまともに遊べないのです……迷惑なのです!


「たまごっ()()で勝負っす!」


 それって勝負する玩具(モノ)ではないのです。


「たまごっちょは学校に持ってきてはいけないのです」

「先生に言おう」

「言おう」

「ふ、ふーんだ田舎者! たっ、たまごっちょも持ってないっすね!?」


 樹李ちゃんはよくわかんない負け惜しみを言って教室に戻ったのです。そのまた次の日も……


「アンタたち! 帰りにラ()andベリーで勝負するっす!」

「イヤなのです」

「ハッ、ハンデとしてこのカードをあげるっす」


 見覚えのあるカードばかりなのです。これはきっと同じカードが被ったから処分したいだけなのです。でも……


「この辺にゲーム機置いてないのです! だからいらないのです」

「えっ!? 田舎だったらまだ置いてあるっすよきっと……」

「おいっ! 田舎をバカにするな!」

「するな!」

「樹李ちゃんは東京のどこにいたのですか?」

「八王……」

「田舎じゃん」

「じゃん」


 個人の見解なのです。


「うっ、うるさいっす! 今度こそ遊……勝負っす!」


 今、遊ぶって言ったような気がするのです。


「アイツ、マジでしつこいわね」

「しつこいわね」

「何かいい方法はないのですか? 本当に迷惑なのです」


 と、その時なのです。


「ねぇ尾白さん、菱山さん」


 クラス()メイトが貴音たちに声を掛けてきたのです。


「次の休み時間、私たちとドッジボールしない?」

「オマエらいつも教室にばっかいるから野牛島に絡まれるんだよ」


 それもそうなのです。ただ、貴音はウンチ(運動オンチ)なのでドッジボールは苦手なのです。


「大丈夫だよ! 尾白は人数に入れてないから」

硯都(けんと)、それはそれで失礼なのです」


 そういえば硯都(コイツ)も同じクラスなのです。



 ※※※※※※※



 次の休み時間なのです。


「じゃ、行こうぜ」


 隣のクラスから野牛島樹李がやってくる前に、貴音たちはお外に出てドッジボールで遊んだのです。貴音はずっと内野にいたのですが、硯都や天ちゃんの活躍で最後まで残ることができたのです。


 〝キーンコーンカーンコーン〟


「あー楽しかったのです!」

「貴音ちゃん、結局一度もボール触ってなかったよね?」

「あれは球技じゃねえよなぁー」

「みんな! しゃべってないで早く教室に戻るわよ」

「戻るわよ」


 ギリギリまで遊んでいたので次の授業のチャイムが鳴ってしまったのです。貴音たちは急いで教室に戻ったのです。


「アナタたち! チャイムが鳴り終わるまでに席へ戻りなさい」

「はーい」


 案の定、先生から怒られてしまったのです。でも久しぶりにお外で遊んだのが楽しくて、誰も反省していなかったのです。


 あ、そういえば……


 休み時間に野牛島樹李が来ていたのか気になったのです。貴音は授業中、隣の席の子にこっそり聞いたのです。この子は休み時間、教室に残っていたのです。


「いたわよ」


 やっぱり! ヤツは来ていたのです! これはきっと、貴音たちがいなかったので怒り狂ってたに違いないのです!


 貴音はノートと筆入れを動かし、机の上にイタズラ書きされてないか確認したのです……何もなかったのです。

 次に机の中も確認したのです! もしかしたら虫のオモチャとか昨日の給食のパンが入れられてるかも知れないのです……何もなかったのです。

 で、ではもしかすると……腹いせに貴音のイスのクッションへオナラをしていったかも知れないのです。貴音は慌ててクッションに臭いが残っていないかクンクンしたのです。


「尾白さん! 授業中に何やってるの!?」


 先生に怒られてしまったのです。すると、


「貴音ちゃん……あの子イスに座ってないわよ」


 何と! 野牛島樹李は貴音のクッションにオナラをしていなかったのです。隣の席の子のお話だと……ヤツは休み時間の間ずっと教室の隅の床に体育座りをして貴音たちが来るのを待っていたそうなのです。その間、誰ともしゃべらず床の上にうずくまっていたそうなのです。


 何か……思っていたのと違うのです。


 貴音はそのことを天ちゃん空ちゃんにお話ししたのです。


「何だ、結局私たちと遊びたいだけじゃないの……アイツ面倒くさいわね」

「くさいわね」



 ※※※※※※※



 次の日の休み時間なのです。


「尾白貴音! 菱山天と空!」


 また懲りずに野牛島樹李がやって来たのです。


「昨日はよくもテキゼントウボウしやがったっすね! この卑怯者!」


 貴音と天ちゃん空ちゃんは樹李ちゃんを無視したのです。


「ななっ、なんっすか!? この樹李ちゃんを無視するっすか!? そーかそうっすか!? そういう態度を取るってことは樹李ちゃんに敵わない……つまり負けを認めるってことっすね?」


 貴音と天ちゃん空ちゃんはお互いの顔を見合わせると、天ちゃんが樹李ちゃんに向かってこう言ったのです。


「よこしなさい!」

「へっ!? 何をっすか?」


 何のことだかわからない樹李ちゃんは目を白黒させたのです。


「プロフ帳よ! 書いてあげる」

「あげる」


 その言葉を聞いて樹李ちゃんは急に目をウルウルさせたのです。


「よ、ようやく樹李ちゃんに弱点をさらすっすね」

「弱点なんかないわよ! それと、私たちのプロフ帳にも書いてね」

「書いてね」

「じゅ、樹李ちゃんに弱点なんかないっす!」

「そんなの書かなくていいわよ」


 天ちゃんは樹李ちゃんにこう言ったのです。



「もうアンタの弱点は知ってるから」



「……へっ?」


 樹李ちゃんはまだ、自分の弱点がわからなかったのです。


「みんながじゃこ天好きでよかったのです」

「貴音ちゃん、アンタ本気でそう思ってるの?」

貴音なのです。作者の弱点は「若者の流行を知らなすぎる」ことなのです!

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