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貴音はブラジャーをしてみたいのです(貴音side)後編

 


「貴音ちゃん……貴音ちゃんもブラ着けてみる?」



 ――はっ、謀られたのですぅううううううううっ!


 やっぱりおねえちゃんは貴音にブラを買わせるためこの店へ入ったのです。


「たっ、貴音は……必要ないのです!」


 本当は欲しいのです。でも(ノー)おっぱいの貴音に買う資格などないのです。しかもこんな専門店で……恥ずかしいのです!


「そぉ~お? さっきから興味津々にブラ見てたじゃん! お姉ちゃんが説明してたときもメッチャ食いついてたよね?」

「そっ……それは……」

「ま、とりあえず採寸だけでもしてもらいなよ」


 採寸? どうせペチャンコなんだから必要ないのです! しかも……


「してもらうって……もしかしてこのお姉さんが貴音のおっぱい測るのですか?」


 おねえちゃんでもイヤなのに……他人になんて絶対測られたくないのです!


「うん、自分に合ったサイズを見つけるなら店員さんに見てもらうのが一番だよ」

「えっ……貴音のおっぱいは測定する意味ないのです。そっそれに、このお姉さんにおっぱい見せたくないのです」


 すると店員さんはクスクス笑いながら貴音にこう言ったのです。


「大丈夫です、採寸する意味のない人なんていませんよ。それと採寸は服の上からしますので、上着だけ脱いでいただければ測れますよ」


 服の上から……なら大丈夫なのです。前にデパートでドレスを作ってもらったときも測ってもらったのです。貴音は店員さんに測ってもらったのです。でも……


 ――あれ? 二回も測ったのです。測りまちがえたのですか?


「終わりましたよ」


 貴音は悲惨な結果が目に見えているバストサイズを知りたくないのです。


「何してるの?」

「たっ、貴音は……結果を聞きたくないから耳をふさぐのです!」


 貴音は測定結果を聞かなかったのです。なのに……


 〝ニャイン♪〟


 貴音のニャインにおねえちゃんから……



『AA60だよ』



 ……()()()()メッセージが入っていたのです。


 ――何なのですかこれはぁああああっ!?


「それでは何点か選んできますのでしばらくお待ちください」


 店員さんがこの場所を離れたので、貴音はおねえちゃんの脚をけったのです!


「イテッ、何すんだよ」

「おねえちゃんひどいのです!」


 貴音はスマホの画面を見せたのです。


「えっ、だって貴音ちゃんが『聞きたくない』って言うから()()()んだよ」

「そういう意味じゃないのです! 何なのですAAって?」

「ん? Aカップが二つ分あるって……」


 絶対にウソなのです! おねえちゃんはときどき貴音をからかうのです。


 ――おねえちゃんにおごってもらうパフェのランクが上がったのです!



 ※※※※※※※



 店員さんからブラを渡され、試着室におねえちゃんと二人きりになったのです。


「さっ貴音ちゃん、さっそく着けてみようか」

「おっおねえちゃん、貴音の着替えを見ないでほしいのです……出ていくのです」


 おねえちゃん、絶対にヘンなこと考えているのです。


「おい、さっきまで人の着替えをまじまじと見ていたヤツが言うな」

「うぅっ」


 貴音もヘンなこと考えていたのです……反論できないのです。


 おねえちゃんが「まず最初はコレ」と言って渡してくれたのは……あれ?


 ――これ……ブラじゃないのです。


「えっ、これはキャミソールなのです。貴音が着けているのと変わらないのです」

「そう思うでしょ? ところが違うんだなー」


 え? 何が違うのですか? 貴音はブラがしたいのです。


「貴音ちゃん、この前おっぱいの先端がチクチクするって言ってたよね?」

「う……うん、するのです」

「その痛みを抑えてくれるんだよ」


 ホントだ! よく見たら胸のところが二重になって柔らかいのです。そして、初めておねえちゃんとお風呂に入ったとき「おっぱいの先っちょがチクチクする」と言ったのを、おねえちゃんは覚えていたのです。


「それとね……これから夏服になって今のキャミのままだと……先っちょがポチっと目立っちゃうんだよねぇ」

「えっ?」

「つまりね……周りの人がみーんな、貴音ちゃんのおっぱいの先っちょがどこにあるのかわかっちゃうんだよぉ~、もちろん男の子からも……」


「そそそっそれはイヤなのです!」

「でしょ? このキャミはそれを隠してくれるの……ところでサイズはどう?」

「うーん……ちょっときついのです」


 きついというか……何か全体的に落ち着かないのです。


「えっ、じゃあ試しにこっちも着けてみる?」


 次におねえちゃんが渡してくれたのは、一段階上のブラだそうなのです。しかもキャミの形ではなく、タンクトップの上半分みたいなブラなのです。

 ホックも肩ひももなく、ちょっと貴音が思っていたのと違うのです。でもおねえちゃんのブラと同じように胸のところが厚くなっているのです。そういえば着替えのとき、何人かこれと同じようなブラを着けていたのです。


「すき間があったらダメだよ、全体的に包み込む感じで……」


 ――こっ、これなのです! なんか胸の辺りが落ち着くのです。


「うん、貴音はこっちの方がフィットするのです! これがいいのです」

「あっそう? でもこれってブラジャーの形だけど……体育の着替えとかで恥ずかしかったらキャミの方が……」

「貴音はこれが着たいのです」

「えっ?」

「ほとんどの友だちはブラを着けているのです。貴音もブラが欲しいのです!」


 確かにおねえちゃんが言うように、小学校のとき一番最初にブラを着けてきた子は、体育の着替えでとても恥ずかしがっていたのです。

 でも今はほとんどの子がブラを着けているのです。だからブラを着けていない貴音の方がとても恥ずかしいのです。しかも……


 一段階上のブラが合っていた……てことは、貴音のバストサイズは自分が思っていたより一段階上だったのです! 何か自信が出てきたのです!


「おねえちゃん! 貴音は一段階上のサイズがピッタリだったのです! だから貴音はA……もしかしたらBカップなのです!」

「あ、あぁ……そうだね」


 おねえちゃんはニコッと笑ってくれたのです。でも何か笑顔が引きつっている感じにも見えたのです。


「でもおねえちゃん、貴音はちょっと不満なのです」

「えっ、何で?」

「このデザイン……白一色で地味なのです。貴音はおねえちゃんと同じ、お花の柄が入った赤や青色のブラがいいのです」


「おい、そんなの学校に着て行けるワケねーだろ! まだ()えーよ」


 調子に乗りすぎた貴音はおねえちゃんに怒られたのです……くすん。

貴音なのです。一段階って……バストサイズのことじゃないのですか!?

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