表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
278/316

妹が男の子からデートに誘われた(いづみside)

 



 それは……突然やって来た。




 ある日の夜、私は自分の部屋で大学に提出するレポートを書いていた。こう見えてちゃんと勉強はしている。そこへ部屋のドアをノックする音……ではなく、


「こんこん、入るのです」


 ノックする音を真似て話しかける者がいた……妹の貴音(たかね)ちゃんだ。


「おーどうしたのこんな時間に?」


 もう夕食も風呂も済ませ後は寝るだけの時間。こんな時間に妹がやって来るということは……他所の一般家庭同様、勉強教えてほしいか一緒にゲームをしたいか私のおっぱい揉ませてほしいという要求のどれかだろう。ま、最後の要求は一般家庭じゃありえないことだろうけど……。


「おねえちゃん、折り入ってご相談があるのです」

「えっ、改まって何?」


 何だ、相談か……妹は中学生、いろいろな悩みごとが出てくる年頃だ。だがマイペースで精神年齢は小学校低学年レベル(推定)の妹のこと、きっと大したことではあるまい。


「おねえちゃんの剣道着は何で臭いのですか?」

「……ケンカ売ってんのかなキミは」


 ほーらやっぱり! どうせこんなくだらないことだと思った。だがこの後、完全に油断した私へとんでもない「爆弾」が投下される。



「今日、貴音は()()()からデートに誘われたのです」



 ふーん、そうなんだ! ()()……


 ――えっ!?


 ――えぇっ!?



 ――えぇええええええええっ!?



 男の子から……デート!?


 〝ガタガタッ〟


 あまりの衝撃発言に、私は思わずイスから崩れ落ちてしまった。


「おねえちゃん、どうしたのです?」

「い、いや……何でもないよ」


 何でもないことはない! これは一大事だ!! まだ恋というものすらまともに理解していないであろう精神年齢小学校低学年レベル(推定)の妹の口からまさかの男の子!? デート!? これは寝耳に水……いや、寝耳にドライアイスを入れられたくらいの衝撃だ!


「どっどどどどういうこと? ちょっと詳しく教えてもらえるかな?」

「はいなのです、実はかくかくしかじか……」

「いやいや、かくかくしかじかって言われてもわからん!」


 妹は相変わらずの平常運転、しかし私にとってこれは超災害級の出来事だ! 話によると妹は今日、学校で「ラブレター」をもらったらしい。

 本人は「果たし状」と言っていたが、話の内容からしてラブレターで間違いないだろう……妹は思考回路がちょっとめんどくさい。

 相手は「アメハタ」とかいう近所に住む妹の幼馴染みで、その男の子と夕方に公園で会っていたそうだ。そこで今度の週末、妹はデートに誘われたとか……。


 普通の姉なら、妹に彼氏ができたといったら喜んで応援するだろう。だが私は妹のことが「性的に」好きだ! 妹がノンケという暗黒面(ダークサイド)に堕ちそうになったら全力で救出に入らなければならない! ちなみにその少年は剣道部だそう……完膚なきまで叩きのめしてぇ!

 でも……私が「そっち系(レズビアン)」だということは妹を含め尾白(おじろ)家には内緒だ。バレたら私は間違いなくこの家族から永久追放されるだろう。なので仕方ない、妹の相談に乗ってやることにした。



 ※※※※※※※



「おねえちゃん、デートってどのようにすればよいのですか?」


 ――私に聞くな!


 私は男のことが大大大大大嫌いだ! デートどころかまともにしゃべったことすらない。でもまぁ、高校時代に平井(ひらい)(なごみ)や数人の女子とはデートしたことがあるからそのときの経験なら話せるだろう……男役(タチ)目線だが。


「うーん……まず服装はあまり子どもっぽくない、かといって行き過ぎた格好でなきゃいいんじゃない? 貴音ちゃんだったら普段着ている服でいいと思うよ」


 私の場合は初デートでいきなり勝負下着を着けていったが……。


「あと、キミたちは中学生なんだから……過度なスキンシップは控えなさい! 特にその……相手の男が触ってきたら毅然とした態度で断ること!」

「わっ、わかったのです! おねえちゃん、何か圧がすごいのです」


 私が大嫌いな男に妹をベタベタ触らせるワケにはいかない! しかしそういう私は初デートでいきなり一戦交えちゃったけどな……。ま、たぶんゴム付けろとかそういうレベルじゃないと思うけど……そういや重要なこと聞くの忘れてた。


「と、ところでさ……その、二人は付き合うことになったの……かな?」

「剣で突き刺したりとかはしてないのです」

「いや、そういう突きじゃなくてね……」


 ひとまず安心……でもこの初デートで告白とかあったらどうなるんだろう?


「ありがとうなのです! 参考になったのです」

「いえいえ……あっ、ちなみにどこ行くか決まってるの?」

「市立動物園なのです! さっきニャインで連絡があったのです」


 動物園か……何か子どもっぽいチョイスだけど、妹は動物好きだからいいのか。



 ※※※※※※※



「それじゃ、おやすみなのです……ちゅっ♥」


 妹は私と「おやすみのキス」をすると自分の部屋へ戻っていった。うぅっ、あの唇が他の知らねー男に奪われてしまうのか!?


「はぁ……」


 独りになった私は一度大きくため息をついてからベッドに飛び乗ると、枕に顔をうずめて感情を爆発させた。


 ――うわぁああああああああっ!!


 何てこった! 恐れていたことが現実になってしまった!


 今年に入ってから和に忠告されていた。他の「誰か」に奪われる前に妹へ告白しろと……だがこれからの関係性を考えた私は告白することを躊躇していた。


 ――その結果がコレだ!!


 でもまぁ仕方ない。生物学的に考えれば昔から「女」と付き合うのは「男」と相場が決まっている。

 よく百合小説やマンガなんかで、当たり前のように女と女が魅かれあったりしているが実際はそんなご都合主義設定じゃない……少数派(マイノリティ)だ。やっぱ将来はノンケという多数派(マジョリティ)になるであろう妹に手を出すのは無理だったのかも。


 ――あぁっ、でもなぁ!


 去年の四月に出会ったとき、私はこの子に一目惚れしてしまったんだよぉ! 今まで付き合ってきた「彼女」と違う、純粋無垢で透明感のある瞳に一目惚れしてしまったんだよぉ!

 その後も「継姉と継妹」として一緒に生活したが、妹の天真爛漫(一部天然)なキャラクターにどんどん魅かれていった。

 このまま姉妹としてではなく、人生の相方(パートナー)としてずっと一緒に居たいのだが……やっぱり妹の幸せを考えるとこの選択肢がいいのかなぁ……。


 ――いや、でもまだ諦めたくはない!


 まだ妹はその男と付き合うと決めたワケじゃない! (こっち)に来る可能性だってゼロじゃない! もし仮にそいつと付き合ったとしてもまだまだ中学生! 将来的に別れる可能性(チャンス)はあるだろう……となれば()トライもできるはず! ま、妹の体に他の男の手垢が付くのは正直嫌だけど。


 そういや妹のデートは週末、市民動物園だと言ってたな? ここはひとつ、妹に手を出そうとする相手のクソガキ(←決めつけ)がどんなヤツなのか確認する必要があるだろう。そしてもし、妹に対して肉体的に手を出してきたら体を張って阻止してやる!


 そういや物置に木刀があったな……(※真似しないでね)。

貴音なのです。おねえちゃん、それは絶対やったらダメなのです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ