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貴音は雪遊びがしたいのです(貴音side)

 



「わぁ……」




 金曜日の朝……貴音(たかね)が部屋のカーテンを開けると、いつもの風景が真っ白くなっていたのです……


 ……最高なのです♪



 ※※※※※※※



 貴音は雪が大好きなのです。雪が降ると外がとっても静かになるのです。その静けさにワクワクするのです!

 そして雪遊びができるのです! 雪合戦や雪だるま……貴音が住む街は雪がたくさん降らない所なのですが、それでも四年前に百センチを超える大雪が降ったときはお庭に念願の「かまくら」を作ったのです!


「行ってくるのです」


 明日はお休み、何をして遊ぼう? 雪、とけなきゃいいけど……貴音はワクワクしながら学校に行ったのです。


 あっ、道路にまだ踏まれていない雪が……貴音は誰も踏んでいない雪を踏むのが大好きなのです。



 ※※※※※※※



 貴音は学校に着いたのです。長靴をはいてきたのですが……下駄箱に入らないのです! 仕方ないので下駄箱の上に置いたのですが……あれ? 長靴が少ないのです。今日はこれだけの人数しか登校してないのですか?


「あっ貴音ちゃんおはよー」

「おはようなのです」


 教室に入ると(てん)ちゃんたちがいたのです……いつも通りの人数なのです。ただ様子が違っていたのは、天ちゃんたちが靴下を脱いで裸足になっていたのです。


「もうっ、靴下びっしょびしょ! 雪ってテンション下がるわー」

「それな! でも樹李(じゅり)タソは替えの靴下持ってるから大丈夫っす」

「私もそうすりゃよかったー、貴音ちゃんは……靴下濡れてない?」


 へっ!? まさかみんなこの雪の中を靴で登校したのですか? 確かに校則で白のスニーカーと決められているのですが、雨や雪の日は長靴もオッケーなのです。


「貴音は長靴だから靴下は濡れなかったのです」

「ダサッ! 貴音っち、長靴はいてきたっすか!?」


 えっ……長靴はダサいのですか!?


「小学生じゃあるまいし……」

「長靴は大人もはくのです」

「そりゃそうだけど……学校に長靴って何か恥ずいよねー」

「ねー」


 そうなのですか!? でもそれを言ったら教室で足を持ち上げて裸足になっている方が恥ずかしいのです。しかも、わざわざ濡れることがわかっているのにスニーカーはいてくるのも意味不明なのです。


「ところでみなさん、明日はお休みなのです!」

「知ってる」

「そこで提案なのですが……明日みんなで雪遊びをしたいと思うのです」


 ここにいる人の多くは小学校からのお友だちなのです。小学生のときはみんなでよく雪合戦や雪だるまさんを作って遊んだのです!


「い、いや……それはちょっと……」


 ――えっ!?


「外、寒いっす」

「子どもじゃないんだからさー」


 中学一年生は子どもなのです! 確かにみんなは十三歳、早生まれの貴音は十二歳なのですがどっちもまだ子どもなのです!



 ――あれ? いつからみんな……こんなに変わったのですか?



 ついこの間まで、ピンクや黄色のゴム長靴はいて登校したのに……校庭で雪合戦したり雪だるまさん作ったのに……

 貴音は置いてけぼりを食らった気分なのです……悲しいのです。この日の授業は全然頭に入らなかったのです。


 ……授業が頭に入らないのはこの日だけじゃないのです。



 ※※※※※※※



 学校から帰る時間も雪が降り続いていたのです。家の前まで来ると


「あっ、貴音ちゃんお帰り」


 ママさんとおねえちゃんが家の前で雪かきをしていたのです。パパはたぶん、家の中でお仕事中なのです。

 近所の人たちも雪かきをしているのですが、パパはいつもお仕事を理由にして参加しないのです。だから今まではご近所付き合いがなかったのですが……


尾白(おじろ)さんもいいわねぇ、こんな働き者の奥さんと立派な娘さんができて」

「あらやーね! ほめても何も出ないわよ」

「娘さんもキレイよねー! ウチの息子の嫁に来ない?」

「あ、あはは……」

「えー私の方がイイ女だよー! 嫁に行こうかしらー!?」


 ――ママさん、張り合おうとしないのです。


「貴音もお手伝いするのです」

「大丈夫だよ、もうすぐ終わるから」


 よく見ると道路の脇や家のお庭に大量の雪が捨てられていたのです……もったいないのです! これだけあればとっても大きな雪だるまさんが作れるのです。



 ※※※※※※※



「あー疲れたー!」


 貴音はおねえちゃんとコタツに入ってミカンを食べていたのです。やっぱりコタツにはミカンなのです。でもこの時期のミカンは皮が厚く、種が入っていて食べにくいのです。


「おねえちゃん、折り入ってお話があるのです」

「ん? 何だよ急に……」


 天ちゃんたちが遊んでくれないので、貴音はおねえちゃんにお願いしてみるのです。でもおねえちゃんは大学生……大人なのです。だから雪遊びに付き合ってくれるなんて……期待薄なのです。


「明日はお休みなのです。だから貴音と遊んでほしいのです」

「えっいいけど……ゲームか? できればボードゲームがいいんだけど……」


 おねえちゃんはオセロみたいなボードゲームは得意なのですが、TVゲームが大の苦手なのです。おねえちゃんは自分の得意分野に引き込もうとしているのです。でも今回はボードゲームでもTVゲームでもないのです!


「おねえちゃんと雪遊びがしたいのです」

「雪遊び? 雪かきしちゃったよ」

「お庭に雪が残っているのです」

「あぁ、あれは明日雪かきする予定だけど……」


 えっ、お庭も雪かきするのですか!? パパは何もしなかったので、今までお庭は雪遊びをやりたい放題だったのです。


「じゃあ雪遊びは?」

「ムリムリ、雪かきで疲れるし……」


 やっぱり断られたのです。


 貴音は……わかったのです。


 大人は……雪がキライなのです。


 天ちゃんたちも……少しずつ大人になっているのです。



 貴音も……いつかは雪がキライになるのです。



 ※※※※※※※



 次の日なのです。貴音は朝早くからお庭に出てきたのです。


 雪は昨夜のうちに降り止んだのです。お日さまが出ると雪が融けてベチャベチャになり遊べなくなってしまうのです。だから早いうちに遊ぶのです。


 貴音は雪だるまさんを作り始めたのです。ひとりでは雪合戦ができないからなのです。雪が少ない地域なので、小学生のとき校庭で作った雪だるまさんは泥だらけでまっ黒だったのです。でも貴音の家のお庭は芝生になっているので、そこまで汚い雪だるまさんにはならないのです。


 ――うぅっ! 冷たいのです!


 最初に雪だるまさんの「芯」を作るのですが、手袋していると上手く作れないのです。貴音は手袋を外して素手で雪玉を作ったのです。とても冷たいのですが、雪を肌で感じられるのです。

 できあがった雪玉を転がして雪だるまさんを作り始めたのです。どんどん雪玉が大きくなっていくのが楽しいのです……が、


 やっぱり独りで遊ぶのはさびしいのです。でもそのとき!


「貴音ちゃん!」


 おねえちゃんがやって来たのです。えっ、もう雪かきをするのですか?



「一緒に遊ぼうか?」



 おねえちゃんは貴音と一緒に遊んでくれるのです!


「はいなのです♪」


 貴音は……おねえちゃんが大好きなのです♥


貴音なのです。靴下が濡れてしまうと悟りの境地になるのです。

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