貴音はおねえちゃんを避けたのです!(貴音side)
――おねえちゃん……ゆるさないのです!
貴音は志麻おねえちゃんから「一口チョコのおまじない」を教わったのです。家に帰ってさっそくやってみたのですが……貴音がおトイレへ行っている間におねえちゃんがチョコを食べてしまったのです!
残ったチョコでは名前がそろわなかったのです。貴音はおねえちゃんがゆるせないのです! しばらくおねえちゃんとは口をききたくないのです!
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「貴音ちゃーん、一緒にテレビ見ない?」
夕ご飯の後、貴音はおねえちゃんからテレビを一緒に見ようと誘われたのです。
「…………ぷい」
でも、貴音はおねえちゃんの誘いを無視したのです。
「貴音ちゃん、録画してないよ! いいの?」
「……部屋で見るからいいのです」
よくないのです! 本当はおねえちゃん(のおっぱい)と密着してテレビを見たいのです! でもおねえちゃんのことをゆるさない貴音は後ろ髪を引かれる思いで断ったのです……お坊さんにはわからない感情なのです。
貴音は部屋のテレビでドラマを見たのです。ドラマが終わると
「貴音ちゃん、一緒にお風呂入る?」
今度はおねえちゃんがお風呂に誘ってきたのです。おねえちゃんのおっぱいが好きな貴音はいつもなら「入るのです♥」と言うのです。でも……
「ひとりで入るのです……えっち、ヘンタイ!」
おねえちゃんがゆるせない貴音は断腸の思いで断ったのです……実際はお医者さんにしか腸を切ることはできないのです。
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それから数日たった日の朝なのです。
――うをっ!
朝食を食べ終わった貴音は、またまた一口チョコを発見したのです! まるで宇宙戦艦の第三艦橋のような復活の仕方なのです! きっとママさんはこんなこともあろうかと買い足していたのです。
「ママさん! この一口チョコを食べてもよいのですか!?」
「……」
あれ? ママさんから返事がないのです。ママさんは後片付けで忙しく、聞いていなかったのかもしれないのです……が、ちゃんと伝えたのだから、もう一度おまじないに使うのです!
でも今は、学校に行くのでそんな時間はないのです! しかもここへ置きっぱなしにすると、またおねえちゃんに食べられてしまうのです! なので貴音はチョコの袋とお皿を持って自分の部屋へ戻ったのです。
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「ただいまなのです」
学校から帰ってきた貴音は、すぐ異変に気付いたのです!
「お帰り! あっ貴音ちゃんちょっと待って」
「だだだだだっ!」
おねえちゃんが先に帰っていたのです! おねえちゃんは貴音を呼び止めたのですが、おねえちゃんがゆるせない貴音は無視して部屋へ逃げ込んだのです。
――あっ!
貴音はクララと会えなかっことに気がついたのです! おねえちゃんがリビングにいるので近づけなかったのです! おねえちゃんはクララを人質……ワンコ質に取ったのです! おねえちゃん、卑怯なのですぅううううっ!
――こうなったら……クララ奪還作戦を実行するのです!
貴音は階段の上からずっと下を監視していたのです。おねえちゃんはずっとリビングにいるのです。でも……
おねえちゃんはずっとリビングにいられないのです。きっとおトイレに行く時間があるのです! しばらくするとおねえちゃんがおトイレに入ったのです!
――今なのです!
「そ~っ」
貴音はリビングに忍び込んだのです。おねえちゃんに監禁されたクララは、貴音の顔を見るなり
「わんっ」
と吠えたのです! あっバカッ、今は静かにしているのです! 貴音はクララをケージから出したのです。と、そのとき……
「貴音ちゃん!?」
キッチンにいたママさんに見つかってしまったのです! こっここで何か用事を言いつけられたらおねえちゃんとカイ……じゃなかったハチ合わせするのです!
「今夜はハンバーグだから、お菓子とか食べすぎないようにね!」
――ほわわっ! ハンバーグは貴音の大好物なのです♥
「わっ、わかったのです」
貴音はクララを抱きかかえると、急いで自分の部屋へ向かったのです。
※※※※※※※
――やった! やったのですぅううううっ!
クララを自分の部屋へ連れ込むことに成功した貴音は、さっそくクララと遊んだのです。でも一階にはおねえちゃんがいるので、散歩に連れて行けないのです。
遊び疲れたクララはベッドの上で寝てしまったのです。その間に貴音は一口チョコから『TAKANE』と『IZUMI』で使われるアルファベットを探したのです。
今度は大袋なので、アルファベットがそろうハズなのです。そして前回の反省から貴音はZ(N)やM(W)が見分けられるようになったのです! しばらく探していると、貴音の予想通り全てそろったのです! でも……
貴音はおねえちゃんがキライなのに、なぜ今「好きな人」としておねえちゃんの名前をそろえているのか……自分でもわからないのです。
チョコが余っていたので、貴音はクララの名前も探してみたのです。ローマ字なので「KURARA」なのです。
TAKANEで「A」を使い過ぎたから不安だったのですが、何とかそろえることができたのです! でも……あれ? Rのひとつが逆向きの「Я」なのです! こっこれは何なのですか!?
さてと……全てそろったのでさっそく食べるのです! 貴音がそろったチョコを食べようとしたとき、
「貴音ちゃーん、ご飯だよー!」
ママさんの声がしたのです……そうだったのです! 今夜は貴音の大好物、ハンバーグなのです! ここでチョコを食べたらハンバーグが食べられなくなってしまうのです!
「クララ! ご飯を食べに行くのです」
貴音はクララを抱きかかえると食卓に向かったのです。
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「いただきますなのです」
貴音はママさんの作ったハンバーグを食べたのです。ママさんの作る料理はどれもおいしいのです。
おねえちゃんが貴音に話しかけてくるのです。貴音の大事なチョコを食べたおねえちゃんは悪い人なのです! おねえちゃんなんかキライなのです!
でも……さっきアルファベットがそろってしまったので、何かどうでもよくなってきたのです……しかし!
今は引くに引けなくなってしまったのです! 今の状態では「おねえちゃん、大好きなのです♥」などと態度を急に変えることはできないのです!
「……ごちそうさまなのです」
貴音はご飯を食べ終わると、すぐに自分の部屋へ戻ったのです。
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部屋に戻った貴音は、さっきそろえたチョコをもう一度見たのです。TAKANE、IZUMIそしてKURAЯA……何かクララだけつづりが変なのですが、お皿の上には十七個のチョコが並んでいるのです。
ハンバーグを食べてお腹いっぱいなのですが、チョコはお菓子……デザートなのです! 昔から「デザートは別腹」という格言もあるのです! 貴音はがんばって食べようとしたのです。すると誰かが部屋のドアをノックしたのです。
〝コンコンッ〟
「貴音ちゃん……いる?」
――おねえちゃんがやって来たのですぅううううううううっ!
貴音なのです。あのチョコレートには「レア文字」があるのです!




