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私は妹から避けられている?(いづみside)

 



 最近……妹の様子がちょっとおかしいのだが。




 どこかのマンガのタイトルではない。妹の貴音(たかね)ちゃんが本当に変なのだ。



 ※※※※※※※



「貴音ちゃーん、一緒にテレビ見ない?」


 ある日の夕食後、私はいつものようにリビングでお気に入りのテレビドラマを見ようと妹を誘った。いつもならコタツに隣同士で座って一緒に見るのだが……


「…………ぷい」


 妹はそっぽを向いてリビングから出ていった。えっ、何で!?


「貴音ちゃん、録画してないよ! いいの?」

「……部屋で見るからいいのです」


 ――断られたぁああああっ!


 いつもなら体を密着させて妹の体温を感じながらドラマ見るのに! 妹も「おねえちゃん、あったかいのです」と言って喜んでいたのに……何で!?


 妹がヘンになった。あ、妹が擬音を口に出すのはヘンではなく平常運転だ。


 ドラマを一人寂しく見終わった私は、妹をお風呂に誘うため部屋に向かった。


「貴音ちゃん、一緒にお風呂入る?」


 いつもなら妹は即答で「入るのです♥」と言う。妹は三度の飯より私との入浴を好む……いや、正確には入浴中に私のおっぱいをずっと凝視するのが目的だが。

 そういう私も妹のハダカを堂々と見られる……ウインウインの関係だ。最近はバイト続きで一緒に入る機会がなかった。こんな好条件、妹が断るハズがない! そう思っていたのだが……


「ひとりで入るのです……えっち、ヘンタイ!」


 ――えぇええええっ! またも断られた。


 しかも! いつもなら「もう! おねえちゃんってヘンタイおっぱいさんなのです♥」と言いながら顔がニヤけている妹なのだが、無表情で「ヘンタイ」って……だだの罵りじゃねーか!?



 ――いっ、一体どうしちゃったんだよ妹はぁああああああああっ!?



 ※※※※※※※



「と、いうことがあったんだが……」


 翌日、私は昨夜の出来事を友人で元カノの平井(ひらい) (なごみ)に話した。


「あら~そうなの~!? てかいっちゃんてば~貴音ちゃんとお風呂一緒に入ってるんだ~……ヘンタイ」


 オマエにだけはヘンタイ呼ばわりされたくない。


「べっ、別に姉妹なんだからいいだろ!?」

「いっちゃんの場合は~男扱いだから条例違反よ~」

「何の条例だよ!?」


 ここは大学のカフェテリア……学食とも言うが。和とはここで一緒に昼食をとることが多い。私はA定食にサラダ追加、和は……ステーキ丼、しかも単品メニューでカキフライまで追加してやがる。

 昼間からステーキを食べるとき和は確実に夜、男と会う。私とは別れた今でもセフレとして関係が続いているのだが、最近はコイツの体から大嫌いな男の臭いがしてくるような……もうコイツ抱くのやめようかな。


 そんな性欲モンスターに私の悩みを打ち明けると、コイツの口から何やら聞いたことのないワードが飛び出してきた。


「それってさ~、たぶん『好き避け』じゃないのかな~!?」


 ――すき鮭!?


 私は鮭が好きだ。今食べているA定食も焼き鮭がメインなのだが……すき鮭って何だ? 鮭のすき焼きか?


「ごめん和、そんな料理名は聞いたことないのだが」

「何でこの会話の流れに(salmon)が遡上してくるのよ~!? 『避ける(avoid)』の方よ~!」


 ……避ける? えっ私、妹から避けられているの!?


「私……何か悪いことでもしたのか? それと『すき』ってどういう……」

「ちょっと~そこまで言わせる気~!? も~いっちゃんたら、こういうことに関してほんっっっと鈍感よね~!」

「なっ、何だよ鈍感って!?」


 和は明らかにムスッとした顔でステーキ肉を頬張ると


「貴音ちゃん……いっちゃんのことが好き~ってことよ!」

「えっ!? だったら何で私のこと避けるんだよ?」

「ほんっとソレ! ムカつくわ~この男子脳!」

「だっ、男子脳!?」

「あのねぇ~……アナタと違って普通の女の子は~好きだという気持ちを相手に悟られないよう、わざと素っ気ないそぶりを見せたり~目線を合わせなかったりするものなのよ~!」


 そっ、そうなのか!? ってか和、ステーキ食ったせいかヤケに攻撃的だな。


「ま~そういやそうよね……いっちゃんってば高校時代、私に対して最初の口説き文句が『やらせろ』だったもんね~! も~デリカシーの欠片もない……」

「さすがにそれは言ってねーわ!」


 つーか妹は常日頃から私に「好き」って言ってるが、何で今さら……?


「わかってないわね~! いっちゃんのこと本気で好きになったのよ! LIKEじゃなくてLOVEよ~きっと」


 ――えっ、えぇええええええええっ!? マジか!?


「でも! だからと言って恋愛初心者の貴音ちゃんに告らせるのは酷よ~! いっちゃんだって……ううん、いっちゃんの方こそ妹LOVEなんだから~アナタから告りなさ~い!」


 おい、告らせるのは酷ってダジャレか!? つーか和、思いっきり目が据わってるんですけど……こっ、怖っ! こんな怖い和は初めて見た!


「あ~もぅ今日は男と会う気分じゃなくなってきた……キャンセルしよ~っと」


 予想が当たった……やっぱ和、男と会う予定だったんだ。


「新しい男……か?」

「そっ、マッチングアプリで知り合った六十代のイケオジ~!」


 コイツ……男女問わず下は小学生でもオッケーだと以前言ってたような……振幅広過ぎ! つーか下は確実に犯罪だぞっ!


「いっちゃ~ん! 貴音ちゃんが避けている以上、アナタが正面から向き合わなければダメよ~!」


 和はステーキ丼を食べ終わると席を立った。


「あれ? まだ午後の授業には早……」

「そんな気分じゃないわ~! あっそうだ~! 一つ思い出したことがあった~」

「?」


「よく考えたら~いっちゃんの鈍感っぷり、高校から変わってないわ~」

「……なっ!」

「いいこと教えてあげる~! 高校のとき~いっちゃんに本気で抱かれたいと思ってた子……たぶんいっちゃんが思ってる十倍くらいはいたわよ~」


 何だって!? 私は高校時代「そういう関係」を持ったのは和を含めて四人いたがその十倍って……ひとクラス分もいたってことか!?


「でも~鈍感ないっちゃんは~彼女たちの出す『サイン』に全然気がつかなかったのでした~! ざ~んねん♪ じゃあね~」


 和は勝ち誇ったような笑みを浮かべると意気揚々と学食を後にした。まるで今までの私に対する不平不満を全て吐き出したかのようにスッキリとした顔で……。


 うわぁ、後悔先に立たず! 薄々感づいてはいたが、私って実は鈍感……そして恋愛下手なんだなぁ。それにしても……まだ和の憶測とはいえ、妹が私に気があるとは想像だにしなかった。

 まぁでも、まだまだ子どもだと思っていた中学一年生ももうすぐ終わり、性とか恋愛に興味を持つ年になるのにそう時間はかからないだろう。


 妹よー! ついに「こっち」の世界へ足を踏み入れたかー!? お姉さんはウエルカムだぞー♥


 だが和の言う通り……妹の気持ちに気付いたからといって、向こうから告らせるというのはあまりに卑怯なやり方だ! ここは私から告白するのがスジというものだろう。


 ――決めた!


 今夜、私は……妹に告白する!


貴音なのです。次回に続くのです。

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