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【番外編】アタシは……自分がキライな自分がキライだ(芭蕉side)

 



「バナナちゃん、普通って……何?」




 アタシのことをカワイイ……などと言い放った「なごみ」という女に、アタシはフツーじゃない自分のことがキライだと告げた。するとこの爆乳ヘンタイ女はあろうことかフツーとは何? などと聞いてきやがったのだ!


 ちょっ待てー! コイツはフツーっていう言葉も知らないのかー!? どーりでさっきからフツーじゃ考えられない非常識な言動が多いと思ったわ!


「はぁ!? フツーって言葉がわからないんですか?」

「えっ……あ~そういうこと~? ごめんなさ~い、聞き方が悪かったわね」


 この爆乳女はアタシのイヤミな言い方に対して、眉ひとつ動かすことなくニコニコしながら答えていやがる……何かムカつく。


「じゃ~質問を変えるわね~! 普通と~そうじゃないの~って……境界線はどこなのかな~?」


 ――えっ!? 境界線?


 まさかの質問にアタシは戸惑ってしまった。そんなの……考えたことねーよ!


「そっ、それって……感覚的なモノだからフツーは線引きなんてしませんよ」

「そうね~それが正解! 普通っていうのは~いわゆる最頻値のことで~ヒストグラムにおいて最も多い値のことだよね~!?」


 えっ最頻値? ヒストグラム? そういや数学で習ったかもしれないが、なんでそんなムズイ言葉を……コイツ、見た目がバカっぽそうな爆乳女なのに!


「でも最頻値って~全てが同じ値じゃないよね~!?」

「……?」

「同じカテゴリーでまとめられてるけど~そこに含まれるデータの一つ一つは~ほぼ全て違うってこと! つまりバナナちゃんが言うところのフツーっていうのは~線引きしない限りどこまでがフツーという範疇(カテゴリー)なのかわからないのよ~」

「……」

「じゃあ聞くけど~杏ちゃんとか柚子ちゃんってキラキラネームかな~!? バナナちゃんと同じ果物の名前なんだけど~どこからがキラキラネームと呼ばれるんだろうね~? 人数? だったら人口十万人当たり何人以下かな~?」

「そっ、そんなの! わかりませんよ……」


 ――何てヤツだ!? アタシの「こだわり」を一瞬で論破しやがった!


「そう、バナナちゃんが言った通りフツーっていうのは~感覚的に決められた目に見えないカテゴリーなの! だから~そんなものにこだわるのは時間の無駄よ~」


 そう言うと爆乳女は一枚の紙をアタシに差し出した。


「実はね~私、今は短大の一年生だけど~来年になったら自分の会社を立ち上げる予定なの~……起業ってヤツよ~」


 へっ!? 何で今そんな話を? つーか起業って……あっ! そういや本屋で見かけたとき、ビジネス書のコーナーにいたよな……何なんだよコイツ?


「でもね~……世の中には~こういうことをすると『女子大生が社長とか調子に乗んな』とか~『学生は勉強に集中しろ』って言う人は必ずいるのよ~……出る杭は打たれるってヤツかな~」


 ――そうだよ! だから目立つことなんて……


「でも私は全然気にしないわ~! 代案や根拠のない批判なんて~相手にするだけ無駄だもの~! だからバナナちゃんも~もし将来的に何か言われたとしても気にしちゃダメよ~!」


 〝ドキッ!〟


 アタシはこの爆乳女の顔を見て思わずドキッとした。エラそうに語っているその目に一点の曇りもない……自身に満ち溢れた目だったからだ!


「さっき私はバイ(セクシャル)って言ったけど~実は公言してるのよ~」


 ――おい、せっかく尊敬の念を抱きそうになったのにまたその話かい!?


「えっ、それって平気なんですか?」

「もちろん~嫌悪感を示す人もいるわ~」


 ――ここにも一人いるけどなー!


「でもね~これも同じ! 遺伝子は全て違うんだから~色んな人がいるのは当然のことなの~! 大事なのは~それを認めるか認めないかということ! まぁ認めない……っていうのも個性だから~暴力的に相手を封じ込めない限り何やっても自由だと私は思うわ~」


 ――コッコイツ! いや……この人、もしかしたらスゲー人かも?


「あっでもね! いっちゃん……貴音(たかね)ちゃんのお姉さんは公言していないから~、このことはナ・イ・ショにしてね~!」

「あ、はぁ……」


 もしかしてアタシはとんでもねー秘密を握ったのか!? まぁでも、この人や尾白のお()ーさんを色眼鏡で見るのはやめよう。


 あれっ、そういえば……さっき渡されたこの紙って何だ?


「あ~それ? 名刺よ~」

「名刺?」


 かなり個性的なデザインだから名刺に見えなかった。


「まだ起業してないけど~色々と準備が必要だからね~」

「はぁ……?」

「何かあったらそこに連絡してね~! 相談に乗るわよ~」


 食事を終え、約束通り支払いは「未来の社長」が済ませてくれた。


「あ、支払いはカードで~」


 財布の中から出てきた「黒いカード」にドン引きしてしまったが……。



 ※※※※※※※



 食事を終えたアタシは夜風に吹かれながら和さんと大通りを歩いていた。和さんはタクシーで送ってくれると言ったが、アタシの家はそこまで遠くない場所なので遠慮した……


 ……というのは建前! 本音はタクシーでホテルに連れ込まれたら逃げ場がないので、いざというとき逃げられるよう歩いて帰ることにしたのだ!


「そういえば和さん! ストックの使い方……ウソ教えましたよね!?」


 初めのうちは文句を言う……つまりケンカする覚悟だったのでなかなか言い出すことができなかったが、今はだいぶ打ち解けたので雑談の最中に思わずスルッと出てしまった。


「あら~バレちゃった~!?」

「バレますよ! おかげで大恥かいちゃいましたよー」

「いいじゃな~い、さっきも言ったけど~バナナちゃんのおっぱいは長所よ~」

「いやーでも大変なことばかりですよー」

「それはわかるわ~! でも~男の子には絶対モテるから……」


 と言って和さんはアタシの後ろに回り込むと、肩を掴んで……


「は~い! だから~背中を丸めな~い!」

「うわっ!」


 いきなり背筋をピンと伸ばされた。


「バナナちゃんはもっと堂々としなさ~い! 肩こりの原因にもなるわよ~」


 和さんには敵わないなー! アタシは素直にそう思った……と同時に、アタシは何て小せーことにこだわってるんだろーかと自分を反省した。



 ――アタシは……「自分がキライな自分」がキライになってきた。



「あっそうだ~バナナちゃ~ん!」

「はぃ?」

「バナナちゃんが~高校や大学を卒業して就職先に困ったら~いつでもウチ(の会社)で雇ってあげるからね~!」


 おいおい! もう自分の会社がアタシを雇えるほど大きくなってると想像してんのか!? まぁでも……この人ならやりそうだ。そこでアタシは、この最強チートキャラに聞いてみた。


「もう! 和さんって怖いものナシですよねー!?」

「あら~そんなことないわよ~」


 ――えっあるのかよー!? ちょっと興味がわいてきた。


「えっ、何ですかー!?」

「それはちょっと……言えないな~!」


 そんな会話を続けていたとき……アタシはあることを思い出した。


「この近くに尾白の家があるけど……ちょっと寄っていきませんかー?」

貴音なのです。次回はやっと貴音が登場するのです!

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