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後日談なのです(貴音side)

 



 貴音(たかね)たちがスキー&スノボーから帰ってきて二週間がたったのです。




 ここは放課後の図書室なのです。貴音とバナナセンパイは、またいつものように図書委員の当番をしているのです。


「オメーら……これ、お土産……」


「あ……ありがとうございます」

「ございます」

「パイセン、どうも……っす」


 いつものように(てん)ちゃんと(くう)ちゃん、そして樹李(じゅり)ちゃんも図書室へ遊びに来ていたのです。スキーのとき以来、仲良くなった貴音たち四人のためにバナナセンパイはお土産を買ってきてくれたのです。


 そう、二年生のバナナセンパイはスキー教室に行ってきたのです! そして貴音たち後輩のためにお土産を買ってきてくれる心優しいセンパイなの……ですが、


 ……スキー教室から帰ってきたバナナセンパイは機嫌が悪いのです。


 そもそもバナナセンパイはいつも機嫌が悪そうに見えるのです。でも実際はそうではなかったりするのですが、この日は確実に機嫌が悪い気がするのです。

 天ちゃんたちもそれを察してか、さっきからバナナセンパイの顔色をうかがっているのです。もちろん今日はセンパイの低身長やバナナという名前に対する「イジリ」は誰もしていないのです。


「……」


 全員が黙りこくっているので、今日の図書室はとても静かなのですが……本当はこれが普通なのです。図書室は静かにしなければいけないのです。

 でもいつもより静かな図書室に全員が違和感を持っていたのです。だからといって話を切り出せるような状況ではないのです。

 こうして一言も発していない状況が続き、誰が最初にしゃべりだすのか? 誰がボールを一塁に投げるのか……お互いを()()()し合っていたのです。すると、


「あーもうオメーら! 何で誰もアタシに『何かあったんですか?』って聞いてこないんだよー!?」


 この状況を作った「張本人」が耐え切れず最初にしゃべり出したのです。


「何かあったんですかー」

「棒読みかよ!? 何かあったからこんなんなってんだよ! オメーら興味ねーのかよ!? 聞きたくねーのかよ!?」

「……別に」

「澤尻工リ力かオメーは!? ってか古いわっ!」


 張本人(バナナセンパイ)通常営業(いつもどおり)だったので遠慮せずイジるのです。


「いつも通りで安心したのです」

「じゃあそろそろ帰ろうか?」

「帰ろうか?」

「パイセンお先っす!」

「こっこら帰るな―! アタシの話を聞いてけー!」


 バナナセンパイは……かまってちゃんなのです。



 ※※※※※※※



「で、何があったんですか?」

「ですか?」


 面倒くさいけど、バナナセンパイの話を聞いてやることにしたのです。


「いっいや、それはだな……その、アタシの口からは……」

「先輩お疲れさまでしたー」

「でしたー」

「パイセンばいびーっす!」

「ウソウソッ、アタシが悪かった! だからもうちょっと付き合ってくれー!」


 他に生徒がいなかったので、貴音とバナナセンパイはカウンターから天ちゃんたちが座る机に移動したのです。

 みんなが取り囲む中、バナナセンパイは机に肘をつき両手を組み……まるで碇ゲソドウのようなポーズでボソッと話し始めたのです。


「実はな……大恥かいたんだよ」


 ――大恥? ということは


「もしかして……リフトの身長制限に引っかかったのですか?」

子ども用ゲレンデ(キッズパーク)に連れていかれたとか」

「あっわかったっす! 新雪に体が埋まって遭難……」


「おい、アタシの身長が低いからってンなことあるかーっ!? だいたいこの間もリフト乗ってただろ!? それと何でガキどもと一緒にソリ乗らなきゃなんねーんだよ!? ってゆーか人工雪スキー場にたまたま降った数センチの新雪で遭難するかバカたれー!!」


 バナナセンパイは身長一三七センチなのです。それと、全員のボケに対し一つ一つツッコミを入れるマジメな人なのです。


「じゃあ……雪じゃなくてバナナの皮で転んだのですか?」

「迷子になって場内アナウンスで『バナナ()()()』と呼ばれた?」

「ま……まさか男風呂に入って♥男子のバナナ♥を見てしまったっすか!?」


「かーっ、オメーらバナナネタで統一してんじゃねー! 何でゲレンデにバナナの皮が落ちてんだよ!? 迷子の中学生を下の名前で呼ぶかー!? それとしっ、下ネタやめろー!!」


 バナナセンパイは顔を真っ赤にしてツッコミを入れていたのです。あと、最後の樹李ちゃんのボケは意味がわからなかったのです。


「ここは大喜利じゃねーぞ!」

「じゃあ……残る理由は」


 と言うと貴音たち四人はバナナセンパイの「ある部分」を見つめたのです。


「う゛っ、オメーらの視線が痛いが……まぁ正解だよ!」


 貴音たちはバナナセンパイの「おっぱい」を見つめていたのです。



 ※※※※※※※



「えっ!? おっぱいで大恥かいたのですか?」

「もしかして……おっぱい丸出しで滑ったとか?」

「するかっ! それやったら犯罪だわ!」


 でも何でスキーとおっぱいが……貴音たちは意味がわからなかったのですが、バナナセンパイの口から意外な言葉が出てきたのです。


「それはな……あの『爆乳女』のせいだ! くっそー、アイツめー!」


 ――爆乳女?


 爆乳女といえば……心当たりがあるのは「(なごみ)おねえちゃん」だけなのです。貴音のおねえちゃんは巨乳だけど爆乳ではないのです。

 バナナセンパイは和おねえちゃんからスキーを教わったのです……ある意味恩人なのです! その人に対してなぜか怒っているのです。


「実はな、あの後ストックの構え方がわからないって爆乳女(アイツ)に聞いたんだよ! そしたらアイツ、ストックはこうやって握って~」

「……?」

「胸の下にしっかりくっつけて~思いっきり持ち上げるのよ~、ってぬかしやがったんだよー!!」


 と言ってバナナセンパイはそのポーズを再現したのです。するとおっぱいが


 〝ぽよんっ♥〟


 と押し上げられ、バナナセンパイの巨乳がとても目立つ格好になったのです!


「スキー教室でコレやったらよー、男子からは()()()()で見られ女子からは()()()で見られ……気付いたときは雪洞掘って一生冬眠したい気分だったわー! もっもうおヨメにいけねーよぉ! くっそーあの爆乳女! 責任取りやがれー!」


 どうやらバナナセンパイは、怒りを全部吐き出したようなのです。


「さて、帰るのです」

「あーぁ、時間のムダだったわー」

「ムダだったわー」

「じゃパイセン、おっつー」

「あっ! おっ、オメーら! その……同情とかしてくれんじゃねーのか!?」


「……はぁ!?」


 同情なんてするワケがないのです! だって……


「私たち……そんなことやりたくてもできないですから!」

「できないですから!」

「もぉイヤミにしか聞こえなかったっすよー!」

「えっおい! そんなつもりじゃ………」


 確かにそれは和おねえちゃんのセクハラなのです。でも貧乳の貴音たちにそれを言うのは自慢にしか聞こえないのです!


「バナナセンパイ、謝ってほしいのです!」

「えっええっ……なっ、なんかごめん」


 貴音たちはバナナセンパイのおっぱいを見て「世の中は平等ではない」ということを知ったのです。

貴音なのです。でも、おっぱいを持ち上げたバナナセンパイは♥なのです。

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