貴音はおねえちゃんからスノボーを教わるのです(貴音side)
「そうそう~! 貴音ちゃんも~バナナちゃんも~だいぶ上達したわね~」
スキーをやったことがない貴音とバナナセンパイは、和おねえちゃんからスキーを教わっているのです。教わっているのは暴言というスキー板を「ハの字」にした滑り方なのです。
思っていたのとは違う滑り方なのですが、和おねえちゃんはこれが基本だと言うので貴音は素直に練習したのです……貴音はイイ子なのです!
最初は前に進むのが怖く、腰が引けていたのです。和おねえちゃんから「屁っぴり腰」と言われたのです……貴音は人前でオナラなんかしないのです!
和おねえちゃんから正しい姿勢を教わったのです。足首とヒザを少し曲げて前の方へ体重をかけると滑り出したのです。
「うわぁー滑った! すげー」
バナナセンパイも滑れたのです。でも受験生とお笑い芸人が絶対に言ってはいけないセリフなのです。
脚の力加減で進んだり止まったりできるのです。滑れるようになると楽しくなってくるのです! 貴音は運動オンチ……略して(自主規制)なのですが、スキーはできる子だったのです!
「じゃあ~次はターンをしてみよっか~!?」
ターン? 曲がるのですか……和おねえちゃんが何やらむずかしそうな課題を出してきたのです。
「貴音の人生にまわり道などないのです! まっすぐ進むのです!」
「曲がれなかったら~大事故になっちゃうわよ~」
貴音は不安になったのですが、和おねえちゃんが体重移動だけで曲がれると言うのでやってみたのです。
「ほ……ほわっ、まっ曲がれたのですぅううううっ!」
「アッ、アタシも曲がれた―! やったぁー!」
貴音とバナナセンパイはスキーでターンすることができたのです! まだスキーを初めて数時間しかたってないのにスゴイのです!
ただ……
貴音もバナナセンパイも、ターンするのにメレンゲの端から端まで目一杯使ってしまったのです……スキー教室の小学生たちから白い目で見られたのです。
「それじゃあ~いよいよリフトに乗ってみようか~!?」
和おねえちゃんが新たな課題を出してきたのです。でも……
「和センセイ! 今日はありがとうございましたなのです」
「……えっ!?」
貴音にはもう一つの目標があるのです……時間がないのです。
「ち、ちょっと貴音ちゃ~ん! どこ行くの~!?」
貴音はレンタル屋さんに向かったのです。
※※※※※※※
貴音が戻ってくると、同じタイミングでおねえちゃんたちも様子を見に来ていたのです。
「えっ貴音ちゃん、どうしたんだよそれ!?」
おねえちゃんたちは全員、貴音の格好を見て驚いていたのです。
「スキーは返したのです! そして今度はこれを借りたのです!」
「かーっ、オメーよ! 二兎を追う者は一兎をも得ずって言ってな―、そーいうことやってるとどっちも中途ハンパになって続かねーぞ!」
そうなのです! 貴音はスキー板を返して、代わりにスノーボードを借りてきたのです!
「何やってんのよ~、せっかくスキー滑れるようになったのに~」
「大丈夫なのです! 貴音は(中学)一年生だからスキー教室まであと一年以上あるのです! 今すぐ覚えなくてもいいのです!」
「そ、そりゃそうだけど~」
それに……
「貴音はおねえちゃんから相撲暴動を教わりたいのです!」
「相撲取りが暴動起こしたら怖えーなぁ……って、ワザとボケてるだろ!?」
すると和おねえちゃんが
「はは~ん、そういうことか~……いっちゃん、ちゃ~んと妹さんに教えてあげなさいよ~」
「えっ、どういうことだよ和!?」
「ま~ったく、仲の良い姉妹ね~!? まぁいいわ! バナナちゃん! 一緒にリフト乗りましょ!」
「えっ……つーか樹李ちゃんはどうすんだ?」
「あっ樹李タソはこの『Wおっぱい初級者ゲレンデ』と一緒に滑ってるっす」
「ちょっと! それどういう意味よ!?」
「意味よ!?」
「傾斜がなくてほぼ平地……」
「アンタはひとりで滑ってなさい!」
「なさい!」
「冗談っすよー」
貴音とおねえちゃんを残し、他のみんなはリフト乗り場へ向かったのです。
あ……
このまま和おねえちゃんから教わっていればリフトに乗れたのです……少し後悔したのです。でも貴音はおねえちゃんから教わりたいのです!
※※※※※※※
「それじゃあ貴音ちゃん、ボード教えるけどさぁ……スキーと違ってハの字は出来ないからちょっとむずかしくなるよ」
大丈夫なのです! 貴音はスキーが滑れたので自信があるのです!
「板を装着したら、まずは立つところからだね!?」
バカにしないで干しイモなのです! スキーは最初から立てたのです。スノボーだって……よいしょっと!
〝ステーンッ!〟
あ、あれぇー!? たっ……立てないのですぅ!
「板の中心に体重を乗せるようにして、膝を曲げて立ってごらん! 棒立ちだと後ろに倒れたとき後頭部を直に打ちやすいから危険だよ! 膝曲げていればお尻から倒れるから!」
とりあえずおねえちゃんが支えてくれて何とか立てたのです。こういうときのおねえちゃんはカッコいいのです! 貴音がやっと立てるようになったとき、滑っていたみんなが集まってきたのです。
「ねぇ~、そろそろお昼にしな~い!?」
貴音たちはお昼ご飯を食べることにしたのです。
※※※※※※※
「えっこんな寒い所でアイスコーヒー飲んでるの!?」
「貴音は運動(板に立つこと)をしたから暑いのです」
貴音たちはゲレンデにあるレストランで食事をしたのです。みんなは定食やパスタを食べていたのです。貴音はカレーとアイスコーヒーにしたのです。
すると隣のテーブルに大学生くらいのお兄さんたちが座り、こっちをチラッと見てヒソヒソと話しだしたのです。
「なぁ、あれってさっきのお姉さんたちじゃね?」
「うわっ……よく見たらあの二人、スゲー巨乳じゃねーか」
間違いなくおねえちゃんと和おねえちゃんのことを言っているのです! おねえちゃんたちはスキーウエアの上着を脱いでいたのでおっぱいが目立つのです。ちなみにバナナセンパイは上着を脱ごうとしないのです。
「やっぱ行っとけばよかったなー」
「えっでも……アイツらのすっぴん、すげーブスじゃん!」
……むかっ!
失礼なのです! おねえちゃんは確かに男前なのですが、決してブスではないのです! 和おねえちゃんだって美人さんなのです! 貴音はこの失礼極まりないお兄さんたちに罰を与えるのです!
「ごちそうさまでしたー」
みんなで食器を返しに行くのです。無礼者のお兄さんが座っているイスの背もたれに上着が掛けてあったのです。上着にはフードがついていたのです。貴音は通りすがりにそのフードの中へ……
「にやり」
さっき飲んだアイスコーヒーの「氷」をこっそり入れておいたのです♪
貴音たちがレストランから出てくると、中から大声が聞こえてきたのです。
「うわっ! 冷てぇー!」
「雪入れたままフード被ってやんの! だっせー!」
「いやこれ……氷だぞ」
「……えっ!?」
おねえちゃんをバカにするヤツは貴音が許さないのです!
貴音なのです。良い子はマネしちゃダメなのです!




