貴音は不思議な女の子と出会ったのです(貴音side)
――こっ、困ったのです!
貴音はおねえちゃんと神社へ初詣に来たのです。ここは愛犬クララと一緒に初詣ができるので、今回初めて来たのです。
ところが……貴音が一人でクララを散歩させているとき、突然クララがどこかへ行ってしまったのです! どうやらハーネスが緩んでいたのです。
お参りのあと引いたおみくじは大吉だったのです。大吉は一番ラッキーなのですが、今は全然ラッキーじゃないのです。
おねえちゃんが階段の下、貴音は階段の上を探しているのです。このままクララが見つからなかったら……貴音はこれからずっと不幸なのです! クララのいない生活なんて考えられないのです!
貴音は自然と涙が出てきたのです……最悪なお正月なのです。貴音が泣きながらクララを探していると、
「ねぇキミ! どうかしたの?」
ヘンな髪色をしたツインテールの女の子が声をかけてきたのです。
※※※※※※※
「ボクはねー、ルルだよ! キミは何て言うの?」
「たっ……貴音なのです」
「そっかー、タカネナノデスちゃんかー!? よろしくね!」
なっ、何かいきなり誤解されたみたいなのです。これからその名前で呼ばれるのは面倒なのです。
「でもめんどくさいからタカネちゃんでいい?」
それが正解なのです! いきなり出てきた絡みにくい女の子にペースを乱されそうなのです。
「ねぇキミ! さっきからずっとリードだけ持ってるけど……なんで?」
そうなのです! 貴音はクララがさっきまで付けていたリードを持っていたのです。これを見てリードだとわかるということは、このルルちゃんという女の子はワンコに詳しいのかもしれないのです。
「じっ、実は……」
貴音はルルちゃんに、クララがいなくなったことを伝えたのです。すると、
「それはタイヘンだねー!? じゃ、ボクもいっしょに探してあげるよ!」
ルルちゃんもクララを探してくれると言ってきたのです。
「えっ、でも……初対面の人に探してもらうなんて悪いのです」
「だいじょうぶ! ボクはワンコ探すのとくいなんだよ!」
ワンコ探すのが得意って……意味がわからないのです。でもルルちゃんがこの後にとった行動はもっと意味がわからなかったのです。
「ねぇ、そのリード貸してくれる?」
貴音がクララのリードを渡すとルルちゃんは何と
「クンクン……クンクン」
リードのニオイを嗅いだのです。そして
「わかった! こっちだよ……おいでタカネちゃん!」
身体を低くして、地面のニオイを嗅ぎながら移動したのです! こっ、これってテレビで見たことあるのです。これはまるで……警察犬なのです!
――なっ何なのです? この子は……?
※※※※※※※
「クンクン……クンクン……」
ルルちゃんという女の子は地面のニオイを嗅ぎながら、お参りをする道からどんどん外れていったのです。貴音もついて行くのですが、着物を着ているので思うように進めないのです。
「ねぇ、タカネちゃんって何年生なの?」
「ち……中学一年なのです」
貴音がそう答えると、ルルちゃんは急に起き上がり貴音の手をつかんだのです。
「ホント!? じゃあドーキューセイだね!? 何中?」
「さ……坂織中なのです」
「ボクはねぇ、土岐井中なんだ!」
あっ、それ隣町にある中学校なのです。
「うわーザンネン! べつの中学だったんだねー」
同中だったらさすがに一度くらいは顔を見かけるのです。
「今日はだれかと来たのー!?」
ルルちゃんは次から次へと貴音に聞いてくるのです。貴音はクララがいなくなって気が気ではないのですが、ルルちゃんは貴音と同学年と知ってからとてもハイテンションなのです。
「貴音はおねえちゃんと来たのです」
「ボクはねー、たすくと来たんだよー!」
……どうやら貴音の話は聞いてないようなのです。
「たすく?」
「うん! たすくはねー、ボクの飼い主なんだよー!」
飼い主? 貴音は異世界にでも来たような気分になったのです。もしかしてこの子は亜人さんなのですか!?
いつの間にか林の中まで入ってしまったのです。貴音は足が痛くなってきたのです! もう着物ではこれ以上は進めないのです!
「クンクン……あっ、もうだいぶ近くなってきたよ!」
ルルちゃんはそう言うと、またまた不思議な行動を取ったのです。
「ウォーーーーン! ワンッ! ワンッ!」
えっ犬の鳴き声……まさかルルちゃん、ワンコと話せるのですか? 貴音が呆然としていると前方の茂みが〝ガサガサッ!〟と動いたのです。そして次の瞬間、
「わんっ!」
クララが出てきたのです! 無事に見つかったのです! クララは貴音を見つけると一目散にこちらへ駆け寄ってきたのです! 貴音はしゃがんでクララを待ち受けていると……
「わんっ♥」
――貴音じゃなくルルちゃんに飛びついたのですぅううううっ!
しかも……
「クンクン……」
――クララは何とルルちゃんのお尻を嗅いだのですぅううううっ!
「こ、こらっクララ! やめるのです!」
でもルルちゃんはイヤがるどころか……
「クンクン……」
――今度はルルちゃんがクララのお尻を嗅いだのですぅううううっ!
……なっ、何なのです? この二匹……じゃなかった一人と一匹。
※※※※※※※
「あっ、ありがとうなのです」
「クララちゃん見つかってよかったねー!」
貴音たちは神社の中へ戻ったのです。ルルちゃんはヘンな子だけど、ちゃんとクララを探してくれたのです……感謝しかないのです!
「こっ、このご恩は一生忘れないのです! 貴音はルルちゃんに何かお礼がしたいのです!」
貴音がそう言うと、ルルちゃんはしばらく考えて……
「おれい……ごほうび……あっそうだ! ねぇタカネちゃん! ボク、フライドチキンが食べたーい!」
えっ、フライドチキン!? まぁフライドチキンおごるくらいなら問題ないのですが、フライドチキン屋さんはココから遠いのです! 貴音が困っていると、
「おい、ルル!」
「あっ、たすく! おかえりー」
〝ぺんっ!〟
「おかえりじゃねーよ! オマエがどっか行ってしまったから探してたんだよ!」
「きゃいん! ぶたなくてもいーじゃん」
「んっ!? その子は?」
「あのねー、この子タカネちゃんって言うんだよー! フライドチキン買ってくれるんだってー」
〝ぺんっ!〟
「オマエはそうやって人に集ろうとするんじゃねーよ!」
「だってボクはイイことしたんだよ! ごほうびもらうんだよー」
「すみません、ウチのルルがご迷惑を……」
「あっいえ! お世話になったのです」
どうやらこの人がルルちゃんの飼い主、たすくさんみたいなのです。
「くぅ~ん、フライドチキンがぁ~!」
「オマエは帰ってドッグフード食ってろ!」
こうして不思議な女の子「ルルちゃん」は帰っていったのです。
※※※※※※※
「おねえちゃーん、見つかったのです!」
貴音はもう一度おみくじを見たのです。「失物」という欄に「友に任せば吉」とあったのです……当たっているのです。
ちなみに……
「仕事」役は引き受けよ
「恋愛」身近なところにいる
……意味がわからないのです。
タカネナノデス。
ルルちゃんがわからない人は作者の作品「イヌ娘JC」を読むのです!




