尾白家の年末なのです(貴音side & いづみside)
《貴音sideなのです》
今年もあと二日なのです。
冬休みの貴音は、勉強のし過ぎで夜更かししてしまったのです。
……全面結界なのです(※前言撤回)。
ゲームのし過ぎで夜更かししてしまったのです。寝ようと思った瞬間レアキャラが登場したのです。
遅く起きた貴音は、ご飯が炊けるにおいが気になって一階に下りたのです。すると、普段は貴音よりも遅く起きるおねえちゃんが、ママさんと一緒にキッチンで何やら忙しそうにしていたのです。
「ママさんおねえちゃん、おはようなのです」
「あぁ、おはよう貴音ちゃん!」
貴音はキッチンに入るとレアキャラがいることに気がついたのです。いつもご飯は炊飯器で炊くのに、この日はなぜかコンロの上にある木のようなもので出来た丸い筒のような形の大きな鍋のようなものでご飯を炊いているようなのです。
「何でこんな物でご飯を炊いているのですか? しかもこんなにたくさん……貴音はこんなに食べられないのです」
「あぁ貴音ちゃん……これはお米を炊いているんじゃなくて、もち米を蒸しているんだよ! それと、これはご飯で食べるんじゃなくて『餅』にするんだよ」
「えっ、何でこれがお餅になるのですか!?」
「は? 貴音ちゃん、もしかして餅つき知らないの?」
ママさんとおねえちゃんは声をそろえて貴音をバカにしたのです! お餅つきぐらい貴音も知っているのです! ただ、実際にお餅つきしている所なんて見たことがないのです。
「えっママさん、じゃあ家でお餅つきが出来るのですか?」
「もちろん! だから早く着替えて手伝ってちょうだい」
「はいなのです♪」
それにしても……かなりたくさんの量なのです。まだ大きなボウルに入った蒸していないもち米もたくさんあるのです。
※※※※※※※
《いづみside》
「それにしても……かなりたくさんの量なのです」
――ギクッ!
「あぁ、これはね貴音ちゃん……鏡餅やのし餅を作ったりご近所さんにも配ったりするから……たくさん蒸すのよ! その代わり、お腹いっぱい食べられるわよ」
「わぁい! 楽しみなのです」
母の茅乃が必死にフォローしたが……これは先日、妹が初潮を迎えたときに昭和脳・茅乃が赤飯を作ろうとしたときのもち米だ……私が必死に食い止めたが。どうやら妹は赤飯と餅が同じ原料だということを知らないようだ。
妹は着替えるために部屋へ戻った。その間にもち米が蒸し終わったので、あらかじめ庭に準備してある臼に持って行くのだが……うわっ、結構重いなぁ。
「あっ、すみません手伝ってもらって」
「いえいえ、こんなときこそ私が手伝わなければ……よいしょっと」
大きなせいろに入っていたもち米はかなり重い。私が苦戦していると継父の延明さんが手伝ってくれた。私は男嫌いだが、正直今回は助けられたな。
「お継父さん、この家では毎年餅つきをされるんですか? 大変ですね」
「えっ!? いえ、我が家で餅つきをするのは初めてなんですけど……」
――あれっ!?
「だって、この臼や杵って……あとせいろも」
「あぁそれは……茅乃さんが持ってきたんですよ」
――はぁ!?
「母さん、どういうことだ!?」
私が茅乃に問いただすと
「あぁ、今年の春に十日市場で買ってきたんだよ」
「えっそれってまだこの家に住む前じゃん!?」
「そうだよ」
ケロッとした顔で答えた。
「おいおい、あのボロアパートのどこに仕舞ってたんだよ!?」
「押入れ」
ウソだろ……どう考えてもムリだ。
※※※※※※※
《再び貴音sideなのです》
貴音はお餅つきをしたことがないのです。だから今日は楽しみなのです。でも、こんなお米がお餅になるなんて信じられないのです。
「じゃあ貴音がつくのです」
「あっでも最初にこねるのは難しいからちょっと待っててね!」
最初はペッタンペッタンつくのではなく、パパとママさんで臼の周りを移動しながら杵を押すようにしてお米を潰していたのです。
それにしても、パパがお餅をつけるなんて初めて知ったのです……パパすごいのです! するとご飯が、だんだんとお餅っぽくなってきたのですよ~!
――な~にぃ~!? やっちまったなのです!
「はい貴音ちゃん、もうついていいよ」
「はいなのです!」
貴音は黙って……おろろっ!?
おっ、重いのですぅううううっ!
杵って意外と重いのです! 貴音は持ち上げられないのですよ~!
――な~にぃ~!? やっちまったなのです!
「貴音ちゃん、それ重いでしょ!? お姉ちゃんが支えてあげるよ」
さすがはおねえちゃんなのです! 男前なのです♥
「よいしょっと……おぉ、意外と重いな」
するとママさんが
「おぃいづみ! それって竹刀の構えだろ!? 剣道から離れろ」
――な~にぃ~!? やっちまったなのです!
※※※※※※※
《再びいづみside》
「よーし、そろそろいいんじゃない!?」
やっと餅がつけた。実は私も餅つきは初体験だ。そりゃアパート生活で餅なんてつく機会はないだろう。
私は生まれて初めて庭付きの家で餅つきを体験できた。まぁそう考えると家族ってのもいいもんだな。
妹と一緒に杵を持ってついたのもいい経験だった。まるでウエディングケーキ入刀のような「初めての共同作業」だったな♥
「いただきまーす」
つきたての餅はすぐに、あんこや大根おろしなどと和えてから食べた。
「おいしいのです! 貴音はつきたてのお餅を初めて食べたのです!」
「あっうめぇ! あんこも甘くて……こりゃ何個でもイケるわ」
「おいおい、少しはからみ餅(大根おろし)も食った方がいいぞ」
十分後……
「おっ……お腹いっぱいなのですぅううううっ!」
「うげぇ、もう食えん……ムリ」
「ほら言わんこっちゃない、大根おろしは消化を助けるのに……」
つきたての餅は思ったよりヘビーだった。ご近所にも配ったがまだ余っている。
「余った分は……鏡餅作るよー!」
そうか、ここで無理して食わなくてもいいんだった。
「鏡餅ってどうやって作るのですか?」
「貴音ちゃん! 今からママが適当な大きさに分けるから、こうやって下側を回しながら形を整えてね」
「はいなのです」
えっ? 知らないうちにのし板やのし棒それに餅とり粉まであるじゃねーか!
「あれ? お継父さん、のし板って……」
「う、家には無かったよ」
何なんだ茅乃は!? まさか四次元ポ●ットでも持ってんじゃねーだろうな?
※※※※※※※
《オマケの貴音sideなのです》
貴音はつきたてのお餅を触ったことがないのです。でも貴音はがんばって鏡餅を作るのです!
まっまだ熱いのです! こんな熱いお餅をママさんは平気で掴んだのです。時間がたつと少し冷めてきたので貴音もそろそろお餅を触るのです。
〝ぷにゅ♥〟
この感触……どこかで触った気がするのです! 一体どこで……
「ちらり」
「貴音ちゃんどうしたの? お姉ちゃんの胸をじっと見て……」
――思い出したのです! おねえちゃんのおっぱいなのです♥
「あとで比べてみるのです♥」
「いや何をだよ!?」
……良いお年をなのです!
貴音なのです。今回はひとつのお話で貴音とおねえちゃんの視点が変わるのです。




