おねえちゃんが貴音の授業参観に来たのです(貴音side)
「ごめーん貴音ちゃん! その日ママは用があって行けないわ」
――えっ!?
この日、貴音は初めてママさんから授業参観の出席を断られたのです。
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ママさんはとても教育熱心なのです。貴音が小学校のとき……まだ家政婦の武川さんだったときから、仕事で忙しいパパに代わって授業参観には必ず出席してくれたのです。
「この日は無尽の忘年会旅行があってさぁ……私、幹事じゃん!? だからどうしても休めないんだよぉ~」
そっ、そんな!? ママさんは生徒さんが大勢いる学校より「無人の感じ」が良いというのですか!? まぁでも仕方ないのです。ママさんは普段から貴音たちのために一生懸命なのです。なのでたまには誰もいない場所へ旅行に行ってきてもいいのです……でもお土産は欲しいのです。
「あっ! でもそれって母親じゃなくてもいいんだよね!?」
「えっ……そ、そうなのです」
「だったらさぁ……いづみ! おーぃいづみー!」
ママさんはおねえちゃんを呼んだのです。そして……
「なーに!?」
「おい、来週の水曜って学校あるのか?」
「えっ……あぁ、午前中だけだよ」
「よかった! だったら午後から貴音ちゃんの授業参観に行ってくれないか?」
ママさんは、おねえちゃんが代わりに行ってくれるようお願いをしたのです。
「えぇっ……正直行きたくねーなぁ」
「何だと! オマエ、この間私に楯突いたよな……本気でやるか!?」
「わっ、わかったよ! 行けばいいんだろ」
おねえちゃんはママさんに頭が上がらないのです。おねえちゃんはイヤイヤながら引き受けたのです。
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「おねえちゃん、さっきはありがとうなのです」
その日の夜、貴音はおねえちゃんの部屋に入ってお礼を言ったのです。
「あぁ、いいって! 貴音ちゃんのことだったら何でもするよ」
おねえちゃん……ムリをしているのです! 本当は貴音の学校に行きたくないのです。なぜなら貴音の学校は共学で、男の先生も大勢いるからなのです。
おねえちゃんは男の人が苦手なのです。前に長沢先生から学校に呼び出されたときも、廊下で男の先生とすれ違うとものすごくイヤそうな顔をしていたのです。
「おねえちゃん! 授業参観は五時間目、社会の時間で担任の南部先生が授業をするのです。南部先生は女の先生なのです」
「あぁ、そ……そうなんだ」
貴音の言葉を聞いておねえちゃんは少し安心したような顔になったのです。
「それと……」
実は授業参観がある日、ちょうど貴音に日直の順番が回ってくるのです。つまり貴音が「起立」「礼」の号令をかけるのです……これは責任重大なのです。もちろん「起立なのです」「礼なのです」などとは言わないのです。
「なのでおねえちゃんにも貴音が日直をやる姿を見てほしいのです」
「うん……わかったよ」
貴音はおねえちゃんとお休みのキスをしてから部屋に戻るのです。
「ところでおねえちゃん、クラスの男の子は平気なのですか?」
「あぁ中坊男子だろ? 束になってかかって来てもブッ倒す自信はあるぞ!」
おねえちゃん、暴力はダメなのです。しかもこの人はマジでやりそうなのです。
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授業参観当日なのです。
お昼休みが終わると教室の中にクラスの子のママさんが入ってきたのです。みんなオシャレな格好をしているのです。
貴音はひとつだけ心配ごとがあったのです。それはおねえちゃんの服がカジュアルすぎるということなのです。
昨夜もおねえちゃんはバイト先(志麻おねえちゃんの家)で「明日の服? 別にいつもの格好だけど」と言って和おねえちゃんにキレられていたのです。
すると和おねえちゃんが「私の服貸してあげるから明日はそれ着なさ~い!」と言ってきたのです。和おねえちゃんは普段から大人の女性らしい格好をしているのです。おねえちゃんがどんな格好をしてくるのか……貴音は楽しみなのです♥
〝ガラガラガラッ〟
あっ、おねえちゃんがやって来たのです……って、ほわわっ!?
おねえちゃん……それはちょっとセクシーすぎるのですぅううううっ!
おねえちゃんは大きなおっぱいがメッチャ強調された服を着ていたのです。これはきっと、おねえちゃんよりおっぱいが大きい和おねえちゃんの服だから余計に大きく見えるのです。
するとおねえちゃんを見た教室中がザワつき始めたのです。しばらくして隣の席の奥山君が貴音に話しかけてきたのです。
「な、なぁ尾白! アレってオマエの姉ちゃんだよな!?」
「そ……そうなのです」
認めたくないけど認めてしまったのです。それを聞いた男の子たちが
「……おっぱいだ」
「おっぱいが来た」
「体育祭のおっぱいだ」
ヒソヒソと話し始めたのです。そういえば体育祭が終わった後に、何人かクラスの男の子から「姉ちゃんのニャイン教えて」と聞かれたのです……もちろん教えなかったのです。
教室中(男の子だけ)がザワついてきたので先生が「はぃ静かにして! 日直さん、号令して」と言ってきたのです。貴音は今日の日直なのです! ここはビシッと号令をかけておねえちゃんにイイ所を見せるのです!
「起立!」
貴音は大きな声で号令をかけたのです。
〝ガタガタガタッ!〟〝ギィーッ〟
するとクラスのみんなが一斉に立ち上がったので……あれっ!?
――何で!?
――何で……男の子だけ起立しないのですかぁああああああああっ!?
男の子だけ全員、貴音の号令を無視して座ったままだったり中腰になっていたのです! 何で貴音の号令に従わないのですか!? 午前中は全員ちゃんと起立していたのに……おかしいのです!
結局、貴音はちゃんと号令が出来ないまま授業が始まったのです。貴音は授業参観に来ていたおねえちゃんや他のママさんパパさんの前で恥をかいたのです。
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その日の夜……貴音は志麻おねえちゃんの部屋で、和おねえちゃんからお勉強を教わっていたのです。そのとき和おねえちゃんに授業参観のお話をしたのです。
「あら、それってちゃ~んと起立してたわよ」
すると和おねえちゃんから意外な答えが返ってきたのです。
「ウソなのです、男の子は全員立ってなかったのです」
「貴音ちゃ~ん、実は勃っていたのよ~……息子さんが♥」
えっ……みんな中学一年生なのです。子どもなんていないのです。
その話を隣で聞いていた志麻おねえちゃんは顔を真っ赤にして下を向いていたのです。そしてもう一人……
〝ドドドドドッ……ガラッ!〟
「和ぃいいいいっ! テメーよくもあんな体形がモロに出るような服よこしやがったなぁー!!」
顔を真っ赤にしたおねえちゃんが怒鳴り込んできたのです。でもそれは直前までちゃんと確認しなかったおねえちゃんが悪いのです。
「あらぁ~よかったじゃな~い! カワイイ中学生男子からスタンディングオベーション(総勃ち)を受けたんでしょ~! 今頃はみ~んな別の『ベーション』をしてるかもよ~!?」
和おねえちゃんは何を言っているのですか? 貴音は意味がわからないのです。
貴音なのです。息子が立つ……何なのです? 誰か貴音に教えてほしいのです。




