貴音はおねえちゃんたちとカラオケするのです(貴音side)サビ
「こんなの無理ゲーっす! 貴音っち、こうなったらボイコットするっすよ!」
貴音が通う中学校で合唱コンクールがあるのです。貴音と樹李ちゃんは音痴なので、天ちゃんやおねえちゃんたちとカラオケ屋さんで練習していたのです。
ところが学級委員長でもある天ちゃんのシゴキが厳しく、貴音と樹李ちゃんはカラオケで八十点以上取らないとお料理が食べられないのです。みんながパーティー料理を食べているときにドリンクバーしか与えられなかった貴音たちは、ついに堪忍袋の緒が切れたのです……ぶちっ!
「ボ、ボイコットって何なのです?」
「歌うのを拒否るってことっすよ! 部屋にいなければいいっす」
「えっ、でも……」
鬼軍曹の天ちゃんは地獄の千本ノックのように次々と貴音たちが歌えそうな曲を予約しているのです。この状況から逃れることは難しいのです。すると樹李ちゃんはドリンクバーのジュースを一気に飲み干し
「貴音っち! これっすよ」
空のグラスを見せたのです……そうなのです! ドリンクバーに行くフリをしてサボるのです。貴音はうなずくと二人で部屋を出ようとしたのです。でも、
「あっ、ドリンクバーだったら私が行ってくるわよ」
天ちゃんに封じられたのです! 天ちゃんは賢いので貴音たちの考えはお見通しなのです。しかし樹李ちゃんはもう一枚上手だったのです。
「じゃあお願いするっす! 樹李タソは『スイートローズ』がいいっす」
「えっ……何? そんなのあったっけ?」
樹李ちゃんの注文を聞いた天ちゃんは困った表情になったのです。
「自分で作るドリンクっすよ! 氷をいっぱい入れたらまずは乳清ウォーターを三分の一入れるっす! 次に混ざらないようにそーっとオレンジジュースを三分の一注いだら最後に別のカップに作っておいたローズヒップティーを氷の上から流し込むっす! それから貴音っちはオレンジジュースと乳清ソーダを混ぜてから……」
「あぁっ、もう面倒くさいわね! いいわよ行ってきて!」
「あざーっす! 貴音っち、行くっすよ」
樹李ちゃんは勝ち誇ったようにさっそうと部屋を出て行こうとしたのですが……
「あっそれじゃあ私の分もお願いね」
「空も……」
今度は天ちゃんと空ちゃんがグラスを渡してきたのです。マズいのです! これじゃ長時間サボっていられないのです!
「何飲みたいっすか!?」
「私たちは冷たいのなら何でもいいわよ」
天ちゃんの言葉を聞いて、樹李ちゃんは一瞬ニヤリとしたのです。
※※※※※※※
「ぷはーっ! あぁっ、もう天タソの奴ムカつくっす!!」
貴音と樹李ちゃんはドリンクバーの前にやって来たのです。ドリンクバーでおかわりの飲み物を持って来るとウソついてカラオケをサボっているのです……貴音たちは悪い子なのです。
「ホントなのです! 貴音も今日は天ちゃんに怒りしんとう圧なのです!」
「だいたい今日いきなりカラオケ歌っただけで上達なんかするワケないっすよ……あっ、樹李タソ今度はコーラ&メロンソーダにするっす♪」
貴音たちはここで時間を潰しているのですが、樹李ちゃんはココですでに三杯も飲んでいるのです! さすがに飲みすぎなのです。
しかも天ちゃんたちに飲み物を持って行かなければならないのです。あまり長居はできないのです。
「そろそろ戻るのです。そうしないと鬼軍曹がうるさいのです」
「大丈夫っす! 飲み物が無くなってスタッフが補充してたって言えばいいっす」
「ここで飲んでいると他のお客さんに迷惑なのです」
「まだ誰も来てないっす! もし来たら譲るっすよ」
樹李ちゃんは四杯目のメロンコーラを飲み干すと、
「じゃあ仕方ない、そろそろ行くっす……そうだ貴音っち! アイツら飲み物は何でもいいって言ってたっすよね!?」
「……言ってたのです」
「じゃあムカつく天タソには、樹李タソ特製オリジナルブレンドを作るっす」
「なっ……何なのです?」
というと樹李ちゃんは、空ちゃんにメロンソーダを乳清ソーダで割ったジュースを……そして天ちゃんには、
「完成っす! オリジナルブレンド、名付けて『オールスター』っす♪」
コーラやメロンソーダ、アイスコーヒーや野菜ジュースなど……ドリンクバーにあった冷たい飲み物を全部混ぜたのです! 見た目からしてマズそうなのです……混ぜるな危険なのです!
「天タソにはこれを飲ませるっす」
「見た目でバレるのです」
「照明暗いからバレないっすよ」
貴音と樹李ちゃんは仕方なく部屋に戻ったのです。中では天ちゃんが超ご機嫌で歌っていたのです。
「あっ二人とも待ってたよー! 早く飲み物ちょーだい!」
歌い終わった天ちゃんはうれしそうに近づいてきたのです……結局自分が一番歌いたかったのです。
「はい! こっちが天タソ、こっちが空タソっす」
樹李ちゃんが二人に飲み物を渡したのです。歌いまくって暑かったのか天ちゃんは上着を脱ぐと
「あぁ暑い……いただきまーす!」
樹李ちゃんの作った激マズドリンクを一気飲みしたのです。ところが……
「あーおいしぃ! サンキュー樹李!」
貴音と樹李ちゃんは思わず顔を見合わせたのです! 天ちゃんは……極度の味音痴だったのです!
※※※※※※※
「うわぁ、また六十点台っす!」
「ま……また食べられないのですぅううううっ!」
それから何曲も挑戦しているのですが、貴音たちの点数は一向に上がらないのです。お腹が空き過ぎてドリンクバーでごまかしていたのですが、さすがにガマンの限界なのです。と、そこへ
「貴音ちゃん樹李ちゃん……さっきはゴメンね」
天ちゃんがやって来て意外なことを言ってきたのです。
「えっ?」
「お腹空いたでしょ!? もう点数気にしなくていいから好きな物あったら言ってね! 私が注文してあげるから……」
おかしいのです……天ちゃんはこんなことを言う子ではないのです! でも貴音はすぐに気がついたのです!
――これ……空ちゃんなのです。
さっき天ちゃんが脱いだ上着を双子の妹・空ちゃんが着ただけなのです。照明が暗くてわかりにくいのですが、近くで見ると間違いなく空ちゃんなのです。
これはきっと「妨害工作」なのです。空ちゃんだけはクラスが違うのです。貴音たちの歌が上達し、合唱コンクールで成績が上がるのを阻止するためなのです!
でも……その策略に乗ったのです♥
貴音たちはコンクールの成績よりゴハンなのです! 貴音は味噌ラーメン、樹李ちゃんはチョコレートパフェを注文したのです。
運よく(?)天ちゃんが熱唱している間にお料理が運ばれてきたのです。貴音と樹李ちゃんが食べていると歌い終わった天ちゃんに見つかったのです。
「えっ、ちょアンタたち! 何勝手に注文してるのよー!」
「何って……天タソが注文していいって言ったっすよ!」
「えっ……私が!?」
天ちゃんが周りを見渡すと、天ちゃんの上着を着た空ちゃんを見つけたのです。
「あーっ、空ーっ! アンタって子は!?」
鬼軍曹がお怒りになられても時すでに遅し……ごちそうさまなのです!
貴音なのです。次回はおねえちゃんたちを巻き込んで大盛り上がりになるのです!




