突然、幼女が……になった(いづみside)
「いづみ、悪いけどシルクちゃんをお風呂に入れてやって」
ある日……私が学校から帰ると、妹の貴音ちゃんにそっくりのカワイイ幼女が家のリビングにいた。だが妹の従妹で「大鳥居 シルク」という四歳の幼女は極度の人見知りで、初対面の私がいかなる対応をしてもギャン泣きしていた。
話しかけてもギャン泣き、目が合ってもギャン泣き、挙句の果てには私のことをオジサン呼ばわり……オバサンと呼ばれても不愉快極まりないというのにオジサンだと!? 初めは妹そっくりでカワイイと思っていたが……私はこのシルクという幼女に苛立ちを覚えてくるようになった。
そんな時、母の茅乃がこの幼女を風呂に入れろと言ってきたのだが……冗談じゃない! 目が合っただけでギャン泣きされる関係、私が風呂に入れようもんなら幼児虐待を疑われてご近所さんから通報されてしまう程の大騒ぎになるぞ!
「そんなの貴音ちゃんがやればいいだろ!? 従妹で顔見知りなんだし……」
私がそう言うと、ゲーム機を手にした妹が
「貴音はリモート会議で忙しいのです」
「ゲームのチャットだろ!? そういうのをリモート会議とは言わん」
ていうか妹はさっきこの子の世話するって言ってたじゃねぇか! ったく、舌の根の乾かぬ内に……すると茅乃が、
「いづみ……これから尾白家で世話になるのに親戚付き合いは重要だよなぁ?」
う゛っ、それは気にしていたことだが……。
「親戚から嫌われたままじゃ、貴音ちゃんの『姉』として立場ねぇぞ~」
「わ、わーったよ! やりゃいいんだろ!?」
妹の名を出されたらやらないワケにはいかねぇだろ!
「心配するな! シルクもオマエと一緒に風呂入ればなつくだろ!?」
えっ、何だよその根拠のない楽観的な予測は?
※※※※※※※
「シルクちゃん、一緒にお風呂入ろうか?」
私は自分の中で最大レベルの優しい声でこの幼女を風呂に誘った。幸い夕食を食べ終えた辺りから私のことを親戚と「認識」したらしく、この時点では私の顔を見てギャン泣きすることは無くなっていた。
「……」
しかしまだ警戒心があるらしく、私に対して口をきかないどころかニコリともしない。今も私の誘いに対し、継父の延明さんが書いた絵本を読んだまま無視……正直ムカつく態度だ。
「さ、早くしないとおねむの時間になるから……お風呂入ろ」
「ちゃかねおねえたんといっちょにはいりゅ」
「貴音ちゃんはね、リモート会議で忙しいんだって! 私と一緒じゃダメかな?」
シルクちゃんはしばらく沈黙した後、ボソッとこう言い放った。
「はじゅかちい……」
あっそっか、まだよく知らない人と風呂に入るのは恥ずかしいのか!? なぁんだ、意外とおませさんだなぁこの子は……カワイイッ♥
だが、次の一言で私は思いっきり凍り付いてしまった。
「こんよく……やだ」
――こっ、このクソガキゃああああっ!
四歳なら父親と入ってもフツーだろ……つーか私は女だ! 何で混浴になるんだよ!? このガキ、完全に私を男扱いしてるぞ!
「お姉ちゃんは女だよー! だから一緒に入ろ」
「やだやだ! ちぇくはらでちゅ!」
どこで覚えたんだよその言葉!? 私が困り果てていると、必死に笑いをこらえている茅乃がやって来て
「いづみ、これを一緒に持っていきな!」
私にプラスチック製のカゴを渡した……何だコレ? 中を見ると風呂で遊ぶ用のオモチャだった……定番の黄色いアヒルとか入っている。わざわざこの子のために用意したのかよ!?
でも相手は極度の人見知り……こんなオモチャで風呂に誘導できるのか?
「シルクちゃん、アヒルさんとかあるよ! 一緒にお風呂入ろ」
するとシルクちゃんの顔がぱぁっと明るくなり、
「はいりゅぅ~♪」
……チョロかった。
※※※※※※※
脱衣所に誘導することはできた。だが扉を閉めた瞬間、シルクちゃんは自分の置かれた状況に気づいたようで再びギャン泣きし始めた。
「ぴぎゃぁああああっ! やだやだやだ! おぢたんとはいりゅのやだー!」
ヤダってこっちのセリフだ! 何だってこんな人見知りを通り越してワガママなクソガキを風呂に入れなきゃならないんだ……それと私はオジサンじゃねーよ!
「おぢたんやだー! くちゃい! きちゃにゃい! あっちいけー!」
シルクちゃんはそう言ってオモチャの入ったカゴの中から水鉄砲を取り出すと、
〝ピューッ〟
「うわっ!」
私の顔を目がけて撃ってきたのだ!
――かっちーん!
臭い汚いと言われ挙句の果てに水鉄砲……さすがに堪忍袋の緒が切れた! このクソガキ! 大人をナメんじゃねーぞ!
私はシルクちゃんの着ている服を強引に脱がし始めた! クソガキは必死に抵抗したが、こんな幼女の着ている服を脱がすくらい容易いことだ。
「ぷぎゃぁああああっ! えっち! へんちゃい! この……ちゃのばびっち!」
おいサノバ●ッチとかどこで覚えたんだよこのガキ……だがもう知らん! この絶叫を聞いて妹や茅乃がやってきたら逆に好都合! アイツらにこのクソガキを任せることができる。
全裸にされたシルクちゃんはギャン泣きしたまま床に座り込んだ。うるさいが走り回られるよりはいい。その間に私は自分の服を脱ぎ、ブラを外した瞬間……
……あれ?
壁が震えるほどギャン泣きしていたシルクちゃんがピタッと泣き止んだ。異変に気づいた私が振り向くと、このガキんちょは目をまん丸くしたままこちらをジッと見つめ、そして両手を突き出してきた。
何だよ抱っこしてほしいのか!? 全裸になった私は、この世話の焼けるガキんちょを抱っこした。すると……
〝ぱくっ♥〟
――こっ、コイツ……私のおっぱいに吸いつきやがったぁああああっ!
抱きかかえた瞬間、シルクちゃんは私のおっぱいを咥えると乳首を吸い始めてきたのだ。こっ、このガキ……見た目だけじゃなく
――巨乳好きまで妹にそっくりじゃねーかぁああああああああっ!
※※※※※※※
やがてシルクちゃんは「おねむ」の時間になったが……
「こらシルクちゃん! 貴音おねえちゃんと一緒に寝るのです」
「やだー! おっぱいがいいにょ! おっぱいとねるにょー!!」
その後……私はシルクちゃんから「おっぱい」と呼ばれ、一晩中乳首を吸われたまま寝る羽目になってしまった。
……だが、この話はこれで終わりではない。
翌朝、
「あぁ、いづみさんおはよう」
「あっお継父さん、おはようございます」
私は廊下で継父とバッタリ顔を合わせた。
「どうです、あれからシルクとは仲良くなりましたか?」
「え、えぇ……まぁ」
正直、あの子が仲良くなったのは私の「おっぱい」の方だが。
「そうですか……」
すると継父は遠い目をしながら
「実はね……未だにシルクはボクになつかないんですよ」
……えっ?
「で、でも……泣かれてないですよね!?」
「泣かれてはいないけど、ボクの存在に気づいてないというか……」
――あっ!
そういえば……昨日は継父もずっとその場にいたハズなのに……
シルクちゃんはおろか、私たちは誰も継父の存在に気づいていなかった。
貴音なのです。貴音は巨乳好きではないのです。巨乳に憧れているだけなのです!




