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貴音はおねえちゃんの部屋でハメられてしまったのです(貴音side)

 



 ――おねえちゃんの部屋からヘンな本が出てきたのです!




 今朝……教室で樹李(じゅり)ちゃんが泣いていたのです。理由は、樹李ちゃんのお兄さんが「妹ゲー」というえっちぃゲームを持っていたというのです。そこで樹李ちゃんはお兄さんにえっちぃことをされる……と怯えて泣いていたのです。

 すると樹李ちゃんは、貴音もおねえちゃんに気をつけた方がいい……と言ってきたのです。貴音は家に帰ると、さっそくおねえちゃんの部屋に忍び込んで探索したのです。するとベッドの下から怪しい本が見つかったのです!


 タイトルは『校庭の二人』……表紙は制服を着た背の高い女の人と、背の低い女の人が抱き合っているイラストなのです。

 これはきっと冬のお話なのです。たぶん寒いから抱き合って温まるのです。そういえばタイトルの隣に「百合小説」と書いてあるのです。


 ……()()()()()小説?


 お米の「一合」は約一五〇グラムなのです。だから百合(ひゃくごう)は……じっ、十五キログラムなのです! そっ、そんなに食べきれないのです!

 でも、よく考えたら何で小説が十五キログラム……なのです? 貴音は意味がわからないのです。


 作者は……「粟津(あわづ)まに」? 聞いたことのないヘンな名前なのです。


 ……では、読んでみるのです。


 物語は同じ学園で学年が違う女子高生……学園一背の高い「瀬戸口 萌夢理(もゆり)」と学園一背の低い「加茂川 紬月彌(つつみ)」が校庭で女子サッカー部のイケメンエースストライカー「玉城 鞠亞(まりあ)」に憧れ、他の女の子たちと一緒に見学しているところで知り合うのです。

 ところが、憧れていた玉城に彼女がいることが発覚……ファンクラブは解散したのです。しかし残された瀬戸口と加茂川はそのまま意気投合し、やがてお友だちになっていくのです。

 さらに二人は生き別れの姉妹だったことが判明するのです! こうしてこの二人は一緒に住むようになり、おつき合いを始めたころ玉城が二人に急接近し……。



 ――こっ、これは……つまんないのです!!



 おねえちゃん! こんなつまんな……いいえ、こんな()()つまんない小説なんか読んでいるのですか!?


 あまりにひどすぎてどこからツッコんでいいか悩むのです! まずはストーリーがベタすぎるのです! 生き別れの姉妹とか何時代の設定なのですか!? これならパパの描いた絵本の方がよっぽどストーリーに手が込んでいるのです!

 逆に登場人物の名前に手が込みすぎているのです! 紬月彌とか鞠亞とか、一般的にいなさそう……そして読めないような旧字体や画数の多い漢字をわざと使った苗字や名前は最近のマンガやアニメの「あるある」なのです。

 そもそもメインの登場人物が三人いるのです! なのに校庭は冒頭しか出てこないのです! 「校庭の二人」というタイトルにする意味がわからないのです!


 ――まさか……なのです!?


 瀬戸口と加茂川の二人は背が大きく違う、つまり()()差があるのです! まっ、まさか「校庭」と「高低」を掛けている……などという超低レベルなネタではないことを祈るのです。

 この「粟津まに」とかいう作者……どう考えてもネットの小説投稿サイトでタイトルを少し変えただけの中身がワンパターンな異世界ファンタジー小説を書いているド素人と何ら変わりがないのです!

 もしこんな稚拙な文章を書いている人が国語の先生だったら……間違いなく貴音は国語が大キライになってしまうのです!



 それにしても……えっちぃ小説じゃなくて安心したのです!



 元はと言えば樹李ちゃんに脅されたので、貴音は樹李ちゃんに言われた通りおねえちゃんの部屋のベッドの下を探してみたのです。

 でも、出てきたのはただのクソつまんない小説だったのです。百合(ひゃくごう)小説とかいうワケのわからない小説なのです……全然いやらしくも何ともないのです。


 例えば……瀬戸口と加茂川の二人がキスをしたのです。貴音はおねえちゃんと毎晩「おやすみのキス」をしているのです。姉妹だったらキスくらいするのです。


 そして二人はハダカになるのです。これはきっと二人でお風呂に入るのです。貴音だっておねえちゃんと一緒にお風呂入るのです……普通なのです!


 さらにこの二人は同じベッドで寝るのです。貴音は時々、おねえちゃんを起こそうとしてそのまま一緒に寝てしまうのです。

 この間のお泊り会なんて、貴音とおねえちゃんは天ちゃん空ちゃん樹李ちゃんとなぜか一緒に寝てしまったのです……狭かったのです。


 よかったのです……おねえちゃんは普通なのです! 貴音にえっちぃことをする考えはないのです! 樹李ちゃんは考えすぎなのです! 


 それよりも貴音には気になることがあるのです。この小説に登場する加茂川という背の低い女子高生……夏休みに会った「鴨狩(かもがり) (つむぎ)」さんに特徴が似ているのです! そういえば紬さんもお付き合いをしている女の人がいるのです。もしかして瀬戸口さんって人がそうなのですか?


 とりあえずこのクソつまんない本はベッドの下に戻しておくのです。せっかくなので他に口直しになるような小説はないのですか!? 貴音はおねえちゃんの部屋をあちこち探してみたのです。

 すると、机の引き出しから見たこともないような雑誌が出てきたのです。どうやら色々なジャンルのラノベが読める雑誌のようなのです。

 その中に『百合ジャンル大型新人・良坊(よしぼう) 種夢(たねむ)』と書いてあったのです。またまたヘンな名前の人なのです。しかも百合(ひゃくごう)小説……だから十五キロは重いのです!


 でも貴音はその小説も読んでみようと思ったのです。こっちはさっきの粟津なんとかと違って面白そうなのです。

 ただ、表紙を描いている「ならむう()」……これは何と読むのです? る……よくわからないのですが、この絵師のイラストに毒々しい強烈なインパクトがあって貴音は読む前からドキドキしてきたのです。


 貴音がその百合(ひゃくごう)小説を恐る恐る読もうとしたときなのです!


「たーかーねーちゃぁああああん!」

「びくぅ!!」


 後ろから突然声をかけられたのです……おねえちゃんなのです! うわぁああああっ! 貴音はおねえちゃんの部屋に忍び込んだことがバレてしまったのです!

 貴音は悪い子なのです……おねえちゃんに怒られてしまうのです!! ところがおねえちゃんはニヤニヤしているだけで怒る様子がないのです。


「貴音ちゃん、ベッドの下から何を取り出していたの?」


 あ、粟津まにとかいう作者の書いたクソつまんない小説なのですぅううううっ!


「貴音ちゃん、初めて百合(ゆり)小説読んだ感想は……どうだった!?」



 ――!?



 あれは「ひゃくごう」じゃなかったのですか!? ていうか、貴音が本を読むことを何でおねえちゃんはわかっていたのです!? こっこれは……おねえちゃんにハメられてしまったのですぅううううっ!

 でも何でおねえちゃんは、貴音が部屋に忍び込むことをあらかじめ予想していたのです!? そして何の目的で……貴音にあのクソつまんない小説を読ませようとしたのですか!?


 ――わっ……わからないのですぅううううっ!!



貴音なのです。次回はおねえちゃん視点のお話なのです。

それと、作中に登場した「粟津まに」については↓を読むのです!


「女子高の問題教師と40人の変態たち」

https://ncode.syosetu.com/n8445gw/

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