私は妹たちのパジャマパーティーに参加した(いづみside)
「わかったよ! 着ればいいんだろ!?」
私は妹たちのお泊り会……つまりパジャマパーティーに誘われたが、着ぐるみパジャマを着ることが条件だと言われた。
正直なところ着ぐるみとかカワイイ系の格好は苦手だ。でもせっかく妹たち中学生の「女子会」に参加できるのなら……仕方なく私は、先日の誕生日プレゼントで妹からもらった着ぐるみパジャマに袖を通した。
――あれ? そういえば……
普段の私はパジャマを着るときにブラを着けない。この着ぐるみパジャマというヤツはもこもこして肌に密着してないが……下に何か着た方がいいのかな。
「ねぇ貴音ちゃん、これって下に何か着るの?」
私は妹に聞くと
「貴音などという人は知らないのです」
「……は? じゃあキミは誰だ?」
「ウサギさんなのです! ぴょんぴょん♪」
――あ゛……めんどくせぇ設定だ。
「じゃあウサギちゃん、このパジャマの下に何か着るの?」
「何も着ないのです」
「えっ、そうなの?」
「そうですよ! リスもハムスターも下着はパンツだけで上はノーブラですよ」
「ですよ」
「あっ樹……ニャンコもノーブラっすよにゃん♪」
そっか、天ちゃんがリスで空ちゃんがハムスターか……てか何なんだこの動物で呼び合う設定は!?
「えーっ!? でも何か着心地悪くない?」
「ウソだというのならウサギさんたちがノーブラだということを証明するのです」
「え?」
「森のみんな! おねえちゃんにおっぱい見せてやるのです」
と言うと妹、もといウサギたちはファスナーをゆっくり下した。さっきお風呂でこの子たちのハダカは見たのだが……こっこのシチュエーションは何かエロい♥
「じゃーん♥」
だが、森のみんなは下にTシャツを着ていた。しかも先日の体育祭で着ていたクラスTシャツだ。
「あっ、何てことするのよ貴……ウサギちゃん! せっかくお姉さんだけノーブラにしようって話だったのに!?」
「うっ、うっかりしてたのですぅううううっ!」
オマエら……大人をからかうんじゃねーぞ!
「うわぁカワイイ! っておそろじゃーん、いいなー」
「いいなー」
私は着ぐるみパジャマを着たが……まるで罰ゲームでもやらされている気分だ。
「だってウサギさんたちは姉妹なのですぴょーん」
私のパジャマは妹と同じウサギのデザインで色違いだ。あーあ、せっかくならウサギじゃなくてオオカミの着ぐるみパジャマにしてくれればよかった! そうすればここにいる全員を狩ってから食ってやるのに……別の意味で♥
「じゃあさっそく妹ウサギのお部屋でパジャマパーティーをするのです!」
「おー!」
「姉ウサギさんも一緒に参加するのです」
ウサギキャラが被ったので、私は姉ウサギという呼ばれ方になってしまった。
「あっ、みんな! 着ていた服はどうするの?」
「えっ!?」
「ウチは洗濯乾燥機だから、よかったらお姉……姉ウサギが洗濯するけど」
「あっ、姉ウサギさんにお手を煩わせるワケにはいかないので……着替えは持って帰って家で洗濯しますよ」
「ますよ」
「あ、あぁ……そぅ……」
くそー! 女子中学生の脱ぎたてパンツをクンクンしたかったのに……残念!
※※※※※※※
私はキッチンでハーブティーを用意しながら考えていた。妹たち、部屋でパジャマパーティーってどんなことするんだろう!?
やっぱみんなで夜中までお菓子とか食べながら、ボードゲームやトランプとかするのかなぁ? でもどうせゲームやるならポッチーゲームとか王様ゲームとか……いかん、汚れてるわ私。
私は中学校時代……まだ男性恐怖症の影響で他人とコミュニケーションが取りづらかったせいもあり、お泊り会どころか友だちすら作れなかった。
高校に入って初めて友だちはできたが……そのときすでに平井和をはじめとした結構エグい友人関係だった。なのでこんな初々しい女子会には思わずキュンキュンして色んな想像を働かせてしまう♥
そして布団に入ったらみんなで恋バナとか!? うわぁ青春だなぁ~♥
――えっ!?
ちょっと待てよ! 恋バナってことは……普通は「異性の話」だよな?
〝カタカタカタカタ……〟
手にしたティーカップが小刻みに震えた。もし妹が「好きな男の子」の話とかしたら……いやいや、妹はまだそういう早熟な子じゃない。大丈夫、心配するな!
でも! 妹の学校は共学だし、最近は性教育の授業もあるらしいし……どっどうしよう!? 妹が性に目覚めて女&男の恋愛に走ってしまったら……
――そんなの……嫌だぁああああああああっ!!
そうだ! もし恋バナの流れになったら、私がサイコロを振ってでもいいから話題を変えてやろう! 妹に恋愛の話は禁止だぁああああっ!
何(の話)が出るかな? 私は逸る気持ちを抑え妹ウサギの部屋に向かった。
「みんなー、ハーブティー持ってきたよー」
だが部屋に入った私の目の前に現れたのは、予想だにしない光景だった。
「あっ姉ウサギさん、ありがとうございます! ここに置いてください」
妹ウサギは自分の学習机で……そしてリスとハムスターとネコはテーブルに教科書や参考書を広げて勉強をしていたのだ。
「アンタたち……何をしてるんだよ!?」
「何って……パジャマパーティーなのです」
「いや、私が考えていたパジャマパーティーとは違うんだが……」
「みんなで着ぐるみパジャマを着て勉強しようって話になったんですよ!」
「ですよ!」
「もうすぐ二学期の中間テストっす! ニャンコもマジでヤバいっす」
いや……だったらさぁ、今日家に来てすぐ……リビングでゲームしてたよね!?
「最初に勉強すりゃよかったじゃん!」
「姉ウサギさん! 中学生の本分は学業ですよ! メインのイベントで勉強することが大事じゃないんですか!?」
――着ぐるみパジャマで正論ぶちまけても説得力ないわぁああああっ!
「というワケで姉ウサギさん、この問題の解き方を教えてください」
「教えてください」
あ……そっ、
結局私はこの小動物たちの勉強会に付き合わされた。パジャマパーティーに参加して……と誘われたのはこういう意味だったのか!? 期待して損した……まぁ妹の恋バナを聞かずに済んで安心したが。
「さーて、そろそろ勉強会も終わりにして寝るのです」
――おい妹ウサギ! 今、勉強会ってハッキリ言ったよな!?
妹ウサギの部屋に来客用の布団を敷き詰めた。元々そこまで広くはない部屋なのでテーブルを片付けても二人分の布団が限度……まさにウサギ小屋だ。
「え、狭くね? あっ誰かお姉……姉ウサギの部屋に来る?」
すると妹ウサギがこっちを睨んだ。
「何か企んでいるのです」
――ギクゥ! 鋭いぞぉ妹ウサギよ!
「ならば一晩中おっぱい揉ませるのです!」
「却下!」
「心配いりませんよ! 姉ウサギさんはご自分の部屋でゆっくりお休みください」
「お休みください」
――えぇ~っ、私も一緒に寝たいのにぃ!
結局、私はお泊りに参加できず自分の部屋に戻った……くすん。
だがこのあと、本当のパーティー……いや、祭りが待ち構えていたのだ!
貴音なのです。おねえちゃんの着ぐるみは牛さんにすればよかったのです。




