貴音はおねえちゃんの活躍に期待するのです!(貴音side)
『ここで休憩に入ります。生徒の皆さんは……』
「こそこそ……」
「本気で隠れたいヤツは自分でこそこそとは言わん」
今日は中学校の体育祭なのです! 家族のみんなに合わせる顔がなく、こそこそとネズミさんのように隠れていた貴音はネコおねえちゃんに見つかってしまったのです……ちゅ~っ!
※※※※※※※
「うぅっ、面目ないのですぅ!」
貴音は「ウンチ」なのです!
……略し過ぎたのです。貴音は「運動音痴」なのです。
午前の部が終わったのです。クラス対抗戦なので、代表選手に選ばれない貴音はほとんど出番がなかったのです。
しかも全員強制出場という残酷競技・全員リレーでは思いっきりみんなの足を引張ってしまったのですぅううううっ!
クラスのみんなは貴音の実力を知っているので、貴音が遅れることを想定して順番を決めていたのです。でも貴音がいなかったら……もしかしたら一着になっていたかもしれないのです! なので貴音は責任を感じているのです。
貴音は責任感から食欲が失せてしまい、せっかくママさんが作ってくれたお弁当に手が付けられないでいたのです。仕方ないのでママさんが作ってくれたおにぎりとおかずだけを食べていると、
「貴音ちゃんドンマイ! 午後はママが貴音ちゃんの汚名返上してやっから」
ママさんが貴音を励ましてくれたのです! ママさんはいい人なのです……でも今、貴音のしたことを「汚名」と言ってなかったのですか!?
ところで……ママさんはいったい何をするつもりのです? 間違っても暴力行為やモンペ(モンスターペアレント)行為だけは止めてほしいのです!
「えっ……母さん、何するつもりなんだよ!?」
おねえちゃんも疑問に思って聞いたのです。するとママさんは、
「おいおい、私の格好見てわからんのかぃ!」
あれっ、そういえば……ママさんはジャージ姿なのです。
「プログラム見てみな! 午後イチに保護者競技あんだろ!? 私は一年生(保護者)チームのアンカーなんだよ! 私がこれで一等賞とって貴音ちゃんの汚名返上してやるから期待してな!」
どうやらママさんは保護者競技の「障害物リレー」に出場するそうなのです。そういえばママさんはPTAの役員さんなのです……ママさん、カッコイイのです!
それとやっぱりママさんは、貴音の全員リレーの結果を「汚名」だと思っていたのです! それはひどいのですぅううううっ!
「よっしゃ! ご飯も食べ終わったしそろそろウォーミングアップするか!」
ママさんは気合十分でウォーミングアップをしに行ったのです。ところがしばらくすると……
〝グキッ!〟
ママさんがウォーミングアップしている方向からヘンな音がしたのです。おねえちゃんが心配してママさんの所へ向かったので、貴音もついて行ったのです。
「アイタタタ……こっ腰が、腰が……」
何とママさんがうずくまっていたのです。だだっ、大丈夫なのですかっ!?
「こりゃマズいな、貴音ちゃん! 救護所はどこ!?」
「本部テントの横なのです! 貴音が案内するのです!」
おねえちゃんはママさんを担ぐと、貴音の案内で本部テントに向かったのです。
※※※※※※※
ママさんはおねえちゃんに抱えられながら、本部テントの隣にある救護テントに入ったのです。
貴音も心配なので付き添ってあげようとしたら「午後の部が始まるから応援席に戻りなさい」とおねえちゃんに言われたので先に戻ってきたのです……でもママさんが心配なのです。
――あっ、そういえば!
ママさんは保護者競技に参加するハズだったのです……これは大変なことになってしまったのです! このままじゃ一年生保護者チームは不戦敗なのです!
『次は、先生と保護者の代表による障害物リレーです! 選手の皆さんは集合してください』
――うわぁ、始まってしまったのです! どどっどうするのですか!?
すると前の席にいるクラスの女の子たちからヒソヒソ話が聞こえてきたのです。
「ねぇ、あの人は誰のお父さんかしら? 何か若くてカッコイイんだけど♥」
「ホントだ若ーい! お兄さんじゃないの!? うわぁタイプだわ♥」
えっ!? よく見ると出場者の中に見慣れた顔があったのです。
――おっ……おねえちゃんなのですぅううううっ!
何でおねえちゃんが他の保護者の人たちに交じって障害物リレーに参加しているのですかぁああああっ!?
貴音はおねえちゃんの妹であって娘ではないのです! えっそれとも貴音はおねえちゃんの「隠し子」だったのですか!? でもたぶんママさんの代役……という線が濃厚なのです!
おねえちゃんを見つけた貴音が驚き桃の木山椒の木を栽培していると、同じクラスの菱山天ちゃんや野牛島樹李もおねえちゃんに気がついたのです。
「貴音ちゃん! あれ、お姉さんじゃない!?」
「あれっ、ホントっす! 師匠が出てるっす!」
「えっ!? ねぇ菱山ー! 知り合いなのー?」
「うん、貴音ちゃんのお姉さんだよ!」
「えぇーっ、尾白さんのお姉さん!? イケメンじゃん! 今度紹介して♥」
「ダメっすよ! 樹李タソが先に弟子入りしてるっすよ!」
おねえちゃんはクラスの女の子たちに高評価なのです……そうなのです! だっておねえちゃんは「王子様」なのです。とってもカッコイイのです!
でもクラスの女の子に紹介してと言われようが、樹李が一方的に弟子入りを主張しようがおねえちゃんは貴音のモノなのです♥
その一方で……
「うわっ……尾白のねーちゃん、何か男みてーだなぁ!? ないわー!」
クラスの男の子から「王子様」は低評価だったのです。
ふん、何とでも言うがいいのです! どうせおねえちゃんも男が大キライなのです! だからオマエたちなんか初めから相手にされないのです!
「よーい」〝パーンッ!〟
障害物リレーが始まったのです! 貴音たち一年生の保護者チームはいきなり出遅れてしまったのです。
「○○さんのお母さーん、がんばってー!」
隣のクラスから声援が飛んでいたのです。この競技はクラス対抗ではないので一年生みんなで応援しているのです。できれば優勝してほしいのです。
でも、願い空しく一年生保護者チームは最下位に転落してしまったのです。しかも先生チームのアンカーは……
――げっ!?
何と「長沢 真秀良」先生だったのです! この先生……今は二年生を教えているのですが、最初一年生の担当だったとき貴音はこの先生にいきなり目をつけられひどいことを言われたのです。
長沢先生は二位でタスキを受け取ると、余裕の表情で生徒席に向かって手を振ったのです。
「ぶー!」
すると生徒全員からブーイングが起こったのです。そうなのです! この先生は貴音だけではなく、全校生徒からも嫌われているのです!
おねえちゃんは最下位で太ったオバサンからタスキを受け取ったのです! おねえちゃん! おねえちゃんは貴音の……いえ、全校生徒のために長沢先生をコテンパン(焼きたて税込百九十円)にやっつけてほしいのです!
「おねえちゃん……がんばるのです!」
貴音なのです。次回はおねえちゃんが……ぶるんぶるん♪ なのです♥




