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貴音は黒光りするキノコが好きなのです(貴音side)

 



 秋なのです!




 秋といえば……


 〝テレッテッテレテーテン……トゥルルトゥルルトゥルルン♪〟


 貴音(たかね)は『キノコ』を思い出すのです!



 ※※※※※※※



「というワケで志麻(しま)おねえちゃん! 貴音はキノコが好きなのです」

「えっ、唐突に何を言い出すの貴音ちゃん!?」


 ここはおねえちゃんがバイトしているジムの二階にある志麻おねえちゃんの部屋なのです。貴音は志麻おねえちゃんと一緒に、(なごみ)おねえちゃんから勉強を教わっているのです。


「秋といえば貴音はキノコの秋なのです」

「あー、○○(まるまる)の秋ってやつね!? 貴音ちゃんは食欲の秋なんだー」


 食欲というか……キノコが好きなだけなのです。


「志麻おねえちゃんは何の秋なのですか?」

「私? 私はねぇ……恋愛の秋かなー?」

「えっ、レンアイなのですか?」


 読書とか芸術の秋だと思っていたら、意外な答えが返ってきたのです。


「あっそうだ、ねぇ聞いて! 今週末ウチの高校体育祭なんだけどさぁー! 私の友だちがね、片思いの男の子と二人三脚リレーでペア組むんだよー! きゃーもぉ尊すぎてキュン死しちゃいそう♥」


 志麻おねえちゃん、死んだらダメなのです……生きるのです!


「こら~二人とも! まだ勉強時間は終わってないわよ~!」

「ふにゃぁ! ごめんなさいなのですぅ」


 和おねえちゃんに怒られてしまったのです。


「志麻ちゃ~ん! アナタって自分の恋愛には消極的なのに~メッチャ他人の恋愛には興味津々なのね~!?」

「もう自分の(恋愛)はこりごりだもーん! それより和さんは何の秋なの?」

「う~ん、私は~芸術の秋かなぁ~」

「えっ意外ー! 何が好きなの!?」

「そりゃ~もちろん美術よ~」

「へぇー」

「だって~私、()()()()大好きだも~ん♥」


 和おねえちゃんは()()が好きなのですか!? 写生といえばよく公園とかで風景を描いている人がいるのですが……


「和おねえちゃん、公園とかで写生するのが好きなのですか?」

「あ~夜の公園でシャセイ()()()のも刺激的よね~!? これって青カ……」

「和さん……もしかして別のこと言ってません!?」


 志麻おねえちゃんは顔を真っ赤にしていたのです……意味がわからないのです。



 ※※※※※※※



「でも貴音ちゃんがキノコ好きとは意外だなぁ……具体的に何が好きなの? シイタケ? シメジ? あっまさかマツタケなんて言うんじゃないでしょうね!?」

「あ~私もマツタケ好きよ~♥ 特に太くて~(カリ)が……」

「和さんは黙ってて!」


「貴音が言っているのはそういうキノコじゃないのです」

「えっ!?」


 貴音はカバンの中からある物を取り出したのです。


「これなのです」

「……それかぁ!」


 貴音が取り出したのはキノコの形をしたチョコスナックなのです! 一年中売られているのですが、貴音は秋になると無性にこれが食べたくなるのです!


「秋といえばキノコ(のお菓子)なのです! これは最強アイテムなのです」


 これはおねえちゃん二人も同意するハズなのです。ところが……


「貴音ちゃーん、それはちょっと同意できないなぁ」

「なぬっ!?」


 志麻おねえちゃんはそう言うと、机の引き出しから何か取り出したのです。


「私は……これよ!」


 志麻おねえちゃんが取り出したのはタケノコの形をしたスナック菓子なのです!


 ――うがぁああああっ!


 いるのです……必ずいるのです! 貴音が「キノコのお菓子が好き」と言うと必ず出てくる「タケノコのお菓子好き」が……。

 今回は志麻おねえちゃんが反対勢力なのです!! この瞬間、志麻おねえちゃんは『敵』になったのです!


「キノコの方がおいしいのです! このたっぷりチョコが食べ応えあって、その後クラッカーのカリッとした食感が再びチョコを食べたくなるようお口をリセットする……タケノコではその無限ループができないのです!」

「甘いわよ貴音ちゃん! サクサクしたクッキーがクラッカーの斜め上を行くからチョコは少なくても大丈夫! 事実ウチの高校ではポッチーやブラックサソダーを抑えて一番人気よ! タケノコしか勝たん!」


 ――う゛っ「高校」を出すとは卑怯なのです!


 ていうか高校生は学校でお菓子食べられるとかうらやましいのです! 貴音たち中学生は見つかると没収されるのです……JKはズルいのです!!

 貴音と志麻おねえちゃんは一歩も引かないのです。この論争……始まると収拾がつかなくなるのです。


「ここはひとつ、和おねえちゃんにジャッジしてもらうのです」

「そうね、このままじゃ埒が明かないわ……和さんはキノコとタケノコ、どっちが好き?」

「え~私は~、帆船の絵が~描かれた……」


 ……第三勢力(ナルフォート)が現れたのです。確かにそれもおいしいのです。



 ※※※※※※※



「じゃあ食べ比べて勝負するのです」

「ダメよ~貴音ちゃん! 晩ご飯が~食べられなくなっちゃうわよ~」


 そうなのです! バイト終わりにおねえちゃんが「まかない」を作ってくれるのです。貴音はそれが楽しみで来ているのです! そのとき、


「おーいオマエら! 全然一階(した)に下りてこないから呼びに来たぞー」


 おねえちゃんが部屋にやって来たのです。


「おねえちゃん! 貴音はそそり立つキノコをくわえ込みたいのです!」

「貴音ちゃ~ん、それ人前で言ったら痴女(アウト)よ~」


 和おねえちゃんにツッコまれたのです。おねえちゃんは悲しそうな顔をして


「貴音ちゃん……キノコよりアワビの方が絶対にいいよ」

「いっちゃんも~大人げない大人の(アダルトな)発言しちゃダメよ~!」


 おねえちゃんも和おねえちゃんにツッコまれたのです。


「でもさぁ、貴音ちゃんってキノコ嫌いじゃなかったっけ!?」

「えっ、貴音ちゃん……そうなの!?」


 ――げっ! おねえちゃん、今はお菓子の話なのです。


「貴音ちゃん、シイタケ嫌いだよね!?」

「そそっそんなこと……」


 正解なのです。貴音はキノコの中で特にシイタケが大っキライなのです! おねえちゃん、貴音の「弱点」をバラしてはダメなのです!!


「困ったなぁ、これから原木シイタケが美味しい季節なのに……まぁ今夜はそんな貴音ちゃんのためにシイタケとピーマンを使ったメニューにしたんだけど……」


 ――ふぎゃあ! 貴音はピーマンもキライなのですぅううううっ!


「たっ貴音は具合悪いので先に帰るのです!」

「ダメよ~貴音ちゃん、どうせ食わず嫌いなんでしょ~!?」

「本当にダメかどうかは食べてからにしなさーい」


 うぅっ! 和おねえちゃんたちに止められてしまったのですぅ。



 ※※※※※※※



「こ……これはおいしいのです♥」


 おねえちゃんが作ったのは、シイタケとピーマンの「肉詰め」だったのです。


「おいしい! シイタケにもちゃんと下味が付いてるんだー」

「う~ん、シイタケの風味はなくなっちゃうけど……これなら嫌いな人でも食べられるよね~」


 和おねえちゃんたちにも好評だったのです。


「ところでおねえちゃん! おねえちゃんはキノコのお菓子とタケノコのお菓子ではどっちが好きなのです!?」


「私? 私は……切り株の形をしたヤツ」



 ……たまにこういうひねくれた人がいるのです。


貴音なのです。キノコのクラッカーが折れていると少し悲しいのです。

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