【番外編】《小休止なのです》
「貴音ちゃん……まったく料理が出来ないんだね!?」
「おねえちゃんは失礼なのです! 貴音だって作れる料理くらいあるのです!」
「ほぉ、具体的に……何?」
「それは……カップ麺なのです!」
「もはや鉄板ネタだな」
「あー! おねえちゃんは貴音をバカにしているのです! カップ麺だってレシピがあるのです! 立派な料理なのです」
「レシピって……フタとかに書いてある作り方の説明書きのことか? それかクックハット見るとカップ麺のアレンジレシピとかあるから……まぁそれだったら」
「では作るのです! 使う材料はカップラーメンをひとつ……以上なのです」
「アレンジ無しの基本形じゃねーか! しかもそれってフタ開けてお湯入れるだけのタイプだよな!?」
「えっ……お湯を入れなきゃダメなのですか!?」
「論点そこじゃねぇよ! つーか何を入れるつもりだよ」
「……ホットウォーター」
「英訳しただけだ! つーか貴音ちゃん、そのカップ麺じゃ作るとは到底言い難いからこれでやってみてくれる?」
「これは……」
「そう、カップ焼きそばだよ」
「四角い入れ物なのでカップじゃないのです! しかも焼かないから焼きそばではないのです!」
「今さらそのツッコミ……」
「ではその挑戦状、受けて立つのです!」
「挑戦〝状〟じゃないけどな」
「まずはフタを開けて……うっ! これは大変なことが起こったのです」
「えっ、何?」
「小さな袋がいくつも出てきたのです! こっこれは難問なのです」
「ホントにフタ開けてお湯入れるだけのヤツしか知らないんだ……」
「なっ、何なのです『かやく』とは……爆発するのですか!?」
「ごめん、ベタすぎてツッコむ気にもなれんのだが……その火薬じゃなくて加薬、具材のことな!」
「えぇっと、まずはこの袋を取り出して……ホットウォーターを注ぐのです」
「お湯な……つーかその前にかやくを入れないと!」
「えっどれか入れるのですか!? ええっと……こっこれなのです!」
「おいおい、ソースを先に入れたらダメだろ!?」
「へぁっ!? なぜなのです?」
「後でお湯捨てちゃうんだから……ソースも一緒に流れちゃうじゃん」
「えぇっ! しっ知らなかったのです! でっ、では他の袋……あぁっ! いっぱいありすぎてわからないのですぅううううぅ!」
「いっぱいって……ソースとかやくとふりかけだけじゃん」
「ふりかけ!? 『のり●ま』なんて入っていないのです」
「この世でふりかけといったら『の●たま』しかねーのかよ」
「あぁっ! もうめんどくさいから全部入れちゃうのです!」
「ふりかけやスパイスも入れちゃったぞ……あーぁ、もう知らね」
※※※※※※※
「……三分間待つのです」
「貴音ちゃん、カップ焼きそばも作ったことないの?」
「カップ麺は貴音が小さいとき、パパが『面白い食べ物があるよ』と言って作ってくれたことがあるのです! 初めは石のようにカチカチだった物がラーメンになったので貴音はびっくらこいたのです!」
「手品感覚かよ!? つーかこんな身近に世間知らずのお嬢様がいたとは……」
「ママさんが家政婦さんをしていたとき、貴音はカップ麺を食べたことなかったのです! いつもママさん手作りの料理を食べていたのです」
「そういや茅乃のヤロー、仕事(家政婦)が忙しいからって私にカップ麺だけ渡していた時期があったぞ……おかげで料理が得意になったんだけどな」
「すっ、すごいのです! おねえちゃんはカップ麺が作れるのです」
「おい、それ他人に話すとケンカ売ってることになるぞ」
〝ピピピッ……ピピピッ……〟
「三分間経ったのです」
「さぁて、あとはお湯を捨てるだけだぞー! ま、貴音ちゃんの場合は味も捨てることになるんだけどな!?」
「あ……あとでウスターソースを追加するのです! えーと、フタにある湯切り口をはがし……ってつまりフタにあるツマミをはがせばいいのです!」
「……えっ?」
「それではホットウォーターを捨てるのでーす」
「あっバカ! そっちは剥がしたらダメな方だよ……あぁっ!」
〝バシャッ……ボコンッ〟
「ふぇええええん! カップ焼きそばが流し台さんに食べられてしまったのですぅううううっ!」
「うーん、どちらかと言えば食べさせた……というかやっちまったな」
「も……もったいないのですぅううううぅ!」
「まぁ、どうにもならんわな……」
「……あとでスタッフが美味しくいただいたのです」
「いやムリ~!」




