貴音はおねえちゃんのお友だちが気に入らないのです(貴音side)
「いらっしゃい、どうぞ上がって!」
「あっ……お、おじゃまし……ます」
日曜日……おねえちゃんのお友だちが家にやって来たのです。
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おねえちゃんは大学で料理の勉強をしているのです。今日はおねえちゃんの通う大学のお友だちに料理を教えるというのです。
貴音はてっきり和おねえちゃんが来ると思っていたのです。そしたら全然知らない人がやって来たのです。
おねえちゃん……和おねえちゃん以外にお友だちがいたのです!
「おねえちゃん……その人は誰なのです?」
「あぁ、同じ大学の金沢さん……って貴音ちゃんも学園祭で会ってるよね?」
えっ学園祭? そういえば貴音は、おねえちゃんの大学の学園祭でメイド喫茶のお手伝いをしたのですが……
「貴音ちゃんですよね!? お久しぶり! 金沢桃里です」
とうり……あっ!? オムライスを作っていた人なのです! そして……
「思い出したのです! おねえちゃんが泣かした女なのです!」
「おい、言い方!」
「アハハ」
でも……貴音はこの桃里さんというおねちゃんについて、もう一つ思い出したことがあるのです。
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「あっ、あの武川さん……よろしくお願いします」
「いづみでいいよ! 私も桃里ちゃんって呼んでいい?」
「あっ……は、はいっ!」
おねえちゃんと桃里さんは二人でキッチンに立ったのです。でも貴音は料理を作らないのです……食べることが専門なのです!
なので貴音はリビングでゲームしながら待っているのです。キッチンにいる桃里さんには興味がない……ハズなのです。
ただ……ひとつだけ気になることがあるのです。
この桃里さん……学園祭のとき、貴音に「負けませんよ」と言ってきたのです。
貴音は意味がわからなかったのです。この人は初対面の貴音に何の勝負を挑んできたのですか?
でも……たぶん負けないのです!
なぜならこの人、貴音と同じくらい「おっぱいがない」のです!
学園祭でメイド服を着ていたときは気がつかなかったのですが……キッチンにいる桃里さんを見ていると、貴音はこの人なら互角に戦えそうな気がするのです!
この人はきっと、貴音に「おっぱい勝負」を挑んでいるのです! ならば返り討ちにするまでなのです!
勝負のことが気になって、貴音はゲームをしながらキッチンをチラ見していたのです……キッチンにいる二人は仲よさそうに会話しているのです。
桃里さんは完全におねえちゃんの弟子……というより飼い犬のようになついているのです。そしておねえちゃんも桃里さんのことをまるで妹のように……
――えっ、妹!?
――おねえちゃんの妹は……貴音なのです!!
もしかして「負けない」って……このことかもしれないのです!
『You Lose!』
うがぁ! よそ見していたらゲームオーバーになってしまったのです!
「おねえちゃん! 貴音も料理を覚えたいのです」
こうしてはいられないのです! 貴音はゲームを終わらせると、おねえちゃんたちのいるキッチンへ乱入したのです!
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「じゃあ最初は桂むきから! まずは大根を三から五センチくらいに切っ……」
我が家のキッチンは広いのです。貴音はおねえちゃんから包丁とまな板と大根を受け取ると、大根の下ごしらえを手伝うのです! 大根を三から五センチくらいに切る……余裕なのです!
「貴音ちゃん、横に切るんだよ」
……えっ!? 大根の形がわかるように切った方が楽しいのです。そのとき、
〝ポポポポポポポンッ♪〟
「あっ電話だ! 二人とも、ちょっと待っててね!」
おねえちゃんはスマホを取るとリビングに移動したのです。するとすぐに桃里さんが貴音に近づいて声をかけてきたのです。
「貴音……ちゃん」
「……何なのです!?」
この人はおねえちゃんを狙っている……貴音は警戒モードなのです!
「お姉さんとは仲いいんですね」
「……い、いいのですよ」
「そうなんだ! ひょっとして……お姉さんのこと、大好きなの!?」
「……大好きなのです」
「そっ……私も、お姉さんのこと『大好き』ですよ!」
――やっぱりなのです!!
この人はおねえちゃんの「妹の座」を狙っているのです!! だから「負けませんよ」と言ったのです……こっこれは一大事なのです!
「お待たせー! じゃ、続きをやろうか!?」
おねえちゃんがキッチンに戻ってきたのです。貴音は……おねえちゃんの妹は貴音なのです! ということをアピールしなければいけないのです!
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「親指は包丁に添えるようにこうやって持って……」
「ええっ!? ゆっ指切っちゃいそうで怖いんですけど!」
おねえちゃんと桃里さんは仲良く料理をしているのです。その一方で貴音に対しては……大根の皮むきをしようとしたら怒られ、隠し包丁をしたら引かれ……全てが裏目に出ているのです!
「次は鯵を三枚におろすよ! まずは鱗とぜいごを取ってから頭を落として……」
――えっ!?
このお魚さん……頭が付いているのですぅううううっ!
頭を落とす……断頭台なのです! そっそんな残酷なこと、貴音にはできないのです! できない貴音は「妹アピール」で完全に出遅れてしまったのです!
「……出来ました!」
「うん、まぁいいんじゃないの!? じゃあ残りは私がやっとくから片栗粉を持ってきてくれる?」
――チャンスなのです!
貴音は片栗粉の袋を手に取ろうとしたのです! そこへ、
「あっ貴音ちゃん! それは私が……」
「ダメなのです! これは貴音が持って行くのです!」
同時に桃里さんも手に取ったのです! 二人で片栗粉の奪い合いになってしまったのです。すると……
〝ベリベリッ!〟
「あっ!」
〝ドタッ!〟
袋が破れ、はずみで倒れた桃里さんが片栗粉まみれになってしまったのです。
「何やってんの貴音ちゃん!」
前におねえちゃんとコーヒー粉の奪い合いをして以来、二度目なのです。
「ごめんね桃里ちゃん! 服、洗濯するからシャワー浴びてきて」
おねえちゃんは桃里さんを浴室まで案内したのです。戻ってくると、
「貴音ちゃん、お姉ちゃん忙しいから部屋から着替えを持ってきて! それと桃里ちゃんに謝ってから服を洗濯してあげなさい! まったくアンタって子は……」
おねえちゃんからマジ説教されたのです……ふえ~ん!
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貴音はおねえちゃんの部屋へジャージを取りに行き、それから脱衣所に入ったのです。浴室では桃里さんがシャワーを浴びているのです。
「あ……さっきはごめんなさいなのです」
「……」
返事がないのです。
「着替えを持ってきたのです」
「……」
もしかして……怒っているのです。それともシャワーの音で聞こえていないだけなのです。貴音は浴室の扉を開けて話そうとしたのです。
〝ガラガラッ〟
「あっあの……ひぃっ!!」
そのとき、貴音は衝撃的な光景を目にしたのです!
「えっ、あぁっ!!」
ハダカになった桃里さんの「おまた」には……昔、パパとお風呂に入ったときにパパについていたモノと同じモノが……そう、
……おチンチンがついていたのです!!
貴音なのです。お……思い出したくないのです!




