夏休みなので貴音は大瀬崎をもっと楽しんだのです(貴音side)
貴音は生まれて初めて海の中に潜ったのです!
貴音は伊豆の大瀬崎という所へ海水浴に来たのです。海の中にはお魚さんがいっぱいいて、貴音がお魚さんをもっと見たい! と言ったらママさんが「体験ダイビング」というものを紹介してくれたのです。
貴音とおねえちゃんは体験ダイビングをしたのです。いろんなお魚さんと巡り合えてとっても楽しかったのです。
体験ダイビングのあと、貴音とおねえちゃんはお店の2階にあるお風呂に入っていたのですが……そこへママさんと、体験ダイビングでインストラクターをしてくれた戸田さんも入ってきたのです。
ママさんと戸田さんは大学時代のお友だちだそうなのです。二人は仲良くお話をしていたのです。
「でさぁー! この前お客さんに『この時間は引き潮ですよ』って言うところを間違えて『この時間はイキ潮ですよ』って言っちゃって……」
「ぶははははっ! ダメじゃん……で、吹いたのか?」
「吹くかーぃ!」
……何が面白いのか貴音にはわからないのです。でも洗い場で髪を洗っていたおねえちゃんは、下を向いたまま必死に笑いをこらえていたのです。
「ところでさぁ茅乃! 大瀬神社にはお参りした!?」
「いっけねぇ! 来てすぐテント張ってたらすっかり忘れてたわ」
……えっ神社? 神社があるのですか?
「行ってないのかよ! バチ当たるぞ」
「久しぶりだからなー、後で寄っていくか」
ママさん……意外と信心深いのです。
※※※※※※※
「ありがとうございましたー!」
「ありがとうなのです」
「こちらこそ! また遊びに来てねー!」
インストラクターの戸田さんと別れ、貴音たちは駐車場とは反対方向に歩き出したのです。さっき貴音たちが体験ダイビングをした方面なのです。
「昔、ここのダイビングショップにすげーでっけぇワンちゃんがいてさぁー」
「へぇー」
ママさんが昔の思い出話をしてひとりで盛り上がっていると、目の前に鳥居が見えてきたのです。
「三人でーす」
神社に入るとママさんは拝観料(奉賛金)を払ったのです。階段を上ると神社が見えてきたのです。
〝パンッ、パンッ!〟
貴音たちはお参りをしたのです。小さい神社なのですが、ママさんのお話だと由緒ある神社だそうなのです。
「ん、これ何だ?」
おねえちゃんが何か見つけたのです。お参りした建物のすぐ右側に、赤くて細長い布がびっしりと掛けられていたのです。
何か文字が書いてあるのですが……布がボロボロで日付以外はよくわからないのです。貴音とおねえちゃんはその赤い布を手に取って必死に文字を読み取ろうとしたのです。するとママさんが、
「あっ、それ奉納したふんどしだよ!」
――ふっ、ふんどし!?
「ふんどしって……まさか」
「そっ、昔の男の人がお尻に巻く下着のことだよ」
「……」
※※※※※※※
お参りを終えた貴音たちは階段を下りたのです。神社の入り口には手を清める場所(手水舎)があるのです。
貴音とおねえちゃんはお参りする前に手を清めていたのですが、念のためもう一度清めたのです……未使用だと信じたいのです。
「せっかくだから神池も見ていくか」
ママさんは神社とは反対方向に歩き出したのです。そのとき、向こうからさっき貴音たちが着たのと同じような格好をした人たちがやって来たのです。
「あれ? こっちでもダイビングできるんだ」
おねえちゃんも気になったようなのです。
「そうだよ! こっちは岬先端と言ってね、アンタたちが潜った場所よりもっと深くて潮の流れが速いエリアなんだよ」
「へぇ……じゃあ、あの人たちも拝観料払うの?」
「うん、ここは神社の敷地内だからね」
「うわっ! いい商売してんなぁ」
「ま、海(ダイビング)の安全を守ってくれると思えば安いもんでしょ!? 私もダイビングで来たときは必ずお参りしてたよ」
「へぇーっ、そうなんだ」
貴音たちはダイバーさんが来た道とは別の道に入ったのです。少し進むと目の前に大きな円い池が現れたのです。
「この池は周囲を海に囲まれた岬の中にあるんだけどね、なぜか淡水なんだよ」
ママさんはガイドさんみたいに詳しいのです。
「ん?」
ベンチの近くに緑色の柱みたいなものが立っていたのです。近づいてよく見るとガチャ(カプセルトイの自動販売機)みたいなのです。何でこんな所に……よく見るとこう書いてあったのです。
「イ・サ・の・コ・エ……?」
「何でタテ読みする!? コイのエサだろ」
「コイのエサ? こっ、ここにコイさんが住んでいるのですか!?」
するとママさんが
「あぁ、いるよ! エサあげたらいっぱい寄ってくるよ」
――やってみたいのです!
貴音は百円を入れてガチャに課金したのです! ハンドルを回して出てきたのはカプセルでも超レアアイテムでもなく……
「モナカなのです。でもアイスが入っていないのです」
「貴音ちゃん……コイはアイス食べないよ」
モナカを割ると中からコイさんのエサが出てきたのです。貴音がエサを一粒池に投げ入れると
〝バシャッ!〟
「わぁっ♥」
コイさんが食べてくれたのです。何かうれしいのです! でも……
〝バシャバシャバシャバシャッ!!〟
「うわぁああああっ!?」
次から次へと仲間のコイさんが押し寄せて来たのです! コイさんはお口をパクパクさせて「エサちょーだい」と必死なのです!
こ……怖いのです! 貴音はしばらくコイさんを見たくないのです。
※※※※※※※
神池でコイさんに恐怖を感じた(※個人差があります)後、貴音たちは戸田さんに教えてもらった灯台を見たのです。
「あぁ、そういえば岬先端で潜ったとき灯台あったっけな……忘れてたわ」
大瀬崎に詳しいママさんが存在に気づいていなかったのです。これが本当の「灯台下暗し」なのです。
神社を出て貴音たちは駐車場へ向かったのです。その途中、ママさんが
「そういやさぁ、クララは海水浴してないよね!?」
と聞いてきたのです。
「クララはまだ一度も泳いだことがないのです」
「……だってさ! それに海水飲んだら体に悪いからいいんじゃね!?」
「うーん、でもせっかく来たのにそれは可哀想じゃないの?」
じゃあせめて海の近くをお散歩でも……と、夕方になり海水浴客やダイバーさんがまばらになってきたビーチを、貴音はクララと一緒に歩いたのです。
「貴音ちゃん! 今からずぶ濡れになると大変だから海に入れないでね」
――えっ、それってフラグなのです!
「あっ!?」
突然クララが強く引っ張ったので、貴音は思わずリードを手放してしまったのです! クララはそのまま海に向かって一直線……犬かきでスイスイ泳いだ後、満足げに戻ってきたのです。
「あああぁ~」
クララはトイプードルなのです。後でわかったのですがプードルは泳ぎが得意だそうなのです。でも……
〝ブルブルブルブルルルィッ!〟
もう帰るだけの状態だったのにクララはずぶ濡れ……最悪なのです。
「戸田さーん、すみませーん!」
結局……もう一度戸田さんのお店に行き外にあるシャワーを借りたのです。
貴音なのです。次回も沼津を楽しむのです。




