表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/316

貴音は道案内をしたのです(貴音side)中編




「あっ、貴音(たかね)ちゃん! ちょっとコンビニに寄ってもいいでしゅ()か?」




 貴音は近くのコンビニへアイスを買いに行く途中、駅前で道に迷っていた女子高生の『鴨狩(かもがり) (つむぎ)』さんを目的地まで送り届けることにしたのです。


 紬さんは隣の県にある高校、あぶのるま? あぶのろま? えーっと……


 私立高校の三年生なのです! でも貴音より背が低く、おねえさんという感じが全然しないのです。


 紬さんを案内しながらしばらく歩いていると、貴音が買い物する予定だったコンビニの前を通りかかったのです。すると紬さんがコンビニに寄りたいと言い出したので、貴音も一緒に入ったのです。店内に入ると紬さんが


「貴音ちゃん、アイス食べたくないでしゅ()か!? わたしがおごりましゅ()よ」


 と言ってきたのです。


 ――えっ!? それはメチャクチャうれしいのですが……


「そっそんな、初対面の方におごってもらうなんて悪いのです」

しょ()んなこと言わないでくだしゃ()い、道案内をしていただいたお礼でしゅ()よ」


 ――そっ、それならお言葉に甘えるのです♥


 でも……


 ここで貴音が値段高めのアイスを選んだら、コイツはなんて図々しいヤツ……と思われてしまうのです。なので貴音が「ガソガソ君」に手を伸ばそうとしたら


しょ()んなに遠慮しなくていいんでしゅ()よ! 貴音ちゃん、こっちのアイスはきらいでしゅ()か!?」


 ――それがきらいな人はいないのですぅううううううううっ!


 紬さんが指差したのはなんと「ハーゲソダッシ」なのです! このコンビニで最も高くて(マルチパックを除く)……貴音が今一番食べたいアイスなのです♥


「……ごくり」

「貴音ちゃん、心の声がダダ洩れでしゅ()よ」


 紬さんはニコッと笑って余裕の表情を見せたのです。


 ハーゲソダッシを他人におごってあげられる余裕があるなんて……この人、貴音より子どもっぽい見た目だけどやっぱり大人……しかもお金持ちなのです!



 ※※※※※※※



「ありがとうございましたー!」



 ――お……おごってもらっちゃったのですぅううううっ!


 貴音と紬さんはコンビニを出ると、大通りから住宅街の中に入ったのです。住宅街の中には小さな公園があるのです。

 公園に入ると木陰になっているベンチに腰かけたのです。木陰は日差しを遮ることができる貴重な場所なのですが、セミさんがとってもうるさいのです。


 貴音と紬さんはベンチに腰かけると、すぐにアイスを食べ始めたのです。早く食べないと溶けてしまうのです。紬さんはハーゲソダッシのカップアイス、貴音は同じくハーゲソダッシのクリスピーサンドを買ったのです。


「おぉ、おいしいのですぅううううっ!」

「貴音ちゃんってクリシュ()ピーシャ()ンドが(しゅ)きなんでしゅ()ね!?」


 好きというか……最近おねえちゃんと一緒にアイスを食べていると、おねえちゃんはなぜか貴音に「カップアイスのフタ」を舐めさせようとするのです!

 冷蔵庫の中もいつの間にかカップアイスが増えてしまったので、貴音は最近カップアイスに飽きてしまったのです。


「ところで……貴音ちゃんは何であしょ()こを歩いていたんでしゅ()か?」

「貴音はおねえちゃんとママさんにアイスを買いに行くところだったのです」

「えっ、しょ()れはごめんなしゃ()い! しゅ()ぐ帰らなくて大丈夫でしゅ()か?」

「大丈夫なのです。人助けならおねえちゃんもママさんも納得するのです!」


 おねえちゃんとママさんは正義感が強い人なのです。人助けをした……と言えば逆にほめてくれるのです。


しょ()ういえば……貴音ちゃんにはお姉しゃ()んがいるんでしゅ()ね!?」

「そうなのです! とてもカッコよくて面白いおねえちゃんなのです!」

「えぇっ、何しょ()れ~!? カッコよくて面白いんでしゅ()か!?」


 貴音は紬さんにおねえちゃんの話をしたのです。おねえちゃんと初めて会ったときの話、一緒にお出かけしたときの話、貴音のために校長室まで来てくれたときの話……貴音はおねえちゃんの話をし始めたら止まらなくなっていたのです!

 ずっとしゃべっていたから紬さんに引かれるかと思ったのですが……紬さんはイヤな顔ひとつせず、ニコニコしながら聞いてくれたのです。


「あはっ、ホントにカッコよくて面白いお姉しゃ()んでしゅ()ね!?」

「そうなのです! 貴音はおねえちゃんの妹になって本当によかったのです」

「へぇ~、貴音ちゃんってお姉しゃ()んのことが(しゅ)きなんでしゅ()ね!?」

「はい! 大好きなのです♥」


 そのとき、


 〝ニャイン♪〟


 ニャインの通知音が聞こえたのです。


「あっ、わたしでしゅ()……ちょっとごめんなしゃ()い」


 紬さんにニャインが来たようなのです。紬さんはスマホを取り出すとメッセージを確認したのです。すると、


「あっしょ()うだ貴音ちゃん! 一緒に写真撮ってもいいでしゅ()か?」

「え? い……いいのです」


 紬さんは貴音の肩を抱きツーショットで自撮りをすると、ニャインの相手にその画像を送信したのです。

 どうやら相手の人は紬さんのお友だちのようなのです。紬さんが送信したらすぐに返信が来たのです。それを見た紬さんは、


「あはっ! もぉ~すぐ嫉妬しゅ()るんだからぁ~! ()()じゃないでしゅ()よ♥」


 と、独り言を言いながらメッセージをうれしそうに見ていたのです。


 えっ……浮気? もしかして相手は彼氏さんだったのですか? でも貴音は女の子だから浮気にはならないのです。紬さんがスマホを仕舞おうとしたとき


「あっ、あの……浮気って?」


 疑問に思った貴音がつい聞いてしまったのです。


「あぁ、相手はこの人でしゅ()よ!」


 紬さんはニコニコしながら再びスマホを手に取ると、貴音に画面を見せてくれたのです。そこには紬さんと同じ制服を着た、とても美人のお姉さんが映っていたのです。やっぱり紬さんのお友だちだったのです!


「とっても美人しゃ()んでしょ!?」

「すごい美人さんなのです」

「同じH組(クラス)(ぬい)しゃ()んって言うんでしゅ()……わたしの『恋人』なんでしゅ()よ♥」



 ……へっ!? 恋……人?



 恋人って……相手は誰がどう見ても女の人なのです! 紬さんも誰がどう見ても女の人なのです。その紬さんの「恋人」が女の人って……何かヘンなのです。

 もしかしたら貴音の聞き間違いかと思ったのです。ところが紬さんは、そんな貴音の疑問を察したようにこう言ってきたのです。


しょ()うなんでしゅ()! わたしと縫しゃ()んは女同士なんでしゅ()けど付き合ってるんでしゅ()よ! わたしたちは両想いなんでしゅ()♥」


 ――えぇええええっ!?


 貴音は恋とかよくわからないのですが……ドラマや少女マンガを見ていても普通は「恋人」といったら男の人と女の人の組み合わせなのです。

 貴音は、女の人同士で付き合っている人を初めて見たのです(注※貴音はいづみや和の『正体(レズ)』を知りません)。


「貴音ちゃんだって……お姉しゃ()んのことが大(しゅ)きなんでしゅ()よね!?」



 ――えっ!? それは……




 ――それはたぶん、「好き」の意味が違うのです。




貴音なのです。2024年初めての投稿なのです。


今年も応援よろしくお願いするのです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ