貴音は道案内をしたのです(貴音side)前編
――たっ、大変なのですぅううううっ!
八月に入ってから、とても暑い日が続いているのです! こんな暑い日は家でゴロゴロしていたいのに大事件が起きたのです!
なんと、冷蔵庫のアイスが切れてしまったのです!!
アイスがなくなったら生きていけないのです。でもこんな時間に出かけたら帰りに溶けてしまいそうなのですが、それでも夕方まで待てないのです!
なので一秒でも早くアイスを買いに行くのです! 本当ならおねえちゃんやママさんが車で買いに行ってくれればいいのです。
でも二人は「車の中は暑いからやだ!」と言って買ってきてくれないのです。逆に「言い出しっぺなんだから貴音ちゃんが行ってきなさい」と言われてお金を渡されたのです! なのに自分たちもちゃっかりリクエストしてきたのです。
仕方ないのです……いつも行く洋菓子店は遠いので、近くのコンビニへ買いに行くのです。そしておねえちゃんとママさんには言われた通りのアイスを……貴音には一番高級なアイスを買うのです♥
……でも、お金が足りるのか心配なのです。
貴音が歩いてコンビニのある大通りに出ると……
「あれ?」
ひとりの女の子が歩道に呆然と立ちつくしていたのです。その子は貴音よりも小さいのですが制服を着ていたのです。でも見たことのない制服なのです。
ここは駅前の通りと交差する場所なのです。きっと地元の子じゃない……どこか遠い場所から電車でやって来た小学生が道に迷っているのです。
貴音は中学生なのです。困っている小学生を見つけたら助けてあげるのです!
「あの……何かお困りなのですか?」
貴音が近づいて声をかけると、その小学生は
「えっ……あっ、この辺に住まわれている方でしゅか!?」
「そうなのです」
「しょうなんでしゅか!? あのっ、わたし……駅まで来たんでしゅけど、しょこから目的地までがよくわからないんでしゅ! しゅみましぇん、道を教えていただけましゅか!?」
――この子……話し方がヘンなのです! (オマエが言うな)
貴音はクラスでも背が低く身長が一四〇センチ……この子は貴音より五センチほど低いので、きっと小学校三年生くらいなのです。なので貴音は「おねえさん」として、この小学生の手助けをしてあげるのです!
「いいのです! どこなのですか?」
「あっ、あの……四尾連荘というアパートなんでしゅけど……」
四尾連荘……? あれっ!?
「あっ、そこなら知っているのです!」
四尾連荘って確か……おねえちゃんとママさんが以前住んでいたアパートの名前なのです!! パパとママさんが再婚した後、貴音は引っ越しのお手伝いをしたので場所はわかるのです!
「ホントでしゅか!?」
「ホントなのです! 四尾連荘まで案内するのです」
「たっ……助かりましゅ!」
貴音はこの小学生のためにアパートまで案内することに決めたのです! コンビニアイスは後回しになってしまうのです。でも人助けが先なのです!
「こっちなのです。ついてくるのです」
「あっ、はい……よろしくお願いしましゅ」
貴音はこの制服姿の小学生と一緒に歩き出したのです。それにしても……貴音も小学校は制服だったのですがデザインが全然違うのです。なんか高校生っぽいブレザーの制服なのです。
「ところで……見たことのない制服なのですが、県外から来たのですか?」
「えぇ、○○県からでしゅ」
だまって二人で歩いていても気まずいのです。貴音は「おねえさん」としてこちらから話しかけてあげるのです! ところが……
「そうなのですか! ○○県の……何と言う小学校なのですか?」
貴音がそう尋ねると、その女の子は立ち止まり……なぜかクスクスと笑いだしたのです。そして、
「えぇっと……私立虻野丸学園高等部の三年生でしゅ……高校生でしゅよ!」
……えっ!?
――ひょええええええええっ! ここっ、高校生!?
※※※※※※※
「ごごごっ、ごめんなさいなのです! まっまさか高校生だなんて……」
「いいんでしゅよ! よく間違えられるんでしゅ」
この人は貴音より年上の「おねえさん」だったのです! 貴音はどう対応していいのかわからずしどろもどろになってしまったのです。でもこの「おねえさん」は怒りもせずニコニコしながら、
「しょういえば、まだ名前言ってなかったでしゅね!? わたしは私立虻野丸学園高等部の三年H組、出席番号9番の『鴨狩 紬』と言いましゅ!」
「あっ、尾白 貴音なのです……ちゅ…………中学一年生なのです」
紬さんは、聞いてもいないのにクラス名や出席番号まで言ったのです。さっきまで貴音が「おねえさん」だと意気込んでいたら……まるで黄門さまから印籠を見せられた気分なのです。
それにしても……貴音より小さくて幼く見えるこの「おねえさん」がウチのおねえちゃんと一学年しか違わないなんて驚き桃の木山椒の木って、桃はバラ科、山椒はミカン科……この二つがなぜ並べられているのか意味がわからないのです。
もし、おねえちゃんと紬さんが並んで歩いていたら、一学年違いなのにきっと親子と見間違われそうなのです。
「ところでかっ……鴨狩さん!」
「紬でいいでしゅよ」
「つっ紬さんは四尾連荘なんかに……何の用なのです?」
貴音はママさんたちの引っ越しで一度だけ行ったことがあるのですが、正直言って四尾連荘は「ボロアパート」なのです! こんな高級そうな制服を着ている女子高生が訪ねるような場所ではないのです。
「貴音ちゃんは『忍野 萌海』しゃんって知っていましゅか?」
「あっはい、地元では有名なアイドルなのです」
有名を通り越して……富士山と同じで、地元民は全員見飽きているのです!
「ウチの学校、十月に学園祭で忍野萌海しゃんのコンシャートをやることになったんでしゅが……わたしは学園祭の実行委員なんで、今から忍野しゃんの事務所に打ち合わしぇに行くんでしゅよ」
「えっ、忍野萌海って県外でコンサートするほど有名なのですか?」
「実はウチの養護教諭……保健の先生が忍野萌海しゃんの従姉なんでしゅよ」
「そっ、そうなのですか?」
「まぁあのΦブレイクの元メンバーだっていうから、しょれなりに実力はあるんでしょうね!?」
「それで……何で四尾連荘なのですか?」
「忍野萌海しゃんの事務所がしょこだしょうでしゅよ!」
えっ!? 芸能人の事務所があんなボロアパートなのですか!?
そんな話を紬さんと話しながら歩いていると、コンビニの前を通りかかったのです。本当ならこのお店でアイスを買う予定だったのです。でも仕方ないのです……こうなった以上、紬さんを送り届けてから帰りに立ち寄るのです。
「あっ、貴音ちゃん! 悪いんだけど、コンビニに寄ってもいいでしゅか?」
突然、紬さんがコンビニに入ったのです。暑いし、一時的に涼むのにちょうどよかったのです。でも今はアイスを買えないのです!
すると、買い物をしている紬さんが……
「貴音ちゃん、アイス食べたくないでしゅか!? わたしがおごりましゅよ」
貴音なのです。とりあえずこれも読んでほしいのです。
「女子高の問題教師と40人の変態たち」
【出席番号9番】鴨狩 紬
https://ncode.syosetu.com/n8445gw/10/
……特別出演なのです!!




