私は妹たちの水着姿が見たい(いづみside)「オチ」編
「じゃあ今から巨乳がどんだけ不便なものか、アンタたちに教えてあげるよ」
私の「おっぱい」に憧れるという妹の貴音ちゃんと双子の天ちゃん空ちゃん……そして樹李ちゃんに「巨乳の過酷な現実」を教えるため、私はおもむろにラッシュガードを脱ぎ始めた。
正直この方法はリスクが高いのでやりたくなかったが仕方ない。この子たちにも多少迷惑がかかるが、しかとその目に焼き付けてもらおう!
「ほわぁ……♥」
「こっこれは……芸術品っす!」
「もはや私たちにとって神……ありがたや」
「ありがたや」
私がビキニ姿になった瞬間、妹たちは目が釘付けになっていた。まるでストリップ劇場の踊り子と観客のようだ……まぁストリップ劇場なんて行ったことないからあくまで想像なのだが。
そして私が水着を披露すると、どこからともなく……
「お姉さんどっから来たの!? 俺たちと一緒に遊ばなーい!?」
チャラそうな二人組の男が現れ、私にナンパしてきた。さっきから私はずっとここにいるのだが、ラッシュガード着てたときは誰からも声を掛けられなかった。
「いやいや、おねーさん! オレと遊ぼうよー!」
「今来たのー? 一緒にビーチボールで遊ぼうよ!」
「オレ近くにいい店知ってんだ! 後で行こうよ!」
するとプールにいた男どもが続々とやって来て私にナンパしてきた。気がつくと私は男どもに囲まれて身動きが取れないナンパ渋滞を引き起こしていた。
「おっ、おねえちゃん! これは大変なのです!」
一緒にいた妹たちも渋滞に巻き込まれてしまった……だが男どもは妹たちに全く関心がない。見ているのは私……いや、私のおっぱいだけだ! おっぱいが大きい女はエロそうだから簡単にヤレるとでも思っているのだろう……ふざけんな!
「だから言ったろ!? 巨乳なんて百害あって一利ナシなんだよ」
――ったく、これだから男なんてロクなモンじゃない!
突然見ず知らずの男たちに囲まれてしまい妹たちも困惑していた。監視員の若い男もニヤついているだけで全く役に立たない。
「何だよオメー! 俺が先に声掛けてんだよ!」
「あぁっ!? 何言ってんだテメー!」
そのうちナンパしてきた野郎同士でケンカが始まった。
「ひぃっ……こっ、怖いよぉ」
「怖いよぉ」
「うわぁ、ヤバいっす!」
殺伐とした雰囲気に妹たちは怯えている。な、これでわかったか妹たち……男ってこういう単純で野蛮な生き物なんだよ!
「おねえちゃん! こ、これはどうしたらいいのです?」
「ん? あぁ……もうすぐ来る頃だと思うけど」
もちろんこの状況が続くのは望ましくない。妹たちも怖がっているのでコイツらには早く去ってもらおう。
だが私がここで何を言おうと状況は変わらないだろう……逆に悪化する可能性もある。しかし私にはこの状況を抜け出す「秘策」があるのだ!
「いっちゃ~ん!」
私を呼ぶ声が……和だ!
実は和にウソの待ち合わせ時間を教え、遅れてやって来るように仕向けたのはこのためだったのだ!
ヤツは私より巨乳でエロい体型……もし水着姿の和が現れたら、私に群がっているナンパ野郎どもは一斉に和へ流れるだろう。
そうすれば私たちはここを脱出できる……いわばヤツは「囮」だ! 私は、和がやって来る時間に合わせてビキニ姿になったのだ。
「いっちゃ~ん! どこにいるの~!?」
ヤツのことだ、大好物がいる場所なので悩殺ビキニでも着てくるだろう。だが和の行動は私の想像の斜め上を行っていた!
私が「あぁここだよ!」と返事しようとした瞬間、ヤツの水着姿を見て思わず凍り付いてしまった!
――な……なんて格好してんだ!? おい、ここは市民プールだぞ!
アイツ……
――マイクロビキニを着てきやがったぁああああああああっ!!
「あのバカ! 何だよアレは!?」
和が着ているのは乳首周りと股間だけが隠された、極端に布地が少ないマイクロビキニ……お尻はGストリング、いわゆる紐パンと呼ばれるTバックの一種……
……つまり、ほぼ「全裸」だ。
法的にギリセーフだとしてもここは公共のプール……道徳的にアウトだ!
「おねえちゃん!」
「ア……アイツと視線を合わせるな! 他人のふりをしろ!」
和の非常識な姿に妹も混乱したようだ。いつもなら和の爆乳に目がトロンとなる妹も、さすがに「関わってはダメな人」と認識したらしくパニクっていた。
「いっちゃ~ん! あっ、そこにいるじゃな~い!? 貴音ちゃんも~」
「えっ!? あのお姉さん、貴音ちゃんを呼んでなかった?」
「なかった?」
「ししっ、知らないのです! 貴音はあんな人知らないのです!!」
「うわっ~あの人すげぇっす! 師匠の知り合いっすか?」
「しっ、知らんあんなヤツ! 帰るよみんな!」
双子や樹李ちゃんは和のことを知らない……だがそれでいい! あんなのと私や妹が同類だと思われたくない!
すると和に気づいた男どもが……
「お姉さんひとりー!? オレたちと遊ばなーい!?」
「ねぇねぇこの後どう? 一緒にお茶しない!?」
「日焼け止めする? オッオレが塗ってあげるよ」
「いや俺に塗らせて……」
一斉に和をナンパし始めた。私たちの周りから男どもが消え、身動きが取れるようになった。で、男どもに囲まれた和の方はというと……
「えぇ~、こんなに大勢~!? う~ん、どうしよっかな~」
――まんざらでもねーな!
でも男どもよ、気をつけろよ……その女は「性欲モンスター」だ! オマエらが束になってかかってもそのサキュバスを制することはできないだろう。
「あ~ん、もう選べな~い! じゃあ~みんなで一緒に遊びましょ♥」
げっ、コイツ! 男ども全員相手にする気か!? もう和には性病検査を義務付けよう……女同士だって感染する可能性はゼロじゃないんだぞ!
結局私は和に声をかけることなく、妹たちと更衣室に向かった。
※※※※※※※
プールから出てきた妹たちは、私が運転する車に乗り込もうとしていた。
「なぁ……何で全員、後ろに乗ろうとしてるんだ?」
しかし誰も助手席に乗りたがらない。後ろは三人しか乗れないのだが……。
「そ、それは……全員が勝負に負けたからなのです」
「はぁ? 意味わからん」
「それよりおねえちゃん! 何でビキニを着て運転しないのですか!?」
「おい、どこの世界に街中でビキニ着て運転するヤツがいるんだよ!?」
様子がおかしかったので、私は妹を問い詰めた。すると妹たちは、誰が私のラッシュガードを脱がすことができるか助手席の座を賭けて勝負していたらしい。
「……」
……じゃあ全員置いていくよ! と言ったら素直に乗り込んだ。
※※※※※※※
しばらくして和に会ったとき、ヤツから後日談を聞いた。
あの後、和はプールの管理室に連れていかれ……さんざん説教された挙句プールを出禁になったそうだ。
……まぁそうなるわな。
で、あの男たちとはどうなった? と私が尋ねると、
「も~ぉ全然ダメ~! み~んなシッポ巻いて逃げちゃった~」
……そりゃオマエ相手じゃ誰でもそうなるわ、この性欲モンスターめ!
貴音なのです。次回は《小休止なのです》という名の反省会なのです。




